問5 掘削作業等における労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)採石作業を行うときは、地山の崩壊又は土石の落下による労働者の危険を防止するため、点検者を指名して、発破を行った後、当該発破を行った箇所及びその周辺の浮石及びき裂の有無及び状態を点検させなければならない。
(2)明り掘削の作業を行う場合において、掘削機械、積込機械及び運搬機械の使用によるガス導管、地中電線路その他地下に在する工作物の損壊により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、これらの機械を使用してはならない。
(3)土石流危険河川において建設工事の作業を行うときは、作業開始時にあっては当該作業開始前24時間における降雨量を、作業開始後にあっては1時間ごとの降雨量を、それぞれ雨量計による測定その他の方法により把握し、かつ、記録しておかなければならない。
(4)荷重がかかっているずい道支保工の部材を取りはずすときは、当該部材にかかっている荷重をずい道型わく支保工等に移す措置を講じた後でなければ、当該部材を取りはずしてはならない。
(5)土止め支保工を設けたときは、その後10日をこえない期間ごと、中震以上の地震の後及び大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に、部材の損傷、変形、腐食、変位及び脱落の有無及び状態等について土止め支保工作業主任者に点検させ、異常を認めたときは、直ちに、補強し、又は補修させなければならない。
このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2017年度(平成29年度) | 問05 | 難易度 | 掘削作業等に関するかなり詳細な知識問題である。かなりの難問だっただろう。 |
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掘削作業等 | 5 |
問5 掘削作業等における労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)採石作業を行うときは、地山の崩壊又は土石の落下による労働者の危険を防止するため、点検者を指名して、発破を行った後、当該発破を行った箇所及びその周辺の浮石及びき裂の有無及び状態を点検させなければならない。
(2)明り掘削の作業を行う場合において、掘削機械、積込機械及び運搬機械の使用によるガス導管、地中電線路その他地下に在する工作物の損壊により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、これらの機械を使用してはならない。
(3)土石流危険河川において建設工事の作業を行うときは、作業開始時にあっては当該作業開始前24時間における降雨量を、作業開始後にあっては1時間ごとの降雨量を、それぞれ雨量計による測定その他の方法により把握し、かつ、記録しておかなければならない。
(4)荷重がかかっているずい道支保工の部材を取りはずすときは、当該部材にかかっている荷重をずい道型わく支保工等に移す措置を講じた後でなければ、当該部材を取りはずしてはならない。
(5)土止め支保工を設けたときは、その後10日をこえない期間ごと、中震以上の地震の後及び大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に、部材の損傷、変形、腐食、変位及び脱落の有無及び状態等について土止め支保工作業主任者に点検させ、異常を認めたときは、直ちに、補強し、又は補修させなければならない。
正答(5)
【解説】
これは、かなりの難問だったのではなかろうか。土木の専門家以外の受験生の場合は、最初から捨て問と割り切る必要もあるだろう。なお、受験テクニックとしては、まったく知識がない問に当たったときは、間違っている肢として数値の入っている肢を選ぶという方法もあるかもしれない。ただし、最後の手段ではあるが。
なお、安全衛生関係法令では、「を超えない期間ごと」の前に付くのは「2年」、「1年」、「1月」、「7日」の4種類しかなく、「7日」が付いているのは安衛則第 373 条の1つだけだということは覚えておいてもよいかもしれない。
(1)正しい。安衛則第 401 条第2号に、本肢の通りの条文がある。これは、安全のためには必要なことであり、特に迷わなかったのではなかろうか。
【労働安全衛生規則】
(点検)
第401条 事業者は、採石作業を行なうときは、地山の崩壊又は土石の落下による労働者の危険を防止するため、次の措置を講じなければならない。
一 (略)
二 点検者を指名して、発破を行なつた後、当該発破を行なつた箇所及びその周辺の浮石及びき裂の有無及び状態を点検させること。
(2)正しい。安衛則第 363 条に、本肢の通りの条文がある。これも、安全のためには必要なことであり、特に迷わなかったのではなかろうか。
【労働安全衛生規則】
(掘削機械等の使用禁止)
第363条 事業者は、明り掘削の作業を行なう場合において、掘削機械、積込機械及び運搬機械の使用によるガス導管、地中電線路その他地下に存する工作物の損壊により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、これらの機械を使用してはならない。
(3)正しい。安衛則第 575 条の 11 に、本肢の通りの条文がある。なお、土石流危険河川とは、降雨、融雪又は地震に伴い土石流が発生するおそれのある河川のことをいう。
実際に条文を知らなければ、本問で迷うのはこの肢だろう。作業開始前 24 時間における降雨量というのは、常識的には短すぎる。実務においては、降雨が 24 時間以上降り続いている場合は、少なくとも一連の降雨(前後に 24 時間以上の無降雨期間があるひとまとまりの降雨)(※)における降雨量を調べるべきだろう。
※ 一連の降雨について調べれば絶対に安全というわけではない。なお、国土交通省「土砂災害警戒情報の基準設定及び検証の考え方」(P9)を参照されたい。
【労働安全衛生規則】
(把握及び記録)
第575条の11 事業者は、土石流危険河川において建設工事の作業を行うときは、作業開始時にあっては当該作業開始前24時間における降雨量を、作業開始後にあっては1時間ごとの降雨量を、それぞれ雨量計による測定その他の方法により把握し、かつ、記録しておかなければならない。
(4)正しい。安衛則第 395 条に、本肢の通りの条文がある。また、法定されていなくても当たり前のことであろう。
【労働安全衛生規則】
(部材の取りはずし)
第395条 事業者は、荷重がかかっているずい道支保工の部材を取りはずすときは、当該部材にかかっている荷重をずい道型わく支保工等に移す措置を講じた後でなければ、当該部材を取りはずしてはならない。
(5)誤り。安衛則第 373 条に関する問題であるが、「10 日を超えない期間」とあるのが誤りで、正しくは「7日を超えない期間」であり、また点検をさせるのは土止め支保工作業主任者である必要はない(安衛則第 375 条参照)。
まあ、点検は曜日を決めて(休み明けとかに)行う方が、うっかり忘れを防止するには有効だろう。もっとも、月曜が休みだったり、7日以上の休みがある場合にどうするべきかは気にならなくもないが・・・。
【労働安全衛生規則】
(点検)
第373条 事業者は、土止め支保工を設けたときは、その後7日をこえない期間ごと、中震以上の地震の後及び大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に、次の事項について点検し、異常を認めたときは、直ちに、補強し、又は補修しなければならない。
一 部材の損傷、変形、腐食、変位及び脱落の有無及び状態
二 切りばりの緊圧の度合
三 部材の接続部、取付け部及び交さ部の状態
(土止め支保工作業主任者の職務)
第375条 事業者は、土止め支保工作業主任者に、次の事項を行なわせなければならない。
一 作業の方法を決定し、作業を直接指揮すること。
二 材料の欠点の有無並びに器具及び工具を点検し、不良品を取り除くこと。
三 要求性能墜落制止用器具等及び保護帽の使用状況を監視すること。
※ 本問出題当時は、安衛則第 375 条第三号の「要求性能墜落制止用器具等」は「安全帯等」とされていた。