労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全一般 問09

人間行動及びヒューマンエラーのモデル




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問09 難易度 人間行動とヒューマンエラーに関する基本的な知識問題である。確実に正答すべき問題である。
ヒューマンエラー

問9 人間行動及びヒューマンエラーのモデルに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)スキルベース(skill based)、ルールベース(rule based)及びナレッジベース(knowledge based)の3段階に分けられている人間の認知行動モデルにおいて、意識しないで実行されるのは、ルールベースの行動である。

(2)人間の情報処理モデルでは、人間行動は知覚(入力)、判断、行動(出力)の3段階に分けられている。

(3)人間の意識レベルを、フェーズ0(無意識)、フェーズⅠ(意識ぼけ)、フェーズⅡ(普通)、フェーズⅢ(積極的活動)及びフェーズⅣ(過緊張)の5段階に分けているモデルでは、人間が最もエラーを起こしにくいのはフェーズⅢのときである。

(4)事故原因の分析に用いられることがあるSHEL モデルは、エラーを起こした本人に影響する四つの要因が取り囲むモデルであり、SHEL はそれぞれ、S(ソフトウェア)、H(ハードウェア)、E(環境)及びL(人間)を意味している。

(5)ヒューマンエラーの防止を図るためには、ヒューマンエラーを誘発した要因を多様な角度から分析する必要があるが、ヒューマンエラーに限らず人間行動に影響を与える要因のことを行動形成因子という。

正答(1)

【解説】

(1)誤り。スキルベース(skill based)とは、自らのこれまでの経験や知識に基づいたよく分かっていることを行う制御パターンである。

初めての作業を行うとき、最初は、過去の知識や経験に基づいて考えながら行う。この制御パターンをナレッジベース(knowledge based)と呼ぶ。ある程度、作業を繰り返したが、まだあまり慣れていないという段階では、手順を確認しながら行う制御パターンに移行する。これをルールベース(rule based)と呼ぶ。さらに作業に慣れると、意識しないで行えるようになってしまうが、これをスキルベースと呼ぶ。

要は、最初は考えながらやっていたことでも、繰り返してやっているうちにやりかたを覚えて記憶に従ってできるようになり、最後は他のことを考えながらでもやれるようになってしまう。この各段階に、ナレッジベース、ルールベース、スキルベースと名前を付けたわけである。

(2)正しい。人間の情報処理モデルでは、人間行動をコンピュータの情報処理の用語を用いて説明しようとする。この理論では、人間行動を知覚(入力)、判断、行動(出力)の3段階に分けて分析・検討しようとする。

(3)正しい。人間は、緊張のレベルが低すぎても高すぎてもエラーを起こしやすいとされている。なお、フェーズ0とは睡眠中や失神しているような何も考えていない状態であり、フェーズⅠとは居眠りをしているような状態、フェーズⅡとはリラックスしてぼんやりしているような状態である。一方、フェーズⅣとは、緊急事態などが起きて慌てたり、身がすくんだりしているような状態である。当然、適切な行動をとれるのはフェーズⅢということになる。

フェーズは0からⅣまでであり、Ⅲは5つのフェーズの中間ではないので、勘違いをしないように注意すること。

(4)正しい。SHEL モデルは、1975年にKLM航空のFrank H.Hawkinsが提唱したものである。ヒューマンファクターの概念を分かりやすく図示しており、中央に本人(人間=Liveware)を置き、周囲に、S(Software=マニュアル、作業標準など)、H(Hardware=設備、装置、機械など)、E(Environment=作業環境)を配置している。

(5)正しい。行動形成因子(PSF=Performance Shaping Factors)とは、ヒューマンエラーを誘発した要因など人間行動に影響を与える要因のことである。例えば、生活リズム、眠気、年齢、意識レベルなども含まれる。

2018年10月27日執筆 2020年04月26日修正