労働安全コンサルタント試験 2017年 産業安全一般 問16

保護具などに関する各種試験方法




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 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問16 難易度 保護具などの各種試験方法に関する知識問題であるが、かなり詳細な内容である。難問の部類だろう。
保護具の試験方法

問16 保護具などに関する各種試験方法についての次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)保護帽の衝撃試験においては、衝撃を受ける装置の基礎は、剛性が高いことが必要である。

(2)保護帽の衝撃試験は、温度によってプラスチックの物理特性が大きく変化するので、保護帽を高温状態又は低温状態に一定時間おいた後に行う。

(3)製造時の墜落制止用器具については、耐衝撃性能を検査するため、引張試験を行う。

(4)経年使用した電気用ゴム手袋では、絶縁性能を検査するため、電圧をかける耐電圧試験を行う。

(5)製造時の安全ネットについては、網糸の強度を検査するため、網糸の試験片に対して等速引張試験を行って引張強さを調べる。

※ 本肢は、出題後の省令等の改正に合わせて、一部修正を行っている。

正答(3)

【解説】

(1)適切である。保護帽について“衝撃試験”という用語はあまり用いられない。本肢にいう衝撃試験とは衝撃吸収試験のことだと思われる。そうだとすれば、JIS T 8131:2015には、「ヘルメットを人頭模型に装着し、人頭模型へ伝達される衝撃力及びその時間経過を測定する」とされており、衝撃吸収試験の「装置の基礎は、打撃の影響に耐えられるもので、一体となった十分に大きなものでなければならない」とされている。はっきりしないが、不適切とまでは言えないのではないかと思われる。

(2)適切である。保護帽の規格(昭和50年9月8日労働省告示第66号:最終改定平成12年12月25日労働省告示120号)の第8条に「衝撃吸収性能等」の規定があり、第1項に「保護帽は、次の表の上欄に掲げる区分に応じ、同表の中欄に定める試験方法による試験を行つた場合に、それぞれ同表の下欄に定める性能を有するものでなければならない」とされ、表中の試験方法欄に次の規定がある。

【物体の飛来又は落下による危険を防止するための保護帽】

 保護帽について、高温処理、低温処理又は浸せき処理(以下この表において「高温処理等」という。)をした後、それぞれ、当該保護帽のヘッドバンドが人頭模型に密着しない状態で装着し、(以下略)

【墜落による危険を防止するための保護帽】

  保護帽について、高温処理等をした後、それぞれ、(以下略)

(3)不適切である。本問の出題当時、本肢は「(3)製造時の安全帯については、U字つり状態でのみ使用する構造のものを除いて、胴ベルトの耐衝撃性能を検査するため、引張試験を行う。」とされており「不適切」な肢(正答)であった。

しかし、本問の出題時の「安全帯」は、現在は「墜落制止用器具」に変更されている。また、改正後の墜落制止用器具の規格(平成31年1月25日労働省告示第11号)からは、U字つり状態でのみ使用する構造のものが外れるなど大きく修正されている。

そのため、本肢の問題文も修正した。修正後の本肢の正誤については、墜落制止用器具の規格第8条(耐衝撃性等)には、耐衝撃性等として「引張試験」ではなく「落下試験」が規定されている。

すなわちフルハーネス型の墜落制止用器具の耐衝撃性能を検査するために行うのは落下試験であって引張試験ではない。従って、修正後の本肢も「不適切」ということになる。

なお、フルハーネス及び胴ベルトという「部品の強度」については、引張試験を行うことになるので誤解しないようにしよう(墜落制止用器具の規格第4条)。2016年の安全コンサルタント試験の問16の(3)は「製造時の安全帯のベルトについて、引張試験を行い、強度を調べる」となっており、正しい肢であるとされていた。

【墜落制止用器具の規格】

(耐衝撃性等)

第8条 フルハーネスは、トルソーを使用し、日本産業規格 T 8165(墜落制止用器具)に定める落下試験の方法又はこれと同等の方法による試験を行った場合において、当該トルソーを保持できるものでなければならない。

 (以下略)

(4)適切である。安衛則第351条は「事業者は、第348条第1項各号に掲げる絶縁用保護具等(同項第5号に掲げるものにあっては、交流で300Vを超える低圧の充電電路に対して用いられるものに限る。以下この条において同じ。)については、6月以内ごとに1回、定期に、その絶縁性能について自主検査を行わなければならない。ただし、6月を超える期間使用しない絶縁用保護具等の当該使用しない期間においては、この限りでない」とされている。そして、「安衛則第348条第1項各号に掲げる絶縁用保護具等」には絶縁用保護具が含まれている(同348条第1項第1号/同341条第1項第1号)。

この絶縁性能の試験は、昭和50年7月21日基発第415号「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行について」の記の1の七に「本条の絶縁性能についての定期自主検査を行う場合の耐電圧試験は、絶縁用保護具等の規格(昭和47年労働省告示第144号)に定める方法によること」とある。

そして、絶縁用保護具の規格(昭和47年12月4日労働省告示第144号:改定昭和50年3月29日労働省告示第33号)の耐電圧試験は、電圧をかける耐電圧試験が定められている。

従って、本肢は正しい。しかし、上記の昭和50年通達は、厚生労働省のサイトには公表されておらず、電気分野以外の受験生は、かなり迷ったのではないかと思う。

(5)適切である。墜落による危険を防止するためのネットの構造等の安全基準に関する技術上の指針(昭51.8.6 技術上の指針公示第8号)の3-1(1)には、「網糸は、試験用糸から切り取った試験片の両端を引張試験機のチャックでつかむ方法又はこれに類似した方法で等速引張試験を行った場合において、その引張強さが、次の表の左欄に掲げる網目の種類に応じ、それぞれ同表の右欄に定める値以上であること」とされている。従って本肢は正しい。

2018年10月27日執筆 2024年08月25日最終改訂