問16 動力プレスに使用する光線式安全装置に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか
(1)身体の一部が光線を遮断したことを検出することができる機構(検出機構)の光軸とスライドが作動する範囲(危険限界)との距離を安全距離という。
(2)安全距離D[mm]は、スライドの閉じ行程の作動中の速度が最大となる位置で、手が光線を遮断した時からスライドが停止する時までの時間T[ms]及び追加距離C[mm]を用いて、次の式により計算して得た値以上の値でなければならない。
D=1.6×T+C
(3)手が光線を遮断した時からスライドが停止する時までの時間Tは、手が光線を遮断した時から急停止機構が作動を開始する時までの時間と急停止機構が作動を開始した時からスライドが停止する時までの時間を足したものである。
(4)追加距離とは、検出機構が検出することができる遮光棒の最小直径(連続遮光幅)に応じて定められる距離であり、連続遮光幡を広くすることで追加距離を小さくすることができる。
(5)光線式安全装置を、ポジティブクラッチプレスに用いることは適切ではない。
このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2018年度(平成30年度) | 問16 | 難易度 | 動力プレスに使用する光線式安全装置に関するやや高度な知識問題。確実に正答したい問題である。 |
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光線式安全装置 | 5 |
問16 動力プレスに使用する光線式安全装置に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか
(1)身体の一部が光線を遮断したことを検出することができる機構(検出機構)の光軸とスライドが作動する範囲(危険限界)との距離を安全距離という。
(2)安全距離D[mm]は、スライドの閉じ行程の作動中の速度が最大となる位置で、手が光線を遮断した時からスライドが停止する時までの時間T[ms]及び追加距離C[mm]を用いて、次の式により計算して得た値以上の値でなければならない。
D=1.6×T+C
(3)手が光線を遮断した時からスライドが停止する時までの時間Tは、手が光線を遮断した時から急停止機構が作動を開始する時までの時間と急停止機構が作動を開始した時からスライドが停止する時までの時間を足したものである。
(4)追加距離とは、検出機構が検出することができる遮光棒の最小直径(連続遮光幅)に応じて定められる距離であり、連続遮光幡を広くすることで追加距離を小さくすることができる。
(5)光線式安全装置を、ポジティブクラッチプレスに用いることは適切ではない。
正答(4)
【解説】
本問は、動力プレス機械構造規格第43条に関する肢が3個あるので、まずそれを以下に示す。
【動力プレス機械構造規格】
(光線式の安全プレスの安全距離)
第43条 光線式の安全プレスに備える検出機構の光軸と危険限界との距離(以下この条において「安全距離」という。)は、スライドの閉じ行程の作動中の速度が最大となる位置で、次の式により計算して得た値以上の値でなければならない。
D=1.6(Tl+Ts)+C
(この式において、D、Tl、Ts及びCは、それぞれ次の値を表すものとする。
D 安全距離(単位 ミリメートル)
Tl 手が光線を遮断した時から急停止機構が作動を開始する時までの時間(単位 ミリセカンド)
Ts 急停止機構が作動を開始した時からスライドが停止する時までの時間(単位 ミリセカンド)
C 次の表の上欄に掲げる連続遮光幅に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる追加距離)
連続遮光幅(ミリメートル) | 追加距離(ミリメートル) |
---|---|
三〇以下 | 〇 |
三〇を超え三五以下 | 二〇〇 |
三五を超え四五以下 | 三〇〇 |
四五を超え五〇以下 | 四〇〇 |
(1)適切である。動力プレス機械構造規格第43条では、「光線式の安全プレスに備える検出機構の光軸と危険限界との距離」を“安全距離”といっている。
なお、両手操作式の安全プレスでは、安全距離とは「両手操作式の安全プレスのスライドを作動させるための操作部と危険限界との距離」のことである。
(2)適切である。動力プレス機械構造規格第43条では、安全距離D[mm]は、スライドの閉じ行程の作動中の速度が最大となる位置で、
D=1.6(Tl+Ts)+C
でなければならないとしている。
ここに、Tlとは「手が光線を遮断した時から急停止機構が作動を開始する時までの時間」であり、Tsは「急停止機構が作動を開始した時からスライドが停止する時までの時間」であるから、Tl+Tsは「手が光線を遮断した時からスライドが停止する時までの時間」であり、本肢のTとなる。従って本肢は正しい。
(3)適切である。これは、当たり前であろう。たんなる日本語の読解力の問題である。
(4)適切ではない。動力プレス機械構造規格第43条に追加距離(C)と連続遮光幅の表が示されている。連続遮光幅が広がったとき(より安全性が低くなる)に、追加距離(安全距離に加えるべき距離)を小さくできるわけがないであろう。
(5)適切である。そもそもポジティブクラッチプレスはスライドの作動中に停止させることができないので、光線式安全装置による措置を講じることは原理的に不可能である。ポジティブクラッチプレスの安全装置は両手操作式押しボタンスイッチによるべきである。
なお、かつては足踏み式のポジティブクラッチプレスが盛んに用いられていたため、プレス災害の多くがこれによって発生していた。これを踏まえて現在製造されている機械式のプレスは、急停止機構を備えるためにフリクションクラッチが用いられるのが普通である。