労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全一般 問23

本質的安全設計方策




問題文
トップ
合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2016年度(平成28年度) 問23 難易度 本質的安全設計方策に関するやや高度な知識問題。合格を確実にするためには正答しておきたい。
本質的安全設計方策

問23 機械などに講じた次の措置のうち、厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」における本質的安全設計方策に分類されるものはどれか。

(1)機械から加工物が落下する可能性があるので、この加工物を捕捉する措置を講じた。

(2)ガードが完全に閉じていないときは、機械の運動部分を動作させることができない構造の可動式ガードを設けた。

(3)墜落、滑り、つまずきなどを防止するために、床面を滑りにくい材料とし、段差や凹凸をなくすような措置を講じた。

(4)安全上重要な機構や制御システムの部品及び構成品には、信頼性の高いものを使用するとともに、当該機構や制御システムの設計においては、その構成品の冗長化を図った。

(5)機械の制御システムに、装置の故障や異常を自動的に操作者に知らせる警報機能をもたせ、操作者が機械を停止できるようにした。

正答(4)

【解説】

本来、“本質安全化”とは、ハザードそのものをなくしたり、減らしたり、人間から完全に引き離したりするすることをいう。本質安全化によれば、起こり得る最悪の危害の程度を軽減することができる。単に災害に遭う可能性を減らすことは本質安全化とは言わない。

本問で問われているのは、「機械の包括的な安全基準に関する指針」にいうところの本質的安全設計方策である。同指針によれば、本質的安全設計方策は「ガード又は保護装置(機械に取り付けることにより、単独で、又はガードと組み合わせて使用する光線式安全装置、両手操作制御装置等のリスクの低減のための装置をいう。)を使用しないで、機械の設計又は運転特性を変更することによる保護方策をいう」と定義されている。

そして、同指針の別表第2にその例が記されている。

本問で分かりにくいのは(3)であろう。「滑りやすい床」、「段差」、「凹凸」をハザードだと考えると、これらをなくすことは本質安全化だと考えられるからである。しかし、この指針の作成者は「床を歩くこと」それ自体をハザードであると考え、「滑りやすい床」、「段差」、「凹凸」をなくすことは付加保護方策にすぎないと考えたようだ。やや疑問がなくもないが、本問は「厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」における本質的安全設計方策に分類されるもの」を問うている。覚えておくしかない。

(1)本質的安全設計方策とはいえない。本肢の「加工物を捕捉する措置」は、ガードである。

なお、「機械の包括的な安全基準に関する指針」別表第3の安全防護の方法の第3項の(9)に「機械から加工物等が落下又は放出されるおそれのあるときは、当該加工物等を封じ込め又は捕捉する措置を講じること」とある。すなわち本肢の方法は安全防護の方法であって、本質的安全設計方策とはされていない。

(2)本質的安全設計方策とはいえない。本肢の「可動式ガード」が、ガードであることは明らかであろう。従って本質的安全設計方策とはいえない。

(3)本質的安全設計方策とはいえない。「機械の包括的な安全基準に関する指針」別表4の付加保護方策の方法の5項に「作業床における滑り、つまずき等のおそれのあるときは、床面を滑りにくいもの等とすること」とある。従って本肢の対策は付加保護方策であって本質的安全設計方策とはいえない。

(4)本質的安全設計方策に分類される。「機械の包括的な安全基準に関する指針」別表2第13項には「安全上重要な機構や制御システムの故障等による危害を防止するため、当該機構や制御システムの部品及び構成品には信頼性の高いものを使用するとともに、当該機構や制御システムの設計において、非対称故障モードの構成品の使用、構成品の冗長化、自動監視の使用等の方策を考慮すること」とある。従って本肢は、同指針にいう本質的安全設計方策である。

(5)本質的安全設計方策とはいえない。「機械の包括的な安全基準に関する指針」によると、「安全で、かつ正しい機械の使用を確実にするために、製造等を行う者が、標識、警告表示の貼付、信号装置又は警報装置の設置、取扱説明書等の交付等により提供する指示事項等の情報」は「使用上の情報」であるとされている。従って本肢の対策は「使用上の情報」であって、本質的安全設計方策とはいえない。

2018年10月27日執筆 2020年04月29日修正