問9 特定機械等であるボイラー等による労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令に定められていないものはどれか。
(1)ボイラー室には、水面計のガラス管、ガスケットその他の必要な予備品及び修繕用工具類を備えておかなければならない。
(2)ボイラーの安全弁が2個以上ある場合においては、全ての安全弁を最高使用圧力以下で作動するように調整しなければならない。
(3)第一種圧力容器の圧力計については、使用中その機能を害するような振動を受けることがないようにし、かつ、その内部が凍結し、又は80度以上の温度にならない措置を講じなければならない。
(4)第一種圧力容器取扱作業主任者に、第一種圧力容器に係る設備の運転状態について必要な事項を記録させるとともに、交替時には、確実にその引継ぎを行わせなければならない。
(5)労働者がそうじ、修繕等のためボイラー又は煙道の内部に入るときは、ボイラー又は煙道を冷却し、その内部の換気を行うとともに、使用中の他のボイラーとの管連絡を確実にしゃ断しなければならない。

このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2017年度(平成29年度) | 問09 | 難易度 | ボイラー等による労働災害防止に関する基本的な知識問題である。合否を分けたレベルかもしれない。 |
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ボイラ災害の防止 | 3 |
問9 特定機械等であるボイラー等による労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令に定められていないものはどれか。
(1)ボイラー室には、水面計のガラス管、ガスケットその他の必要な予備品及び修繕用工具類を備えておかなければならない。
(2)ボイラーの安全弁が2個以上ある場合においては、全ての安全弁を最高使用圧力以下で作動するように調整しなければならない。
(3)第一種圧力容器の圧力計については、使用中その機能を害するような振動を受けることがないようにし、かつ、その内部が凍結し、又は80度以上の温度にならない措置を講じなければならない。
(4)第一種圧力容器取扱作業主任者に、第一種圧力容器に係る設備の運転状態について必要な事項を記録させるとともに、交替時には、確実にその引継ぎを行わせなければならない。
(5)労働者がそうじ、修繕等のためボイラー又は煙道の内部に入るときは、ボイラー又は煙道を冷却し、その内部の換気を行うとともに、使用中の他のボイラーとの管連絡を確実にしゃ断しなければならない。
正答(2)
【解説】
受験テクニックだが、仮に条文を知らなくても本問は正答可能である。まず、(2)に「ボイラーの安全弁が2個以上ある場合においては」とある。仮にこのような条文があると仮定すれば、わざわざ「2個以上ある場合」と断る以上、1個しかない場合とは異なる規定がなされているはずである。そうでないなら、「ボイラーの安全弁については」と書けばすむことだからである。
しかし、1個しかない場合は最高使用圧力以下で作動するようにしなければならないことは当然であろう。そうでなければ、安全弁の意味はあるまい。そうなると、わざわざ「2個以上ある場合」と断って、1個しかない場合と同じことを規定しているのは奇妙である。
だとすればこのような条文は存在していないのではないかと推論することができる。条文に慣れていれば、知識がなかったとしても、これが怪しいと見当をつけることができるだろう。
(1)定められている。本肢と同じ内容が、ボイラー則(ボイラー及び圧力容器安全規則)第 29 条(第三号)により義務付けられている。
【ボイラー及び圧力容器安全規則】
(ボイラー室の管理等)
第29条 事業者は、ボイラー室の管理等について、次の事項を行なわなければならない。
一~二 (略)
三 ボイラー室には、水面計のガラス管、ガスケットその他の必要な予備品及び修繕用工具類を備えておくこと。
四~六 (略)
(2)定められていない。ボイラー則第 28 条第1項第一号には「安全弁は、最高使用圧力以下で作動するように調整すること」とされているが、同条第2項に「安全弁が2個以上ある場合において、1個の安全弁を最高使用圧力以下で作動するように調整したときは、他の安全弁を最高使用圧力の3パーセント増以下で作動するように調整することができる」とある。
このようにすることで、ボイラーの安全弁の作動する順序を決めることが可能となる。
なお、コンサルタント試験の産業安全法令の範囲からは外れるが、ボイラー構造規格の関係条文を示しておく。なお、第 62 条及び第 65 条は鋼製ボイラーに関する規定で、第 94 条は鋳鉄製ボイラーに関する規定である。
【ボイラー及び圧力容器安全規則】
(附属品の管理)
第28条 事業者は、ボイラーの安全弁その他の附属品の管理について、次の事項を行なわなければならない。
一 安全弁は、最高使用圧力以下で作動するように調整すること。
二~八 (略)
2 前項第一号の規定にかかわらず、事業者は、安全弁が2個以上ある場合において、1個の安全弁を最高使用圧力以下で作動するように調整したときは、他の安全弁を最高使用圧力の3パーセント増以下で作動するように調整することができる。
【ボイラー構造規格】
(安全弁)
第62条 蒸気ボイラーには、内部の圧力を最高使用圧力以下に保持することができる安全弁を2個以上備えなければならない。ただし、伝熱面積50平方メートル以下の蒸気ボイラーにあっては、安全弁を一個とすることができる。
2及び3 (略)
(温水ボイラーの逃がし弁又は安全弁)
第65条 (第1項 略)
2 水の温度が120度を超える温水ボイラーには、内部の圧力を最高使用圧力以下に保持することができる安全弁を備えなければならない。
(安全弁その他の安全装置)
第94条 蒸気ボイラーには、内部の圧力を最高使用圧力以下に保持することができる安全弁その他の安全装置を備えなければならない。
(3)定められている。ボイラー則第 65 条第1項(第二号)に本肢と同様な規定がある。
【ボイラー及び圧力容器安全規則】
(附属品の管理)
第65条 事業者は、第一種圧力容器の安全弁その他の附属品の管理について、次の事項を行なわなければならない。
一 (略)
二 圧力計は、使用中その機能を害するような振動を受けることがないようにし、かつ、その内部が凍結し、又は80度以上の温度にならない措置を講ずること。
三 (略)
2 (略)
(4)定められている。ボイラー則第 63 条(第六号)に本肢と同様な規定がある。
【ボイラー及び圧力容器安全規則】
(第一種圧力容器取扱作業主任者の職務)
第63条 事業者は、第一種圧力容器取扱作業主任者に、次の事項を行わせなければならない。
一~五 (略)
六 第一種圧力容器に係る設備の運転状態について必要な事項を記録するとともに、交替時には、確実にその引継ぎを行うこと。
(5)定められている。ボイラー則第 34 条(第一号、第二号及び第四号)に本肢と同様な規定がある。
【ボイラー及び圧力容器安全規則】
(ボイラー又は煙道の内部に入るときの措置)
第34条 事業者は、労働者がそうじ、修繕等のためボイラー(燃焼室を含む。以下この条において同じ。)又は煙道の内部に入るときは、次の事項を行なわなければならない。
一 ボイラー又は煙道を冷却すること。
二 ボイラー又は煙道の内部の換気を行なうこと。
三 (略)
四 使用中の他のボイラーとの管連絡を確実にしや断すること。