問6 事業者が建築物等の組立て等の作業を行うときにあらかじめ定めるべき作業計画に関する次のイ~ニの記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているもののみの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
イ 金属製の部材により構成される支間が30 メートル以上の橋梁の上部構造の架設の作業を行うときの作業計画には、部材(部材により構成されているものを含む。)の落下又は倒壊を防止するための方法が示されていなければならない。
ロ 金属製の部材により構成される高さが5メートル以上の建築物の骨組みの組立ての作業を行うときの作業計画には、使用するクレーン等の種類、型式及び能力が示されていなければならない。
ハ 高さが5メートル以上のコンクリート造の工作物の解体の作業を行うときの作業計画には、控えの設置、立入禁止区域の設定その他の外壁、柱、はり等の倒壊又は落下による労働者の危険を防止するための方法が示されていなければならない。
ニ 軒の高さが5メートル以上の木造建築物の構造部材の組立ての作業を行うときの作業計画には、作業に従事する労働者の墜落による危険を防止するための設備の設置の方法が示されていなければならない。
(1)イ ロ
(2)イ ハ
(3)ロ ハ
(4)ロ ニ
(5)ハ ニ
このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2016年度(平成28年度) | 問06 | 難易度 | 建築物等の組立て等の作業の作業計画に関する詳細な知識問題。かなりの難問だろう。 |
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建築物組立等の作業計画 | 5 |
問6 事業者が建築物等の組立て等の作業を行うときにあらかじめ定めるべき作業計画に関する次のイ~ニの記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているもののみの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
イ 金属製の部材により構成される支間が30 メートル以上の橋梁の上部構造の架設の作業を行うときの作業計画には、部材(部材により構成されているものを含む。)の落下又は倒壊を防止するための方法が示されていなければならない。
ロ 金属製の部材により構成される高さが5メートル以上の建築物の骨組みの組立ての作業を行うときの作業計画には、使用するクレーン等の種類、型式及び能力が示されていなければならない。
ハ 高さが5メートル以上のコンクリート造の工作物の解体の作業を行うときの作業計画には、控えの設置、立入禁止区域の設定その他の外壁、柱、はり等の倒壊又は落下による労働者の危険を防止するための方法が示されていなければならない。
ニ 軒の高さが5メートル以上の木造建築物の構造部材の組立ての作業を行うときの作業計画には、作業に従事する労働者の墜落による危険を防止するための設備の設置の方法が示されていなければならない。
(1)イ ロ
(2)イ ハ
(3)ロ ハ
(4)ロ ニ
(5)ハ ニ
正答(4)
【解説】
以下により、正答は(4)となる。
イ 正しい。安衛則517条の6第1項は「事業者は、令第6条第15号の3の作業を行うときは、あらかじめ、作業計画を定め・・・なければならない」としている。そして、第2項には、「前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない」として「部材(部材により構成されているものを含む。)の落下又は倒壊を防止するための方法」を挙げる。
ここに、安衛令第6条第15号の3の作業とは、「橋梁の上部構造であって、金属製の部材により構成されるもの(その高さが5メートル以上であるもの又は当該上部構造のうち橋梁の支間が30メートル以上である部分に限る。)の架設、解体又は変更の作業」である。
【労働安全衛生法施行令】
(作業主任者を選任すべき作業)
第6条 (略)
一~十五の二 (略)
十五の三 橋梁の上部構造であつて、金属製の部材により構成されるもの(その高さが五メートル以上であるもの又は当該上部構造のうち橋梁の支間が三十メートル以上である部分に限る。)の架設、解体又は変更の作業
十五の四~二十三 (略)
【労働安全衛生規則】
(作業計画)
第517条の6 事業者は、令第六条第十五号の三の作業を行うときは、あらかじめ、作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
一 (略)
二 部材(部材により構成されているものを含む。)の落下又は倒壊を防止するための方法
三及び四 (略)
3 (略)
ロ 誤り。安衛則517条の2第1項は「事業者は、令第6条第15号の2の作業を行うときは、あらかじめ、作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない」としている。そして、第2項には「前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない」とし、1号から3号までを規定するが、この中には「使用するクレーン等の種類、型式及び能力」は挙げられていない。
ここに、安衛令第6条第15号の2の作業とは、「建築物の骨組み又は塔であって、金属製の部材により構成されるもの(その高さが五メートル以上であるものに限る。)の組立て、解体又は変更の作業」である。
そもそも型式まで計画に示せというのは現実的ではない。計画を策定する段階では、クレーンのリース契約など締結していないだろうし、型式まではわからないだろう。
【労働安全衛生法施行令】
(作業主任者を選任すべき作業)
第6条 (略)
一~十五 (略)
十五の二 建築物の骨組み又は塔であつて、金属製の部材により構成されるもの(その高さが五メートル以上であるものに限る。)の組立て、解体又は変更の作業
十五の三~二十三 (略)
【労働安全衛生規則】
(作業計画)
第517条の2 事業者は、令第六条第十五号の二の作業を行うときは、あらかじめ、作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
一 作業の方法及び順序
二 部材の落下又は部材により構成されているものの倒壊を防止するための方法
三 作業に従事する労働者の墜落による危険を防止するための設備の設置の方法
3 (略)
ハ 正しい。安衛則第517条の14第1項は「事業者は、令第6条第15号の5の作業を行うときは、・・・(略)・・・作業計画を定め・・・(略)・・・なければならない」としている。そして、同第2項には「前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない」として「控えの設置、立入禁止区域の設定その他の外壁、柱、はり等の倒壊又は落下による労働者の危険を防止するための方法」を挙げる。
ここに、安衛令第6条第15号の5の作業とは、「コンクリート造の工作物(その高さが五メートル以上であるものに限る。)の解体又は破壊の作業」である。
【労働安全衛生法施行令】
(作業主任者を選任すべき作業)
第6条 (略)
一~十五の四 (略)
十五の五 コンクリート造の工作物(その高さが五メートル以上であるものに限る。)の解体又は破壊の作業
十六~二十三 (略)
【労働安全衛生規則】
(調査及び作業計画)
第517条の14 事業者は、令第六条第十五号の五の作業を行うときは、工作物の倒壊、物体の飛来又は落下等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該工作物の形状、き裂の有無、周囲の状況等を調査し、当該調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
一及び二 (略)
三 控えの設置、立入禁止区域の設定その他の外壁、柱、はり等の倒壊又は落下による労働者の危険を防止するための方法
3 (略)
ニ 誤り。軒の高さが5メートル以上の木造建築物の構造部材の組立ての作業を行うときには作業計画を立てることは義務付けられていない。
【受験テクニック:コンサルタント試験と組合せ問題】
多くの国家試験で、受験者にとってありがたいのは組合せ問題で、嫌われるのは個数問題だろう。組合せ問題とは、この問6のように、複数の文章を示して、その中から正しいもののみや誤っているもののみの組合せを選ばせるものである。一方、個数問題とは複数の文章を示して、誤っているものか正しいものの個数を選ばせるものである。
コンサルタント試験では組合せ問題は多用されるが、個数問題はほとんど出題されない。この傾向は、労働安全衛生関係の試験では、ほぼ共通しているようだ。
ところで、多くの国家試験では、組合せ問題を採用するのは、問題の内容が難しい場合や選択肢の数が多い場合がほとんどである。しかし、コンサルタント試験の組合せ問題は示された文章が4つしかない場合が多い。選択肢を5つ作るのが面倒なので組合せ問題にしているのではないかと疑いたくなるようなものもある。当然、難易度は低くなる。
なお、他の試験では、本肢のように「誤っているもののみの組合せ」を問われる場合は、正答の選択肢に誤っているものがすべて入っているとは限らないが、コンサルタント試験ではそのようなことはないようだ。これは、受験テクニックとして覚えておくとよい。