問9 ヒューマンエラーの対策などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)ヒューマンエラーの発生確率を下げる対策として、計器表示方法をデジタル表示からアナログ表示にして、連続的な変化の傾向と程度を一目で分かるようにすることがある。
(2)ヒューマンエラーの発生確率を下げる対策として、照明、空調等の作業環境の改善、作業方法の改善などにより作業をやりやすくすることがある。
(3)機器やシステムの一部に故障が起きても、安全側に作動し、システム全体に影響が出ないようなシステム設計をフール・プルーフといい、それをシステム設計に導入することが、ヒューマンエラーによる事故低減につながる。
(4)使用する機器に複数のデザイン方式が混在するとヒューマンエラーが生じやすいので、デザイン方式を標準化することはヒューマンエラーを防止するために重要である。
(5)人間の意識レベルを、フェーズ0(無意識)、フェーズⅠ(意識ぼけ)、フェーズⅡ(普通)、フェーズⅢ(積極的活動)及びフェーズⅣ(過緊張)の5段階に分けているモデルでは、人間が最もエラーを起こしにくいのはフェーズⅢのときである。
このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2017年度(平成29年度) | 問09 | 難易度 | ヒューマンエラーの対策に関する基本的な知識問題。正答できなければならない。 |
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ヒューマンエラーの対策 | 2 |
問9 ヒューマンエラーの対策などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)ヒューマンエラーの発生確率を下げる対策として、計器表示方法をデジタル表示からアナログ表示にして、連続的な変化の傾向と程度を一目で分かるようにすることがある。
(2)ヒューマンエラーの発生確率を下げる対策として、照明、空調等の作業環境の改善、作業方法の改善などにより作業をやりやすくすることがある。
(3)機器やシステムの一部に故障が起きても、安全側に作動し、システム全体に影響が出ないようなシステム設計をフール・プルーフといい、それをシステム設計に導入することが、ヒューマンエラーによる事故低減につながる。
(4)使用する機器に複数のデザイン方式が混在するとヒューマンエラーが生じやすいので、デザイン方式を標準化することはヒューマンエラーを防止するために重要である。
(5)人間の意識レベルを、フェーズ0(無意識)、フェーズⅠ(意識ぼけ)、フェーズⅡ(普通)、フェーズⅢ(積極的活動)及びフェーズⅣ(過緊張)の5段階に分けているモデルでは、人間が最もエラーを起こしにくいのはフェーズⅢのときである。
正答(3)
【解説】
本問は(3)以外の問が、常識で考えて正しいと判る。また、(3)もよく知られていることなので、ほとんどの受験生が正答に達したのではなかろうか。
(1)適切である。計器のデジタルとアナログのメリット、デメリットを挙げるとき、デジタルは正確に読み取れるが「連続的な変化の傾向と程度」を感覚的に理解するには適していない。これは、村田厚生「ヒューマンエラーの科学 失敗とうまく付き合う方法」(日刊工業新聞社)の次表に分かりやすくまとめられている。これによると、デジタル計器とアナログ計器では以下のような特性があるとされている。これによると「連続的な変化の傾向と程度」を読み取るにはアナログ表示の方がよいことが分かる。
特 徴 | アナログ表示 | デジタル表示 |
---|---|---|
読みやすさ | △ | ◎ |
変化の検出しやすさ | ◎ | × |
調節しやすさ | ◎ | △ |
村田厚生「ヒューマンエラーの科学 失敗とうまく付き合う方法」(日刊工業新聞社)
(2)適切である。照明、空調等の作業環境の改善、作業方法の改善などにより作業をやりやすくすることにより、ヒューマンエラーは減少することができるとされている。従って正しい。
(3)適切ではない。本肢はフェールセーフについての記述である。フール・プルーフに関するものではない。
以下の表をざっと理解しておくとよい。
フェールセーフ |
故障が安全側に起きるようにすること。 例:安全装置故障時に、起動できないようにする。信号の故障(固定)時には、赤に固定する(青にしない)。 |
---|---|
フェールソフト |
事故の際に、より被害の少ない方を破壊すること。 例:自動車のボンネットを弱くし、衝突時に乗員を守る。 |
フェールオーバー※ |
システムに冗長性を持たせて、部分的な故障が影響を及ぼさないようにすること。 例:多重化(航空機の燃料計。電力供給網。HDDのRAID) |
フールプルーフ |
人間の誤判断、誤操作等が悪影響を発生させないようにすること。 例:航空機の自動操縦(誤操作では失速しない(はず)。) |
※ 多重化による信頼性向上をフォールトトレランスと呼び、フェールオーバーと区別する考え方もある。
(4)適切である。一般には、複数のデザインが混在しているとヒューマンエラーの原因となる。例えば、バルブなどでもどちらに回せば開くかを統一しておく方が誤りは少なくなる。電車の信号のデザインなども各社で統一することが望ましい。従って本肢は適切といえる。
しかしながら、同じようなスイッチがあると、逆に誤操作の原因になることもある。航空機では、ギア(着陸装置)とフラップ(翼の揚力を上げるための装置)のスイッチが、同じ形で同じ場所にあったため、誤操作をする例があった。そこで、フラップスイッチは翼の形、ギアスイッチはタイヤの形にしている。デザインをあえて変更した例である。
(5)適切である。正しい、人間の緊張のレベルは高すぎても低すぎてもエラーを起こしやすいとされており、意識レベルを5段階に分ける本肢のモデルでは、フェーズⅢのときが最もエラーを起こしにくいとされている。