労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全一般 問18

保護帽(ヘルメット)




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問18 難易度 保護帽に関する基本的な知識問題である。確実に正答しておきたい問題である。
保護帽

問18 保護帽に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)墜落防護用の保護帽は、電柱などの高所からの墜落による危険の防護に十分有効である。

(2)FRP 樹脂製保護帽は、耐候性及び耐熱性に優れているが、絶縁用保護具としては使用できない。

(3)有機溶剤を使用する環境では、PE 樹脂製保護帽が最適である。

(4)着装体は構成される部品に異常がなくても、衛生面も考慮し、1年程度で交換する。

(5)暖房器の近くなど50 ℃以上の高温になる場所に、長時間放置しない。

正答(1)

【解説】

(1)適切ではない。本肢は出題意図が分かりにくいが、「高所から墜落しても頭部に障害を起こすことはない」という趣旨だとすれば正しいはずがない。しかし、「ある程度の効果はある」という趣旨であれば正しい。あまりにも常識的な内容なので、かえって出題者の意図が分からず解答に迷うが、試験協会の正答はこの肢であるから適切ではないということのようだ。

なお、「電柱」と書かれていることから、「墜落防止用の保護帽は感電防止には有効ではないので誤りの肢」と解説するテキストが一部にあるが、問われているのは「電柱などの高所からの墜落による危険の防護」に有効かどうかということであり、「活線作業」に有効かということではない。たまたま正答になったわけだが、趣旨が違うのではなかろうか。

(2)適切である。保護帽の材質には、熱硬化性樹脂製のFRP、熱可塑性樹脂製のABS、PC、PEの4つがある。このうちFRP 樹脂製保護帽は、耐候性及び耐熱性には優れているが、絶縁用保護具としては使用できない。従って、本肢は適切である。

なお、これらについて、日本ヘルメット工業会の「保護帽の取り扱いマニュアル」に分かりやすい一覧表になった資料がある。

材質 耐燃・耐熱性 耐候性 耐電圧性能 耐溶剤薬品性 備考
熱硬化性 FRP樹脂製 × ○~◎ 耐候性、耐熱性には優れるが電気用帽子としては使用できない
熱可塑性 ABS樹脂製 △~〇 △~〇 ○~◎ ×~△ 耐電圧性能には優れるが、高熱環境での使用には不向き
PC 樹脂製 ○~◎ ○~◎ ×~△ 耐候性はABSよりも優れているが、溶剤、薬品等には不向き
PE 樹脂製 ×~△ ○~◎ ○~◎ 有機系の薬品を使用する環境には最適

◎=特に優れている ○=優れている △やや劣る ×=劣る

(3)適切である。上記表において、PE 樹脂製保護帽は「有機系の薬品を使用する環境には最適」とある。

(4)適切である。一般社団法人日本ヘルメット工業会は、着装体(ハンモック、汗止め)は1年以内の交換を推奨している。この理由は、着装体は合成繊維製がほとんどで、使用することにより縫目がほどけたり、やぶれたり、また材料が劣化したりすることや、頭髪油、汗、汚れ等が落ちにくく匂い等で衛生上芳しくないこと等である。従って、適切でないとは言えない。

(5)適切である。保護帽の保管についての法令や通達は示されていないが、熱に弱い樹脂製のものもあるので、高温になるところや直射日光の当たるところに保管するべきではない。本肢は適切でないとは言えない。

2018年10月27日執筆 2020年04月29日修正