労働安全コンサルタント試験 2017年 産業安全一般 問01

安全管理など




問題文
トップ
合格

 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2017年度(平成29年度) 問01 難易度 安全管理に関するごく初歩的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
安全管理など

問1 安全管理などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)安全とは、許容不可能なリスクがないことをいい、危害を引き起こすおそれがあると思われるハザードから守られている状態をいう。

(2)労働災害が発生した場合においては、法令に基づいて被災者に支払われる労災保険による補償費と、これ以外の損失及び費用を比較すると、一般に後者の方が大きい。

(3)ライン型の安全管理は、スタッフ型に比べて、指示、改善策などが速やかに徹底されにくい傾向がある。

(4)ライン型の安全管理は、スタッフ型に比べて、日常の業務に追われて安全知識や安全情報を自ら身に付けることが難しく、それぞれのラインの管理・監督者の安全指導能力により格差が生じやすい。

(5)ラインの安全管理者は、ラインにおける安全管理業務について責任を持つため、自己の管理範囲内の職場の安全に関する問題点について知っていなければならない。

正答(3)

【解説】

この問題は、(2)がやや問題の意味が不明なものの、(3)が明らかに誤っているのでそれほど難しくはない。ラインとは本来の業務に関する指揮系統の流れであるから、総務部など専門の部署に置かれるスタッフよりも、指示などは速やかに徹底しやすい。

ライン型とスタッフ型の意味・特徴や、メリット・デメリットは、毎年、必ず出題されているので、確実に理解しておきたい。

(1)適切である。「安全」という用語についての厚生労働省の公式な定義があるわけではないが、ISO/IEC(2014)"Guide 51, Safety aspects --Guidelines for their inclusion in standards"によると安全とは「許容できないリスクがないこと」とされている。従って、適切でないとはいえない。

(2)疑問はあるが、適切であるとしておく。本問は、選択肢の(3)が明らかに不適切なので、他の選択肢を深く考えた受験生はいないのではないかと思う。(2)は、問題そのものの意味がかなりあいまいなので、“捨て肢”と割り切るべきだろう。一応、私なりの解説を別添に付したが、受験対策としては、読み飛ばしていただいて構わない。

なお、本年の安全一般の問題のすべての選択肢で、文中に「一般に」と記されているものはすべて正しい(正答とは限らない)肢である。最後の手段ではあるが、ひとつのヒントにはなるかもしれない。

(3)適切ではない。ライン型とは、本来業務についてのトップから生産現場までの指揮系統の中にいる管理職や職長などの職員に安全管理を行わせるものである。一方、スタッフ型とは、本来業務とは独立した総務部門などの専門的な職員に安全管理を行わせるものである。

そのため、ライン型はスタッフ型に比べて、指示、改善策などが速やかに徹底されやすいという利点がある。従って、本肢は適切ではなく、正答となる。

(4)適切である。ライン型は、本来業務に携わる職員によって安全管理が行われるため、日常の業務に追われて安全知識や安全情報を自ら身に付けることが難しく、それぞれのラインの管理・監督者の安全指導能力により格差が生じやすい。

(5)適切である。これは当然のことを言っている。ラインの安全管理者が自己の管理範囲内の職場の安全に関する問題点について知っていなければ、安全管理が成功するはずがない。

2018年10月27日執筆 2020年03月29日修正