問5 車両系建設機械による労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)車両系建設機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し、当該調査により知り得たところに適応する作業計画を定めなければならない。
(2)車両系建設機械のブームを上げ、その下で修理、点検等の作業を行うときは、ブームが降下することによる労働者の危険を防止するため、一定の合図を定め、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせなければならない。
(3)路肩、傾斜地等であって、車両系建設機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたもの以外の車両系建設機械を使用しないように努めなければならない。
(4)車両系建設機械を用いて作業を行うときは、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させる場合を除き、車両系建設機械に接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。
(5)最高速度が毎時 10 キロメートルを超える車両系建設機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の地形、地質の状態等に応じた車両系建設機械の適正な制限速度を定め、それにより作業を行わなければならない。
このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2016年度(平成28年度) | 問05 | 難易度 | 車両系建設機械の労働災害防止に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。 |
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車両系建設機械 | 3 |
問5 車両系建設機械による労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)車両系建設機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し、当該調査により知り得たところに適応する作業計画を定めなければならない。
(2)車両系建設機械のブームを上げ、その下で修理、点検等の作業を行うときは、ブームが降下することによる労働者の危険を防止するため、一定の合図を定め、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせなければならない。
(3)路肩、傾斜地等であって、車両系建設機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたもの以外の車両系建設機械を使用しないように努めなければならない。
(4)車両系建設機械を用いて作業を行うときは、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させる場合を除き、車両系建設機械に接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。
(5)最高速度が毎時 10 キロメートルを超える車両系建設機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の地形、地質の状態等に応じた車両系建設機械の適正な制限速度を定め、それにより作業を行わなければならない。
正答(2)
【解説】
本問は、いわゆる条文問題である。対策としては、基本的に、重要事項を覚えておくより他はない。しかし、(2)は危険な場所での作業について、合図で対応しようとしている。明らかにおかしいと分からなければならない。
(1)正しい。安衛則第 154 条は「事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、当該車両系建設機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し」なければならないとする。そして。同第 155 条は「事業者は、(略)前条(第 154 条=引用者)の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め」なければならないとする。
【労働安全衛生規則】
(調査及び記録)
第154条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、当該車両系建設機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し、その結果を記録しておかなければならない。
(作業計画)
第155条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行なわなければならない。
2及び3 (略)
(2)誤り。安衛則第 166 条には「事業者は、車両系建設機械のブーム、アーム等を上げ、その下で修理、点検等の作業を行うときは、ブーム、アーム等が不意に降下することによる労働者の危険を防止するため、当該作業に従事する労働者に安全支柱、安全ブロック等を使用させなければならない」とはあるが、本肢のような規定はない。
なお、本条について知らなくても、そもそもブームが不意に下降することによる事故を防止するために、合図を定めてみてもさしたる意味はないということに気付けば、誤りだと分かる。油送パイプが破損するなど何らかの原因で油圧が抜けたり、ジブの起こし用のワイヤーが切断したりすれば、一瞬でブームは下がってしまう。これによる事故を防止するには、作業者をジブの下に立ち入らせないようにするか、本条が規定するように物理的にブームが下がらないようにするしかない。このような意味のない規定をおくはずがないのである。
【労働安全衛生規則】
(ブーム等の降下による危険の防止)
第166条 事業者は、車両系建設機械のブーム、アーム等を上げ、その下で修理、点検等の作業を行うときは、ブーム、アーム等が不意に降下することによる労働者の危険を防止するため、当該作業に従事する労働者に安全支柱、安全ブロツク等を使用させなければならない。
2 (略)
(3)正しい。安衛則第 157 条の2に「事業者は、路肩、傾斜地等であって、車両系建設機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたもの以外の車両系建設機械を使用しないように努めるとともに、運転者にシートベルトを使用させるように努めなければならない」とある。条文のままである。
なお、よほど古いものでもない限り、シートベルトの備えられていない車両系建設機械など存在していない。シートベルトは安全のために必要なものであり、「努めなければならない」などというものではない。実務においては、シートベルトは必ず着用させなければならない。
【労働安全衛生規則】
第157条の2 事業者は、路肩、傾斜地等であつて、車両系建設機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたもの以外の車両系建設機械を使用しないように努めるとともに、運転者にシートベルトを使用させるように努めなければならない。
(4)正しい。安衛則第 158 条第1項は「事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない」とする。
【労働安全衛生規則】
(接触の防止)
第158条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない。
2 (略)
※ 安衛則第 158 条は、2025 年4月1日以降、次のように改正される。
(接触の防止)
第158条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所に当該作業場において作業に従事する者が立ち入ることについて、禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により禁止しなければならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない。
2 (略)
(5)正しい。安衛則第 156 条第1項は「事業者は、車両系建設機械(最高速度が毎時10キロメートル以下のものを除く。)を用いて作業を行なうときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の地形、地質の状態等に応じた車両系建設機械の適正な制限速度を定め、それにより作業を行なわなければならない」とする。
【労働安全衛生規則】
(制限速度)
第156条 事業者は、車両系建設機械(最高速度が毎時10キロメートル以下のものを除く。)を用いて作業を行なうときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の地形、地質の状態等に応じた車両系建設機械の適正な制限速度を定め、それにより作業を行なわなければならない。
2 (略)