労働安全コンサルタント試験 2017年 産業安全一般 問27

労働衛生管理




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合格

 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問27 難易度 毎年出される衛コンとの共通問題である。今年は、安コンの受験生には難問だったかもしれない。
労働衛生管理

問27 労働衛生管理に関する次の措置のうち、作業管理に該当しないものはどれか。

(1)特定化学物質の取扱いに関する作業規程の作成

(2)振動障害予防のためのチェーンソー作業の作業時間の管理

(3)有害物質への個人ばく露濃度の測定

(4)有害物質を取り扱う設備の密閉化

(5)有機溶剤を取り扱う業務における呼吸用保護具の使用

正答(4)

【解説】

本問の(3)について、出題者の意図としては「有害物質への個人ばく露濃度の測定は作業管理に該当する」ということであろう。かなり迷った受験生がいたようだ。なお、この問題は、この年の労働衛生コンサルタント試験の問1として用いられていたものである。

労働衛生の3管理について問われたときの、解法テクニックとして、作業者が現場にいなくても実施可能なものは作業環境管理に分類し、作業者が作業現場にいなければ実施できないものは作業管理に分類する。さらに、作業者の身体にかかわることで作業者が現場を離れていても実施できるものを健康管理に分類することで、ほぼ正答できる。

ただ、この方法で迷うものとして、次のものがある。なお、このいずれも教科書的には作業管理だが、作業環境管理で活用できないこともない。

① 個人ばく露測定 作業管理

② 生物学的モニタリング 作業管理

(1)作業規定は作業の方法等を定めるものであり、作業規定の作成は作業管理に該当する。

(2)作業時間の管理は作業管理に該当する。

(3)個人ばく露濃度の測定については、従来より作業管理に該当するものとされている。

なお、本肢には若干の留意するべき点がある。確かに、通常は「作業環境測定」の結果は作業環境管理に用いられ、「個人ばく露濃度の測定」の結果は作業管理に用いられると考えられている。しかし、このような考え方は、厳密には正しくない。

個人ばく露測定も作業環境測定も、その結果は作業環境管理にも作業管理にも用いることができるのである。「個人ばく露濃度の測定」は「作業管理の手段としても用いられる」ので、確かに「作業管理に該当しない」とはいえない。

ただ、日本産業衛生学会の化学物質の個人ばく露測定のガイドラインにも、個人ばく露濃度測定を「必要以上に作業管理と固定的に結びつけること」は適切ではないと明記されていることに留意するべきであろう。

【化学物質の個人ばく露測定のガイドラインから】

  時折,「個人ばく露測定を行った場合は作業管理を行う」と言われることがあるが,このような考え方は誤りである.個人ばく露測定の場合であっても優先順は作業環境管理,次いで作業管理で変わらない.(補足資料20参照)

【補足資料20】

 「作業環境測定を行った場合は作業環境管理を行う」という概念があり,更にこれとの対比で,「個人ばく露測定を行った場合は作業管理を行う」と言われることが時折ある.個人ばく露測定と作業管理を必要以上に固定的に結び付けるこのような考え方は適切でない.

(4)有害物質を取り扱う設備の密閉化は「作業環境管理」に該当し、作業管理には該当しない。

(5)呼吸用保護具の使用は作業管理に該当する。

2018年10月27日執筆 2020年04月11日修正