労働安全コンサルタント試験 2017年 産業安全関係法令 問12

特定機械等の検査制度




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 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問12 難易度 特定機械の検査制度に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
特定機械等の検査制度

問12 特定機械等の検査制度に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)クレーンを製造しようとする者は、所轄都道府県労働局長の製造許可を受け、製造したクレーンについて、当該都道府県労働局長による製造検査を受けなければならない。

(2)第一種圧力容器を輸入した場合において、当該第一種圧力容器の構造が法令に適合していることを指定外国検査機関が明らかにする書面を都道府県労働局長に提出すれば、使用検査を受ける必要はない。

(3)ゴンドラを設置したときは、労働基準監督署長による落成検査を受けなければならない。

(4)使用を廃止した移動式クレーンを再び使用しようとする場合は、当該移動式クレーンについて都道府県労働局長の使用検査を受けなければならない。

(5)ボイラーについては、構造検査に合格した後でなければ溶接検査を受けることができない。

正答(4)

【解説】

(1)誤り。本肢の対象は、「所轄都道府県労働局長の製造許可を受け、製造したクレーン」である(※)。製造の許可は安衛法第37条に規定があり、その対象となる特定機械等として、別表第1の第3号にクレーンなどが定められており、そのクレーンについては安衛令第12条第1項(第3号)によりつり上げ荷重が3トン以上(スタツカー式クレーンにあっては、1トン以上)のクレーンとされている。従って、本肢のクレーンはつり上げ荷重が3トン以上のものである。

※ 本肢は、以下の2通りに解釈できるが、どちらでも結論に変わりはないので、①の意味であるとして解説している。

①「所轄都道府県労働局長の製造許可を受け、製造したクレーン」について製造時等検査を受けなければならない。

②「所轄都道府県労働局長の製造許可を受け」、その許可を得て製造したクレーンについて「製造時等検査を受け」なければならない。

なお、クレーンは特別特定機械等には該当しない(ボイラー則第2条の2参照)。

一方、製造検査は安衛法第38条に規定があり、特定機械等のうち特別特定機械等でないものを製造しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の検査を受けなければならない。

しかし、クレーンについて安衛法第38条第1項の検査を受けなければならないとする厚生労働省令の規定は定められていない。クレーンは(移動式クレーンと異なり)製造工場で製造されるわけではなく、現場で組み立てられる。そのため、製造時等検査ではなく落成検査を義務付けているのである。

【労働安全衛生法】

(製造の許可)

第37条 特に危険な作業を必要とする機械等として別表第一に掲げるもので、政令で定めるもの(以下「特定機械等」という。)を製造しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けなければならない。

 (略)

(製造時等検査等)

第38条 特定機械等を製造(・・・略・・・)しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で定める事項について、当該特定機械等が、特別特定機械等(特定機械等のうち厚生労働省令で定めるものをいう。以下同じ。)以外のものであるときは都道府県労働局長の(・・・略・・・)検査を受けなければならない。ただし、輸入された特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で定める事項(・・・略・・・)について当該特定機械等を外国において製造した者が次項の規定による検査を受けた場合は、この限りでない。

 (略)

 特定機械等(移動式のものを除く。)を設置した者、特定機械等の厚生労働省令で定める部分に変更を加えた者又は特定機械等で使用を休止したものを再び使用しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で定める事項について、労働基準監督署長の検査を受けなければならない。

別表第一 (第三十七条関係)

一及び二 (略)

 クレーン

 (以下略)

【労働安全衛生法施行令】

(特定機械等)

第12条 法第37条第1項の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。

一及び二 (略)

 つり上げ荷重が三トン以上(スタツカー式クレーンにあっては、1トン以上)のクレーン

 (以下略)

【クレーン等安全規則】

(落成検査)

第6条 クレーンを設置した者は、法第38条第3項の規定により、当該クレーンについて、所轄労働基準監督署長の検査を受けなければならない。ただし、所轄労働基準監督署長が当該検査の必要がないと認めたクレーンについては、この限りでない。

2~6 (略)

(製造検査)

第55条 移動式クレーンを製造した者は、法第38条第1項の規定により、当該移動式クレーンについて、所轄都道府県労働局長の検査を受けなければならない。

(2)誤り。ボイラー則第12条第4項には、「ボイラーを輸入し、又は外国において製造した者が使用検査を受けようとするときは、前項の申請書に当該申請に係るボイラーの構造が法第37条第2項の厚生労働大臣の定める基準(ボイラーの構造に係る部分に限る。)に適合していることを厚生労働大臣が指定する者(外国に住所を有するものに限る。)が明らかにする書面を添付することができる」とされている。

しかし、この制度は、外国で製造された機械等を日本に輸入する場合に、安衛法に基づく検査・検定を受ける必要はあるが、基準等適合証明書を添付することにより、検査・検定を迅速化・簡略化することが可能となる仕組みにすぎない(平成21年3月31日基安安発0331001号参照)。従って、使用検査を受ける必要はないとする本肢は誤りである。

【労働安全衛生法】

(製造の許可)

第37条 特に危険な作業を必要とする機械等として別表第一に掲げるもので、政令で定めるもの(以下「特定機械等」という。)を製造しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けなければならない。

 都道府県労働局長は、前項の許可の申請があつた場合には、その申請を審査し、申請に係る特定機械等の構造等が厚生労働大臣の定める基準に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(使用検査)

第12条 (略)

2及び3 (略)

 ボイラーを輸入し、又は外国において製造した者が使用検査を受けようとするときは、前項の申請書に当該申請に係るボイラーの構造が法第三十七条第二項の厚生労働大臣の定める基準(ボイラーの構造に係る部分に限る。)に適合していることを厚生労働大臣が指定する者(外国に住所を有するものに限る。)が明らかにする書面を添付することができる。

 (以下略)

(3)誤り。ゴンドラ安全規則により労働基準監督署長が行う検査は、性能検査、変更検査及び使用検査であり、落成検査は行わない。

(4)正しい。安衛法第38条第1項の規定により実施が義務付けられる検査のひとつとして、クレーン則第57条第1項(第3号)は、使用を廃止した移動式クレーンを再び設置し、又は使用しようとする者は都道府県労働局長の検査を受けなければならないとする。

【労働安全衛生法】

(製造時等検査等)

第38条 特定機械等を製造(・・・略・・・)しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で定める事項について、当該特定機械等が、特別特定機械等(特定機械等のうち厚生労働省令で定めるものをいう。以下同じ。)以外のものであるときは都道府県労働局長の(・・・略・・・)検査を受けなければならない。ただし、輸入された特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で定める事項(・・・略・・・)について当該特定機械等を外国において製造した者が次項の規定による検査を受けた場合は、この限りでない。

 (略)

【クレーン等安全規則】

(製造検査)

第57条 次の者は、法第38条第1項の規定により、当該移動式クレーンについて、都道府県労働局長の検査を受けなければならない。

一及び二 (略)

 使用を廃止した移動式クレーンを再び設置し、又は使用しようとする者

 (以下略)

(5)誤り。ボイラー則第5条第2項に、溶接によるボイラーについては、溶接検査に合格した後でなければ、構造検査を受けることができないと定める。従って、本肢は逆であり、誤りである。

なお、構造検査と溶接検査はともに安衛法第38条第1項の規定による検査である。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(構造検査)

第5条 ボイラーを製造した者は、法第38条第1項の規定により、同項の登録製造時等検査機関(以下「登録製造時等検査機関」という。)の検査を受けなければならない。

 溶接によるボイラーについては、第7条第1項の規定による検査に合格した後でなければ、前項の規定により登録製造時等検査機関が行う検査(以下この章において「構造検査」という。)を受けることができない。

 (以下略)

(溶接検査)

第7条 溶接によるボイラーの溶接をしようとする者は、法第38条第1項の規定により、登録製造時等検査機関の検査を受けなければならない。ただし、当該ボイラーが附属設備(過熱器及び節炭器に限る。以下この章において同じ。)若しくは圧縮応力以外の応力を生じない部分のみが溶接によるボイラー又は貫流ボイラー(気水分離器を有するものを除く。)である場合は、この限りでない。

 (以下略)

2018年10月28日執筆 2021年10月10日最終修文