労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全関係法令 問14

特別教育の対象となる業務




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問14 難易度 特別教育の対象となる業務を問う問題である。あまり出題される範囲ではないだけに難問だったか。
特別教育の対象

問14 次の業務のうち、労働安全衛生法令上、安全又は衛生のための特別の教育を行うことが事業者に義務付けられているものはどれか。

(1)木材加工用機械を用いて行う木材の加工の業務

(2)コンクリートポンプ車の作業装置の操作の業務

(3)可燃性ガス及び酸素を用いて行う金属の溶接又は溶断の業務

(4)射出成形機を用いて行う樹脂の成形加工の業務

(5)型枠支保工の組立て又は解体の作業に係る業務

正答(2)

【解説】

安衛法第 59 条第3項は、「事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない」とする。これが本問の特別教育を義務付ける規定である。

労働安全衛生法では、義務の対象を政令で定め、具体的な措置の内容については省令で定めていることが多いが、特別教育は義務の対象を省令で定めているので注意すること。

そして、本条の「厚生労働省令で定めるもの」は安衛則第 36 条にある。条文の番号まで覚える必要はないが、特別教育を必要とする業務が安衛則第 36 条にあることは、学習が進んでいれば自然に覚えてしまうほどよく確認する基本的な条文である。

すべてを正確に記憶することは困難であろうが、危険な業務(※)のうち主なものは覚えておくようにしたい。

※ 特別教育が必要な業務の多くは、危険な業務か有害な業務のいずれか一方であるが、有害な業務は、安全コンサルタント試験ではあまり出題されない。

(1)義務付けられていない。木材加工用機械を用いて行う木材の加工の業務は、安衛則第 36 条にはない。

なお、作業主任者の選任の必要な業務について定める安衛令第6条(第6号)には、「木材加工用機械(丸のこ盤、帯のこ盤、かんな盤、面取り盤及びルーターに限るものとし、携帯用のものを除く。)を5台以上(当該機械のうちに自動送材車式帯のこ盤が含まれている場合には、3台以上)有する事業場において行う当該機械による作業」が定められており、作業主任者の選任が必要となる。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(作業主任者を選任すべき作業)

第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

一~五の二 (略)

 木材加工用機械(丸のこ盤、帯のこ盤、かんな盤、面取り盤及びルーターに限るものとし、携帯用のものを除く。)を5台以上(当該機械のうちに自動送材車式帯のこ盤が含まれている場合には、3台以上)有する事業場において行う当該機械による作業

七~二十三 (略)

(2)義務付けられている。コンクリートポンプ車は、安衛令別表第7第5号のコンクリート打設機械に含まれる。そして、安衛則第 36 条第十号の二には「令別表第七第五号に掲げる機械の作業装置の操作の業務」が定められている。従って、本肢は特別教育の対象である。

【労働安全衛生法】

(安全衛生教育)

第59条 (第1項及び第2項 略)

 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

別表第七 建設機械(第十条、第十三条、第二十条関係)

一~四 (略)

 コンクリート打設用機械

 コンクリートポンプ車

 (略)

 (略)

【労働安全衛生規則】

(特別教育を必要とする業務)

第36条 法第59条第3項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。

一~十 (略)

十の二 令別表第七第五号に掲げる機械の作業装置の操作の業務

十の三~四十一 (略)

(3)義務付けられていない。可燃性ガス及び酸素を用いて行う金属の溶接又は溶断の業務は、安衛則第 36 条にはない。

なお、就業制限業務について定める安衛令第 20 条(第十号)には「可燃性ガス及び酸素を用いて行なう金属の溶接、溶断又は加熱の業務」が定められており、安衛則別表第三により、①ガス溶接作業主任者免許を受けた者、②ガス溶接技能講習を修了した者、③その他厚生労働大臣が定める者のいずれかでなければ就くことはできない。

【コラム:作業主任者と就業制限業務】

作業主任者の資格は、指揮・管理を行うための資格であって、業務を行うための資格ではない。そのため、作業主任者の資格を有する者が安衛法第 61 条の就業制限業務に就けることは、原則としてない(※)

※ 特別教育が必要な業務についても、(一部免除などの例外はあるにせよ)原則として作業主任者が特別教育を受けなくてもよいということにはならない。

唯一の例外が、このガス溶接の業務で、作業主任者が就業制限業務を行えるのである。これは、ガス溶接業務が就業制限業務となった理由が、ガス溶接に用いる可燃性ガス等の機器の取扱いが危険だからである(※)。機器の取扱いに必要なのは「技能」ではなく「知識」だと考えられたために、作業主任者についても就業制限業務を行うことができるとされたのである。

※ 「ガス溶接技能講習規程」第2条第2項は、ガス溶接技能講習における実技講習の科目として、「ガス溶接等の業務のために使用する設備の取扱い」のみを定める。ガスを用いた溶断や溶接は、技能講習の実技においては行わないことになっているのである。もっとも、ほとんどの登録教習機関において、受講生にガス溶断を行わせているのが現状ではある。

ちなみに、ガス溶接作業主任者免許の試験は、学科のみで、実技試験は行われない。

【労働安全衛生法】

(就業制限)

第61条 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。

2~4 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(就業制限に係る業務)

第20条 法第61条第1項の政令で定める業務は、次のとおりとする。

一~九 (略)

 可燃性ガス及び酸素を用いて行なう金属の溶接、溶断又は加熱の業務

十一~十六 (略)

【労働安全衛生規則】

(就業制限についての資格)

第41条 法第61条第1項に規定する業務につくことができる者は、別表第三の上欄に掲げる業務の区分に応じて、それぞれ、同表の下欄に掲げる者とする。

別表第三 (四十一条関係)

業務の区分 業務につくことができる者
令第20条第十号の業務

一 ガス溶接作業主任者免許を受けた者

二 ガス溶接技能講習を修了した者

三 その他厚生労働大臣が定める者

(略) (略)

(4)義務付けられていない。射出成形機を用いて行う樹脂の成形加工の業務は、安衛則第 36 条にはない。

なお、この業務については、とくに資格や教育は必要としない。

(5)義務付けられていない。型枠支保工の組立て又は解体の作業に係る業務は、安衛則第 36 条にはない。

なお、作業主任者の選任の必要な業務について定める安衛令第6条(第十四号)には、「型枠支保工(支柱、はり、つなぎ、筋かい等の部材により構成され、建設物におけるスラブ、桁等のコンクリートの打設に用いる型枠を支持する仮設の設備をいう。以下同じ。)の組立て又は解体の作業」が定められており、作業主任者の選任が必要となる。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(作業主任者を選任すべき作業)

第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

一~十三 (略)

十四 型枠支保工(支柱、はり、つなぎ、筋かい等の部材により構成され、建設物におけるスラブ、桁等のコンクリートの打設に用いる型枠を支持する仮設の設備をいう。以下同じ。)の組立て又は解体の作業

十五 (略)