問2 「企業の自主的安全活動」や「自主対応型の安全管理」に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)日本では、企業の自主的な安全活動を促進することなどを目的として、労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針が示されている。
(2)日本の職場で実施されているツールボックス・ミーティング、4Sなどの安全活動は、QC活動など職場の労働者全員による活動の一環として発展したもので、我が国の企業文化と結び付いている。
(3)労働災害が減少しない実態を踏まえてまとめられた英国の「ローベンス報告」では、急速に進展する技術に即応できる安全管理を徹底するため、法律では一般原則のみを定め、具体的・詳細な規定は自主的な実践コードやガイダンスに委ねることが適当と提言している。
(4)小集団活動は、労働者が自主的、自発的に実施することが基本であり、管理監督者の関与は好ましくない。
(5)危険予知活動は、工学的対策等によりリスク低減措置を講じてもなお残る残留リスクや人間の行動に起因するリスクに対して有効な活動である。
このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2017年度(平成29年度) | 問02 | 難易度 | 自主的安全活動などに関する初歩的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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自主的安全活動など | 1 |
問2 「企業の自主的安全活動」や「自主対応型の安全管理」に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)日本では、企業の自主的な安全活動を促進することなどを目的として、労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針が示されている。
(2)日本の職場で実施されているツールボックス・ミーティング、4Sなどの安全活動は、QC活動など職場の労働者全員による活動の一環として発展したもので、我が国の企業文化と結び付いている。
(3)労働災害が減少しない実態を踏まえてまとめられた英国の「ローベンス報告」では、急速に進展する技術に即応できる安全管理を徹底するため、法律では一般原則のみを定め、具体的・詳細な規定は自主的な実践コードやガイダンスに委ねることが適当と提言している。
(4)小集団活動は、労働者が自主的、自発的に実施することが基本であり、管理監督者の関与は好ましくない。
(5)危険予知活動は、工学的対策等によりリスク低減措置を講じてもなお残る残留リスクや人間の行動に起因するリスクに対して有効な活動である。
正答(4)
【解説】
本問は、(4)が明らかに適切ではなく、他の選択肢について検討するまでもない。常識問題といってよいだろう。ケアレスミス以外に誤答した受験生はいなかったのではなかろうか。
(1)適切である。安衛法第24条の4は「厚生労働大臣は、事業場における安全衛生の水準の向上を図ることを目的として事業者が一連の過程を定めて行う次に掲げる自主的活動を促進するため必要な指針を公表することができる」とし、これに基づいて「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」が公表されている。また労働災害防止団体が独自に労働安全衛生マネジメントシステムガイドラインを公表している。
(2)適切である。価値判断の問題ではあるが、我が国の労働安全衛生の分野において、ほぼ正しいと考えられている。従って本肢は正しいとしてよいであろう。
なお、ISOにおいて労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格(ISO45001)が作成されており、我が国でもこれに対応してJIS Q 45001:2018が策定されたが、これらにはわが国独自の安全活動が含まれていないため、JIS45001に上乗せされる規格としてわが国独自の安全活動等を含んだJIS Q 45100も策定されている。
(3)適切である。1972年にローベンス卿を中心とする委員会が提出したローベンス報告は19章からなる長大な報告書である。報告書は、余りにも法律が多過ぎること、法律の多くが本質的に不備であることなどの理由から「法律・監督中心から自主対応への移行及び行政機関の統一」を提言している。
なお、ローベンス報告を受けて英国では労働安全衛生法(Health and Safety at Work etc. Act)が策定された。
(4)適切ではない。自主的な活動であっても、それを効果的に進めてゆくためには管理監督者が適切に関与することが必要である。
(5)適切である。職場の安全管理の基本は、本質安全化や工学的対策によるリスクの低減であることはいうまでもない。しかしながら、どのような職場であってもリスクは残ってしまうものである。そのため、労働者の危険に対する感性を高めて、安全な行動をとれるようにする必要がある。厚生労働省の職場のあんぜんサイトには、危険予知訓練とは「作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法」とされている。