労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全一般 問16

個人用保護具等の各種検査、試験方法




問題文
トップ
合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2016年度(平成28年度) 問16 難易度 個人用保護具等の各種検査、試験方法についての高度な知識問題である。難問の部類だろうか。
保護具の検査、試験等

問16 安全に関する各種検査、試験方法について、次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)製造時の保護帽について、飛来・落下防護用のものは平面形のストライカを、墜落防護用のものは半球形のストライカをそれぞれ用い、耐衝撃性を調べる。

(2)製造時の安全帯のベルトについて、引張試験を行い、強度を調べる。

(3)製造時の安全靴について、先芯を含む先端部を切り取った試験体に、くさび形のストライカを落とし、耐衝撃性を調べる。

(4)ワイヤロープについて、ノギスを用いて直径を測り、摩耗の程度を調べる。

(5)製造時の保護めがねについて、鋼球を用いた落下試験を行い、レンズの耐衝撃性を調べる。

正答(1)

【解説】

(1)適切ではない。保護帽の規格(昭和50年9月8日労働省告示第66号:最終改定平成12年12月25日労働省告示120号)の第8条に「衝撃吸収性能等」の規定があり、第1項に「保護帽は、次の表の上欄に掲げる区分に応じ、同表の中欄に定める試験方法による試験を行った場合に、それぞれ同表の下欄に定める性能を有するものでなければならない」とされ、表中の試験方法欄に次の規定がある。

※ 覚える必要はないかもしれないが、覚えるとすれば、物体が飛来・落下して保護帽に当たる場合の物体は球形の場合があるだろうが、墜落・転落した場合にぶつかる地面は平面だと覚えておこう。

従って、本肢は半球型と平面型が逆になっており、誤っている。

区分 試験方法 性能
物体の飛来又は落下による危険を防止するための保護帽

一 保護帽について、高温処理、低温処理又は浸せき処理(以下この表において「高温処理等」という。)をした後、それぞれ、当該保護帽のヘッドバンドが人頭模型に密着しない状態で装着し、重さ五キログラムの半球形ストライカ(日本工業規格G三一〇一(一般構造用圧延鋼材)に定めるSS四〇〇の規格に適合する鋼材を材料とし、かつ、半径四八ミリメートルの半球形衝撃面を有するものに限る。)を一メートルの高さから当該保護帽の頂部に自由落下させる。

二 前号の試験は、高温処理等をした後一分以内に終了するものとする。

三 頂部すき間を調節することができる保護帽について第一号の試験を行う場合には、頂部すき間を最短にして行うものとする。

人頭模型に掛かる衝撃荷重(以下この表において「衝撃荷重」という。)が四・九〇キロニュートン以下であること。
墜落による危険を防止するための保護帽

一 保護帽について、高温処理等をした後、それぞれ、中心線が水平に対し三〇度傾斜している人頭模型に衝撃点が保護帽の前頭部及び後頭部となるように装着し、重さ五キログラムの平面形ストライカ(日本工業規格G三一〇一(一般構造用圧延鋼材)に定めるSS四〇〇の規格に適合する鋼材を材料とし、かつ、直径一二七ミリメートルの衝撃面を有するものに限る。)を一メートルの高さから自由落下させる。

二 前号の試験は、高温処理等をした後三分以内に終了するものとする。

三 着装体を有する保護帽について第一号の試験を行う場合には、当該着装体のヘッドバンドが人頭模型に密着しない状態で装着して行うものとする。

一 衝撃荷重が九・八一キロニュートン以下であること。

二 七・三五キロニュートン以上の衝撃荷重が一、〇〇〇分の三秒以上継続しないこと。

三 四・九〇キロニュートン以上の衝撃荷重が一、〇〇〇分の四・五秒以上継続しないこと。

(2)適切である。(3)、(5)も同様であるが、この肢はかなり曖昧な表現で、何が言いたいのかよく分からない文章となっている。文頭の「製造時の」を製造時に全数を検査するという意味だと考えれば明らかに誤っているが、試験協会による公表正答は(1)なので、そうではないのであろう。

JIS T 8165:2012によれば、ベルトの強さ試験について「試験片の全幅をチャック又はその他の方法でつかみ,標点間距離を200±20mmとして引張試験機によって力を加える」とされている。おそらく本肢は、このJISの記述によって正しいとされているのであろう。

なお、現在は「安全帯」は墜落制止用器具と名称が変更されている。

(3)適切である。先芯の入った安全靴の規格はJIS T8101:2006に定められている。衝撃試験についての規定では、ストライカはくさび型とされており、安全靴の先端を切り取って行うとされている。従って本肢は正しいのであろう。

(4)適切である。ワイヤロープの直径の測定方法については、通常はノギスで3方向から測定を行って平均をとることとされている。なお、一部の技能講習のテキストで、2方向から測定して平均を取るとするものもある。

(5)適切である。JIS T 8147:2016によれば、直径約22mm、質量約44gの鋼球を1.27〜1.3mの高さから自由落下させ、この衝撃によりレンズ及びアイピースが割れたり、き裂が入ったりしないこと、また、枠から外れたりしてはならないことなどが定められている。従って本肢は正しいのであろう。

2018年10月27日執筆 2020年04月28日修正