労働安全コンサルタント試験 2017年 産業安全関係法令 問14

労働安全衛生法の計画の届出及び報告




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 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問14 難易度 計画の届出及び報告に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
計画の届出及び報告

問14 事業者が行うべき計画の届出及び報告に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。ただし、労働基準監督署長による計画の届出の免除に係る認定を受けていないものとする。

(1)動力により駆動される液圧プレスの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。

(2)つり橋でない最大支間500メートル以上の橋梁の建設の仕事を開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の30日前までに、厚生労働大臣に届け出なければならない。

(3)ずい道等の建設の仕事であって、ずい道等の内部に労働者が立ち入らないものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の14日前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。

(4)労働者が労働災害により休業したときで、休業の日数が4日に満たないときは、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの期間における当該事実について、所定の様式による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

(5)事業場又はその附属建設物内で、火災が発生したときは、遅滞なく、所定の様式による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

正答(3)

【解説】

本問は、安衛法の届出及び報告に関するものである。安衛法においては、一般の事業者による届出は第 88 条等に、報告は第 100 条に規定されている。なお、届出は受理した行政機関がその内容を審査して、必要があれば改善を勧告又は命令できる。これに対し、報告は(形式的な不備を除き)受理した行政機関はその内容について審査できず改善の指導もできないという違いがある(※)

※ もちろん、実務においては報告の内容に問題があれば、行政としても放置するわけにはいかないだろうから、修正を「依頼」することになろうし、ほとんどの事業者は依頼を受け入れることになるだろう。その意味では、実質的に大きな違いはないと言ってよい。

【労働安全衛生法】

(計画の届出等)

第88条 事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の三十日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、第二十八条の二第一項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。

 事業者は、建設業に属する事業の仕事のうち重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の三十日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に届け出なければならない。

 事業者は、建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事(建設業に属する事業にあつては、前項の厚生労働省令で定める仕事を除く。)で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の十四日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。

4~7 (略)

(報告等)

第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

2及び3 (略)

(1)正しい。安衛法第 88 条第1項は「事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない」と定めている。なお、同項の但し書きについては、問題文において適用がないとされている。

そして、安衛則第 86 条第1項は「事業者は、別表第7の上欄に掲げる機械等を設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、法第 88 条第1項の規定により・・・所轄労働基準監督署長に提出しなければならない」とする。

さらに、別表第7には「動力プレス(機械プレスでクランク軸等の偏心機構を有するもの及び液圧プレスに限る。)」が定めてある。従って、本肢は正しい。

【労働安全衛生規則】

(計画の届出等)

第86条 事業者は、別表第七の上欄に掲げる機械等を設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、法第八十八条第一項の規定により、様式第二十号による届書に、当該機械等の種類に応じて同表の中欄に掲げる事項を記載した書面及び同表の下欄に掲げる図面等を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 (以下略)

別表第七 (第八十五条、第八十六条関係)

機械等の種類 事項 図面等

一 動力プレス(機械プレスでクランク軸等の偏心機構を有するもの及び液圧プレスに限る。)

(略) (略)
(以下略) (以下略) (以下略)

(2)正しい。安衛法第 88 条第2項は「事業者は、建設業に属する事業の仕事のうち重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の30日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に届け出なければならない」とする。

そして、安衛則第 89 条(第3号)は、その対象として「最大支間500メートル(つり橋にあつては、1,000メートル)以上の橋梁の建設の仕事」を定めている。

【労働安全衛生規則】

(仕事の範囲)

第89条 法第88条第2項の厚生労働省令で定める仕事は、次のとおりとする。

一及び二 (略)

 最大支間500メートル(つり橋にあつては、1,000メートル)以上の橋梁の建設の仕事

四~六 (略)

(3)誤り。安衛法第 88 条第3項は「事業者は、建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事(建設業に属する事業にあっては、前項の厚生労働省令で定める仕事を除く。)で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の 14 日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない」とする。

そして、安衛法第 88 条第3項の「厚生労働省令で定めるもの」は安衛則第 90 条に定められている。この安衛則第 90 条は、第3号で「ずい道等の建設等の仕事(ずい道等の内部に労働者が立ち入らないものを除く。)」としている。すなわち、本肢の「ずい道等の建設の仕事であって、ずい道等の内部に労働者が立ち入らないもの」は除かれている。

なお、第四号は地山の掘削について定めており、ずい道等の掘削は除かれている。また、他の条文でも、労働者が立ち入らないずい道で届出を義務付ける条文はない。従って、本肢は誤りであり、これが正答となる。

【労働安全衛生規則】

第90条 法第88条第3項の厚生労働省令で定める仕事は、次のとおりとする。

一~二の二 (略)

 ずい道等の建設等の仕事(ずい道等の内部に労働者が立ち入らないものを除く。)

 掘削の高さ又は深さが10メートル以上である地山の掘削(ずい道等の掘削及び岩石の採取のための掘削を除く。以下同じ。)の作業(掘削機械を用いる作業で、掘削面の下方に労働者が立ち入らないものを除く。)を行う仕事

五~七 (以下略)

(4)正しい。安衛則第 97 条(根拠条文安衛法第 100 条)第2項は、本肢と同様な措置を定めている。

【労働安全衛生規則】

(労働者死傷病報告)

第97条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

(5)正しい。安衛則第96条(根拠条文安衛法第100条)第1項は、事故報告について定めているが、事業場又はその附属建設物内で火災の事故(第1号イ)の事故があったときは報告を求めている。従って、本肢は正しい。

【労働安全衛生規則】

(事故報告)

第96条 事業者は、次の場合は、遅滞なく、様式第二十二号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 事業場又はその附属建設物内で、次の事故が発生したとき

 火災又は爆発の事故(次号の事故を除く。)

ロ~ニ (略)

 令第一条第三号のボイラー(小型ボイラーを除く。)の破裂、煙道ガスの爆発又はこれらに準ずる事故が発生したとき

 小型ボイラー、令第一条第五号の第一種圧力容器及び同条第七号の第二種圧力容器の破裂の事故が発生したとき

四~十 (略)

 (略)

2018年10月28日執筆 2024年11月24日最終改訂