問26 厚生労働省の労働災害統計(平成27年)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)全産業の休業4日以上の死傷災害を業種別にみると、製造業が最も多く、建設業、陸上貨物運送事業の順となっている。
(2)建設業の休業4日以上の死傷災害を事故の型別にみると、転倒が最も多く、次に墜落・転落の順となっている。
(3)製造業の休業4日以上の死傷災害を事故の型別にみると、はさまれ・巻き込まれが最も多く、次に転倒の順となっている。
(4)建設業の休業4日以上の死傷災害を起因物別にみると、仮設物・建築物・構築物等が最も多く、次に用具の順となっている。
(5)製造業の休業4日以上の死傷災害を起因物別にみると、仮設物・建築物・構築物等が最も多く、次に一般動力機械の順となっている。
このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2016年度(平成28年度) | 問26 | 難易度 | 労働災害統計に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない問題である。 |
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労働災害統計 | 3 |
問26 厚生労働省の労働災害統計(平成27年)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)全産業の休業4日以上の死傷災害を業種別にみると、製造業が最も多く、建設業、陸上貨物運送事業の順となっている。
(2)建設業の休業4日以上の死傷災害を事故の型別にみると、転倒が最も多く、次に墜落・転落の順となっている。
(3)製造業の休業4日以上の死傷災害を事故の型別にみると、はさまれ・巻き込まれが最も多く、次に転倒の順となっている。
(4)建設業の休業4日以上の死傷災害を起因物別にみると、仮設物・建築物・構築物等が最も多く、次に用具の順となっている。
(5)製造業の休業4日以上の死傷災害を起因物別にみると、仮設物・建築物・構築物等が最も多く、次に一般動力機械の順となっている。
正答(1)及び(2)
【解説】
労働災害統計は、当サイトの「グラフで見る労働災害発生件数の推移」の他、具体的な数値は職場の安全サイトの「労働災害統計のページ」を参照されたい。
なお、本問は、元の正答は(2)だったのだが、試験後に(1)も正答であるとされた。実を言えば、業種、起因物、型などは、労働基準行政における独自の分類なのである。どうまとめるかによって数値は異なるのであるから「何が最も多く」などと言ってもあまり意味はないように思えるのだが、なぜ(1)だけを正答と訂正したのかはよくわからない。
(1)誤り。平成27年の休業4日以上の死傷災害は、製造業26,391人、建設業15,584人、陸上貨物運送事業13,885人となっている。そのため、試験協会は当初、この肢は正しいと考えていたようだ。
しかし、試験終了後に誤りであるとした。おそらく、「製造業が最も多く」としているところは、なにをもって「業種」というかによって誤りになるということではないかと思う。すなわち(やや無理はあるが)「第三次産業」で1つの業種だと見れば52,308人となって、製造業よりも多くなってしまうからである。
※ 職場のあんぜんサイトの厚生労働省の休業4日以上の労働災害統計は、2010年(平成22年)以降、それまでの「『労働者死傷病報告』による死傷災害発生状況(〇〇年確定値)」の他に「労働災害確定値」という項目が設けられた。これは、厚生労働省の安全課が独自に分類しているもので、従来の統計とは業種分類が異なり、各労働災害防止団体に属している業種ごとに災害を分類したものである。なお、陸上貨物運送事業は、この安全課の統計に表れる「業種」である。
また、2012年以降、この安全課の統計に「第三次産業」という業種が表れる。この「第三次産業」は、安全課の統計独自の概念で、通常の第三次産業とは異なっている。まず、運送業(交通運輸事業、陸上貨物運送事業及び港湾運送業)が含まれていない。その一方で「清掃・と畜」が含まれている。と畜は第一次産業であるし、食肉加工としては第二次産業である。
(2)誤り。平成27年の休業4日以上の死傷災害の、建設業における型別の件数は、墜落・転落5,377人、転倒1,546人となっている。
建設業の労働災害で最も多いのは、休業4日以上災害、死亡災害ともに墜落・転落であり、その傾向は2020年まで続いている。
(3)正しい。平成27年の休業4日以上の死傷災害の製造業における型別の件数は、はさまれ・巻き込まれが7,214人、転倒が4,681人となっている。従って正しいということのようだ。
※ 問題文には、「事故の型」という用語に注釈がないが、コンサルタント試験の災害統計では厚労省が公表している事故の型の分類で判断する。
なお、製造業においても、はさまれ・巻き込まれ災害は減少傾向にあり、転倒災害は増加傾向にあるが、2020年(令和2年)においては、はさまれ・巻き込まれが6,209人、転倒が5,094人で逆転はしていない。
(4)正しい。平成27年の休業4日以上の死傷災害の建設業における起因物別の件数は、仮設物・建築物・構築物等が4,537人、用具が2,202人となっている。
※ 問題文には、「起因物」という用語に注釈がないが、コンサルタント試験の災害統計では厚労省が公表している起因物の分類で判断する。なお、本問では中分類を用いている。
試験協会は試験終了後に(1)も正しいとしたが、(4)にしたところで、「機械」というくくりであれば、5,172人(原動機5+動力電動機構17+木材加工用機械646+建設機械等1,040+金属加工用機械332+一般動力機械375+車両系木材伐出機械等10+動力クレーン等472+動力運搬機1,239+乗り物512+人力機械工具等524)となって、仮設物・建築物・構築物等の4,537人を優に上回ってしまう。どのようなものであろうか。
(5)正しい。平成27年の休業4日以上の死傷災害の製造業における起因物別の件数は、仮設物・建築物・構築物等が5,078人、一般動力機械3,894人となっている。