問9 特定機械等であるボイラーに関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)ボイラーの吹出しについては、2基のボイラーまでなら同時に1人で行ってよい。
(2)普通ボイラー溶接士免許の有効期間は2年であるが、特別ボイラー溶接士免許の有効期間は1年である。
(3)ボイラーの取扱い作業については、取り扱うボイラーの伝熱面積に対応した有資格者をボイラー取扱作業主任者として選任し、ボイラー取扱作業主任者選任報告書を所轄労働基準監督署長へ提出しなければならない。
(4)ボイラー(移動式ボイラーを除く。)を設置した者は、所轄労働基準監督署長による落成検査を受けなければならないが、一定の安全衛生水準を満たしていることについて所轄都道府県労働局長の認定を受けた事業者については、免除される。
(5)ボイラーについて、その据付基礎を変更しようとするときは、原則として、ボイラー変更届にボイラー検査証及びその変更の内容を示す書面を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2016年度(平成28年度) | 問09 | 難易度 | 特定機械に関するやや詳細な知識問題である。頻出事項であり、合格のためには確実に正答したい。 |
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特定機械等(ボイラー) | 4 |
問9 特定機械等であるボイラーに関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)ボイラーの吹出しについては、2基のボイラーまでなら同時に1人で行ってよい。
(2)普通ボイラー溶接士免許の有効期間は2年であるが、特別ボイラー溶接士免許の有効期間は1年である。
(3)ボイラーの取扱い作業については、取り扱うボイラーの伝熱面積に対応した有資格者をボイラー取扱作業主任者として選任し、ボイラー取扱作業主任者選任報告書を所轄労働基準監督署長へ提出しなければならない。
(4)ボイラー(移動式ボイラーを除く。)を設置した者は、所轄労働基準監督署長による落成検査を受けなければならないが、一定の安全衛生水準を満たしていることについて所轄都道府県労働局長の認定を受けた事業者については、免除される。
(5)ボイラーについて、その据付基礎を変更しようとするときは、原則として、ボイラー変更届にボイラー検査証及びその変更の内容を示す書面を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
正答(5)
【解説】
(1)誤り。ボイラー則第 31 条第1項は「事業者は、ボイラーの吹出しを行なうときは、次に定めるところによらなければならない」とし、実施しなければならない事項として第一号で「1人で同時に2以上のボイラーの吹出しを行なわないこと」とする。
なお、吹出とはボイラ内のスラッジ(濃縮された蒸発残留物)をボイラ外に排出することである。
【ボイラー及び圧力容器安全規則】
(吹出し)
第31条 事業者は、ボイラーの吹出しを行なうときは、次に定めるところによらなければならない。
一 1人で同時に2以上のボイラーの吹出しを行なわないこと。
二 (略)
2 (略)
(2)誤り。安衛法関連の免許や技能講習などの資格には、有効期間のあるものはほとんどないが、ボイラー溶接士免許だけは例外的に有効期間がある。
ボイラー則第 107 条に「特別ボイラー溶接士免許及び普通ボイラー溶接士免許の有効期間は、2年とする」とされている。従って、特別ボイラー溶接士免許の有効期間は1年とする規定は誤りである。
安衛法関連の資格には有効期間はないと思い込んでいて正答した受験生もいたようである。運がよかったというべきか。
【ボイラー及び圧力容器安全規則】
(免許の有効期間)
107条 特別ボイラー溶接士免許及び普通ボイラー溶接士免許の有効期間は、2年とする。
2 (以下略)
(3)誤り。作業主任者の選任義務は安衛法第 14 条に「高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない」と規定されている。監督署長への選任の報告について規定されてはいない。
また、安衛法第 100 条に基づく省令についても、作業主任者の選任の報告は定められていない。従って誤りとなる。
そもそも安衛法第 14 条を見れば分かるように、作業主任者は、作業の都度、選任しなければならないものなのである。そんなものをいちいち監督署長に報告させるはずがない。
【労働安全衛生法】
(作業主任者)
第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
(4)誤り。落成検査の根拠は、安衛法第 38 条第3項にあり、「特定機械等(移動式のものを除く。)を設置した者、特定機械等の厚生労働省令で定める部分に変更を加えた者又は特定機械等で使用を休止したものを再び使用しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で定める事項について、労働基準監督署長の検査を受けなければならない」と定めてある。
そして、本条の「厚生労働省令で定めるところ」とは、ボイラーについてはボイラー則第 14 条のことである。ボイラー則第 14 条は、「ただし、所轄労働基準監督署長が当該検査の必要がないと認めたボイラーについては、この限りでない」と定める。
落成検査の実施主体も、それが必要ないことを認定する権限を有している者も、都道府県労働局長ではなく労働監督署長なので本肢は誤りとなる。
【労働安全衛生法】
(製造時等検査等)
第38条 (第1項及び第2項 略)
3 特定機械等(移動式のものを除く。)を設置した者、特定機械等の厚生労働省令で定める部分に変更を加えた者又は特定機械等で使用を休止したものを再び使用しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で定める事項について、労働基準監督署長の検査を受けなければならない。
【ボイラー及び圧力容器安全規則】
(落成検査)
14条 ボイラー(移動式ボイラーを除く。)を設置した者は、法第38条第3項の規定により、当該ボイラー及び当該ボイラーに係る次の事項について、所轄労働基準監督署長の検査を受けなければならない。ただし、所轄労働基準監督署長が当該検査の必要がないと認めたボイラーについては、この限りでない。
一~三 (略)
2及び3 (略)
(5)正しい。ボイラー則第 41 条は「事業者は、ボイラーについて、次の各号のいずれかに掲げる部分又は設備を変更しようとするときは、法第 88 条第1項の規定により、ボイラー変更届(様式第 20 号)にボイラー検査証及びその変更の内容を示す書面を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない」とする。そして、同条第4号に「据付基礎」を定める。
【労働安全衛生法】
(計画の届出等)
第88条 事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、第28条の2第1項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。
2~7 (略)
【ボイラー及び圧力容器安全規則】
(変更届)
41条 事業者は、ボイラーについて、次の各号のいずれかに掲げる部分又は設備を変更しようとするときは、法第88条第1項の規定により、ボイラー変更届(様式第二十号)にボイラー検査証及びその変更の内容を示す書面を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
一~三 (略)
四 据付基礎