労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全関係法令 問01

事業場の安全管理体制




問題文
トップ
合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2016年度(平成28年度) 問01 難易度 安全衛生管理体制は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。
労働安全衛生管理体制

問1 安全管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)常時100人以上の労働者を使用する運送業の事業場においては、総括安全衛生管理者を選任しなければならない。

(2)常時300 人以上の労働者を使用する石油製品製造業の事業場においては、安全管理者のうち少なくとも1人を専任の安全管理者としなければならない。

(3)安全管理者は、事業場に専属の者を選任しなければならないが、2人以上の安全管理者を選任する場合において、安全管理者の中に労働安全コンサルタントがいるときは、当該者のうち1人については専属の者でなくともよい。

(4)常時10 人以上50 人未満の労働者を使用する各種商品小売業の事業場においては、安全衛生推進者を選任しなければならない。

(5)労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全衛生推進者の増員又は解任を命ずることができる。

正答(5)

【解説】

この問題は、それほど難しくはない。管理体制については毎年必ず出題されるので、確実に答えられるようにしておきたい。

(1)正しい。安衛法第10条は、「事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し・・・(略)・・・、次の業務を統括管理させなければならない」とする。そして、安衛令第2条は「労働安全衛生法(以下「法」という。)第10条第1項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする」として、運送業については100人と定める。

従って運送業の業種にあっては100人以上の労働者を使用する事業場で総括安全衛生管理者を選任しなければならない。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

 (以下略)

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人

 その他の業種 千人

(2)正しい。安衛法第11条は「事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し・・・(略)・・・なければならない」と定める。

そして、安衛則第4条第1項は「法第11条第1項の規定による安全管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない」とし、その第4号で「次の表の中欄に掲げる業種に応じて、常時同表の下欄に掲げる数以上の労働者を使用する事業場にあっては、その事業場全体について法第10条第1項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理する安全管理者のうち少なくとも一人を専任の安全管理者とすること」とする。

その表は、石油製品製造業の業種にあっては300人以上の労働者を使用する事業場で、少なくとも1人を専任の安全管理者としなければならないとしている。

【労働安全衛生法】

(安全管理者)

第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(安全管理者の選任)

第4条 法第十一条第一項の規定による安全管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

一~三 (略)

 次の表の中欄に掲げる業種に応じて、常時同表の下欄に掲げる数以上の労働者を使用する事業場にあつては、その事業場全体について法第十条第一項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理する安全管理者のうち少なくとも一人を専任の安全管理者とすること。ただし、同表四の項の業種にあつては、過去三年間の労働災害による休業一日以上の死傷者数の合計が百人を超える事業場に限る。

建設業 三百人
有機化学工業製品製造業
石油製品製造業
無機化学工業製品製造業 五百人
化学肥料製造業
道路貨物運送業
港湾運送業
紙・パルプ製造業 千人
鉄鋼業
造船業
令第二条第一号及び第二号に掲げる業種(一の項から三の項までに掲げる業種を除く。) 二千人

 (略)

(3)正しい。安衛則第4条第1項第2号は、安全管理者について「その事業場に専属の者を選任すること。ただし、二人以上の安全管理者を選任する場合において、当該安全管理者の中に次条第2号に掲げる者がいるときは、当該者のうち一人については、この限りでない」とする。そして、この次条(第5条)第2号には「労働安全コンサルタント」が規定されている。

従って、安全管理者は、原則としてその事業場に専属の者を選任しなければならない。しかし、2人以上の安全管理者を選任する場合において、安全管理者の中に労働安全コンサルタントがいるときは、当該者のうち1人については専属の者でなくともよい。

なお、労働安全衛生法令の管理体制に関する規定において、“専属”とは、その事業場に属していることで、別な事業場の職員や外部の者を選任することは許されないが、他の仕事をしてもかまわない。これが“専任”となると、原則として他の仕事をすることは許されないこととなる。もっぱらその仕事をしていなければならないのである。この違いを明確にしておく必要がある。

【労働安全衛生規則】

(安全管理者の選任)

第4条 法第十一条第一項の規定による安全管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

 (略)

 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、二人以上の安全管理者を選任する場合において、当該安全管理者の中に次条第二号に掲げる者がいるときは、当該者のうち一人については、この限りでない

 (略)

 (略)

(安全管理者の資格)

第5条 法第十一条第一項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。

 (略)

 労働安全コンサルタント

 (略)

(4)正しい。安全衛生推進者の選任を義務付ける安衛法第12条の2の規定には、「第11条第1項の事業場及び前条(第12条=引用者)第1項の事業場以外の事業場」について選任しなければならないとされている。ただし、同条のカッコ書きにより、第11条第1項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあっては、安全衛生推進者ではなく衛生推進者を選任することとされている。

この条文は法律の文章に慣れておらず、論理学の素養がある技術者には分かりにくいかもしれない。最初の「第11条第1項の事業場及び前条第1項の事業場以外の事業場で」の部分は安全管理者又は衛生管理者を選任しなければならない事業場以外の事業場という意味である。そして、「厚生労働省令で定める規模」とは、安衛則第12条の2に「法第12条の2の厚生労働省令で定める規模の事業場は、常時10以上50人未満の労働者を使用する事業場とする」とある。

すなわち、本条の対象となる事業場は、安全管理者又は衛生管理者を選任しなければならない事業場以外の事業場であって、常時10以上50人未満の労働者を使用する事業場ということになる。ただ、安全管理者又は衛生管理者を選任しなければならない事業場は少なくとも常時10以上50人未満の労働者を使用する事業場ではない。従って、義務がかかっているのは常時10以上50人未満の労働者を使用するすべての事業場の事業者ということになる

次に安衛法第12条の2の最初のカッコ書きの意味であるが、カッコの中の第11条第1項の政令で定める業種とは、(規模により)安全管理者を選任しなければならない業種である。分かりやすく言えば、(常時雇用する労働者数が50人以上になると)安全管理者の選任が必要な業種は“安全”がついて安全衛生推進者、必要のない業種では“安全”がとれて衛生推進者になるということである

そして、安衛令第3条に定めがあるが、各種商品小売業の事業は、常時雇用する労働者数が300人以上になると安全管理者を選任しなければならない業種である。

従って、常時10以上50人未満の労働者を使用する各種商品小売業の事業の事業場には、カッコ内の適用はなく、衛生推進者ではなく安全衛生推進者を選任しなければならない。

【労働安全衛生法】

(安全管理者)

第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

(安全衛生推進者等)

第12条の2 事業者は、第十一条第一項の事業場及び前条第一項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除くものとし、第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 (略)

 (略)

 (前略)各種商品小売業(後略)

 (略)

(安全管理者を選任すべき事業場)

第3条 法第十一条第一項の政令で定める業種及び規模の事業場は、前条第一号又は第二号に掲げる業種の事業場で、常時五十人以上の労働者を使用するものとする。

【労働安全衛生規則】

(安全衛生推進者等を選任すべき事業場)

第12条の2 法第十二条の二の厚生労働省令で定める規模の事業場は、常時十人以上五十人未満の労働者を使用する事業場とする。

(5)誤り。これは、安全管理者、衛生管理者などに関する規定である。安全衛生推進者にこのような規定はない。10人以上50人未満の事業場で、安全衛生を担当する者の増員や解任を命じることはあまり現実的ではないだろう。

【労働安全衛生法】

(安全管理者)

第11条 (略)

 労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理者の増員又は解任を命ずることができる。

(衛生管理者)

第12条 (略)

 前条第二項の規定は、衛生管理者について準用する。

(元方安全衛生管理者)

第15条の2 (略)

 第十一条第二項の規定は、元方安全衛生管理者について準用する。この場合において、同項中「事業者」とあるのは、「当該元方安全衛生管理者を選任した事業者」と読み替えるものとする。

2017年12月24日執筆 2020年04月23日修正