労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全一般 問24

火災の発生・拡大防止用の機器・設備




問題文
トップ
合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2016年度(平成28年度) 問24 難易度 火災防止等の機器・設備に関するやや高度な知識問題。合格を確実にするためには正答しておきたい。
火災防止等の機器・設備

問24 火災の発生・拡大防止のための機器・設備に関する次のイ~ニの記述について、適切でないもののみの組合せは(1)~(5)のどれか。

イ 防火設備には、隣接火災からの放射熱による機器の内圧上昇を防ぐ目的がある。

ロ 避雷設備には、雷撃によって生じる火災を防止する目的がある。

ハ 防爆性能を有する電気設備には、外部からの爆発による損傷を防ぐ目的がある。

ニ 消炎素子には、火災で生じた圧力に対して板が破裂して内圧を低下させる目的がある。

(1)イ   ロ

(2)イ   ハ

(3)ロ   ハ

(4)ロ   ニ

(5)ハ   ニ

正答(5)

【解説】

本問は、通常の受験生は、ロが適切で、ハが適切ではないということは分かったであろう。(2)か(5)のいずれかだということになるが、ニについて知っている受験者はあまりいなかったのではないかと思われる。しかしながら、イはかなり疑問もあるものの、そのような目的もないわけではなく不適切ではないと分かれば正答に達することはできたのではなかろうか。

本問は以下により(5)が正答となる。

イ 適切である。建築基準法上の防火設備は「その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの」をいうとされている。すなわち、防火設備とは基本的に遮炎性能を有する設備であって、隣接火災からの放射熱による設備の内圧の上昇を防ぐということは考えられていない。

しかし、平成23年に千葉県市原市で発生した製油所の事故では、LPガスのタンクが隣接する火災による内圧上昇によって爆発している。なお、この事故では緊急遮断弁がロックピンで開状態に固定されているという法令違反があった。

このように考えると、防火設備には、隣接火災からの放射熱による機器の内圧上昇を防ぐ目的がないわけではないだろう。

ロ 適切である。株式会社インターリスク総研他「落雷のメカニズムと被害軽減対策」によると、「避雷設備は雷による建物や構築物の破壊や電気設備の焼損、在館者への傷害あるいは火災防止の面から、雷を避雷針や棟上げ導体などの受雷部で受け止めて、電撃電流を避雷導体を通じて安全に大地に逃がすためのものである」とされている。避雷設備の目的に火災防止があることは常識であろう。

なお、綾瀬市や浦安市など、地方自治体に制定されている火災予防条例においてJIS A 4201:2003 による避雷設備を設けるよう規定するものがある。

ハ 適切ではない。防爆性能を有する電気設備とは、作業空間など設備の外部に存在するガスや蒸気、粉じんなどを爆発させない(着火源にならない)ことを目的としている。

ニ 適切ではない。消炎素子とは、乾式安全器などの逆火防止装置の重要な構成素子であり、逆火・爆轟の火炎を消火阻止する目的を有する。微細な粒度の素子で形成されており、燃料ガスは通過させるが炎(逆火)を通過させないようになっている。破裂して内圧を低下させるものではない。本肢は適切とは言えない。

なお、破裂して内圧を低下させるものとして考えられるものは破裂板である。

2018年10月27日執筆 2020年04月29日修正