問13 安全衛生改善計画に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)都道府県労働局長は、事業場の施設その他の事項について、労働災害の防止を図るため総合的な改善措置を講ずる必要があると認めるときは、労働安全衛生法令違反が認められた場合に限り、事業者に対し、当該事業場の安全衛生改善計画を作成すべきことを指示することができる。
(2)事業者は、安全衛生改善計画を作成しようとする場合には、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。
(3)事業者は、安全衛生改善計画を作成したときは、所轄都道府県労働局長にそれを提出し、適切なものである旨の認定を受けなければならない。
(4)都道府県労働局長は、事業者に対し、安全衛生改善計画を作成すべきことを指示した場合において、専門的な助言を必要とすると認めるときは、当該事業者に対し、労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントによる安全又は衛生に係る診断を受け、かつ、安全衛生改善計画の作成について、これらの者の意見を聴くべきことを勧奨することができる。
(5)安全衛生改善計画を作成した事業者は、当該計画の終了後3か月以内に、その実施結果について所轄都道府県労働局長に報告しなければならない。
このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2016年度(平成28年度) | 問13 | 難易度 | 安全衛生改善計画に関するごく初歩的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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安全衛生改善計画 | 1 |
問13 安全衛生改善計画に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)都道府県労働局長は、事業場の施設その他の事項について、労働災害の防止を図るため総合的な改善措置を講ずる必要があると認めるときは、労働安全衛生法令違反が認められた場合に限り、事業者に対し、当該事業場の安全衛生改善計画を作成すべきことを指示することができる。
(2)事業者は、安全衛生改善計画を作成しようとする場合には、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。
(3)事業者は、安全衛生改善計画を作成したときは、所轄都道府県労働局長にそれを提出し、適切なものである旨の認定を受けなければならない。
(4)都道府県労働局長は、事業者に対し、安全衛生改善計画を作成すべきことを指示した場合において、専門的な助言を必要とすると認めるときは、当該事業者に対し、労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントによる安全又は衛生に係る診断を受け、かつ、安全衛生改善計画の作成について、これらの者の意見を聴くべきことを勧奨することができる。
(5)安全衛生改善計画を作成した事業者は、当該計画の終了後3か月以内に、その実施結果について所轄都道府県労働局長に報告しなければならない。
正答(4)
【解説】
なお、厚生労働大臣が作成を指示する特別安全衛生改善計画と都道府県労働局長が作成を指示する安全衛生改善計画についての違いについて、表にまとめておいたので覚えておくこと。
(1)誤り。安衛法第79条第1項は「都道府県労働局長は、事業場の施設その他の事項について、労働災害の防止を図るため総合的な改善措置を講ずる必要があると認めるとき(前条第1項の規定により厚生労働大臣が同項の厚生労働省令で定める場合に該当すると認めるときを除く。)は、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、当該事業場の安全又は衛生に関する改善計画(以下「安全衛生改善計画」という。)を作成すべきことを指示することができる」と定める。労働安全衛生法令違反が認められた場合に限ってはいない。
本肢は「労働安全衛生法令違反が認められた場合に限り」としているところが誤りである。
現実には、労働安全衛生法令違反が認められる事業場に対して安全衛生改善計画の策定を命じることがほとんどではあろうが、たんに違反状態を解消するだけが目的なのであれば、是正勧告書を交付すれば済むことである。安全衛生改善計画の目的はたんに違反の解消だけが目的ではなく、安全衛生のレベルを引き上げることになるのである。そのことに気付けば誤りだと分かるのではなかろうか。
【労働安全衛生法】
(安全衛生改善計画)
第79条 都道府県労働局長は、事業場の施設その他の事項について、労働災害の防止を図るため総合的な改善措置を講ずる必要があると認めるとき(前条第1項の規定により厚生労働大臣が同項の厚生労働省令で定める場合に該当すると認めるときを除く。)は、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、当該事業場の安全又は衛生に関する改善計画(以下「安全衛生改善計画」という。)を作成すべきことを指示することができる。
2 (略)
(2)誤り。安衛法第 78 条第2項は、「事業者は、特別安全衛生改善計画を作成しようとする場合には、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」とし、これを同第 79 条第2項で安全衛生改善計画に準用する。ここで定められているのは「意見を聴く」ことであって「同意を得る」ことではない。
本肢は「同意を得る」としているところが誤りである。
実質的に考えても、「同意を得る」必要があるとしてしまうと、労組が反対すると計画の策定ができないので、事業者は労働局長の指示に従おうとすれば、労組の言いなりになるしかなくなる。しかし、それは不合理であろう。また、反面では、同意を得る必要があるとすれば、その計画に不備があれば労組にも責任が及ぶことになる。しかし、そもそも安全衛生計画は事業者の責任において策定するべきものである。労組の同意を得るとするような制度とすることには法的な合理性はないというべきである。
【労働安全衛生法】
(特別安全衛生改善計画)
第78条 (第1項 略)
2 事業者は、特別安全衛生改善計画を作成しようとする場合には、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
3~6 (略)
(3)誤り。このような規定はない。労働局長が行うのは、あくまでも計画の策定の指示までである。その内容は事業者の自主性(及び労使自治)にまかされているのである。
実質的に考えても、労働局長の認定を受けるような制度にしてしまうと、認定のための基準が必要となる。しかしながら、それは自主的な労働災害防止活動の促進という趣旨に反するであろう。法違反の是正であれば労働局長の認定を受けるという制度も可能であろうが、(1)でも言ったようにそうではないのである。
(4)正しい。安衛法第80条第1項の条文のままである。
【労働安全衛生法】
(安全衛生診断)
第80条 厚生労働大臣は、第78条第1項又は第四項の規定による指示をした場合において、専門的な助言を必要とすると認めるときは、当該事業者に対し、労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントによる安全又は衛生に係る診断を受け、かつ、特別安全衛生改善計画の作成又は変更について、これらの者の意見を聴くべきことを勧奨することができる。
2 (略)
(5)誤り。このような規定はない。現実にも、労働局長は、終了後の報告を受けるまでもなく、計画の実施期間中にその職員をして、指導・援助を行うことが普通である(安衛法第 93 条参照)。
特別安全衛生改善計画 | 安全衛生改善計画 | |
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指示する者 | 厚生労働大臣 | 都道府県労働局長 |
指示するとき | 重大な労働災害が発生した場合において、重大な労働災害の再発を防止するため必要がある場合として厚生労働省令で定める場合に該当すると認めるとき |
事業場の施設その他の事項について、労働災害の防止を図るため総合的な改善措置を講ずる必要があると認めるとき ※ 重大な災害の発生は要件となっていない |
変更命令 | 特別安全衛生改善計画が重大な労働災害の再発の防止を図る上で適切でないと認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、当該特別安全衛生改善計画を変更すべきことを指示することができる | 規定なし |
措置命令 | 事業者がその指示に従わなかつた場合又は特別安全衛生改善計画を作成した事業者が当該特別安全衛生改善計画を守っていないと認める場合において、重大な労働災害が再発するおそれがあると認めるときは、当該事業者に対し、重大な労働災害の再発の防止に関し必要な措置をとるべきことを勧告することができる |
規定なし ※ 災害が発生するおそれがあるときは、安衛法第 98 条、同第 99 条等の権限を行使することはあり得る。 |
公表 | 前項の規定による勧告を受けた事業者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる | 規定なし |