問3 安全委員会に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)安全委員会は、事業場の安全に関する調査審議機関として位置付けられたものであり、安全委員会を安全についての実行機関として指示・伝達の場としないこととしている。
(2)安全委員会は定例会議であり、また、委員会の委員はそれぞれ異なった部署に所属しており、職務の事情も違っていることから、特別の場合を除いて、2時間程度で終了できるようにしている。
(3)安全委員会は、職場の安全問題について労働者の意見を反映させる場であるので、労働者側委員の意見に基づき運営している。
(4)議長である総括安全衛生管理者以外の委員の半数については、労働者の過半数で組織する労働組合から推薦があった場合には、その者を委員として指名することとしている。
(5)委員の指名において、労働組合などに委員の推薦を依頼しているにもかかわらず、労働者側の委員の推薦が得られない場合には、委員の推薦があるよう話し合いを続けている。
このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2016年度(平成28年度) | 問03 | 難易度 | 安全委員会に関するごく基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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安全委員会 | 2 |
問3 安全委員会に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)安全委員会は、事業場の安全に関する調査審議機関として位置付けられたものであり、安全委員会を安全についての実行機関として指示・伝達の場としないこととしている。
(2)安全委員会は定例会議であり、また、委員会の委員はそれぞれ異なった部署に所属しており、職務の事情も違っていることから、特別の場合を除いて、2時間程度で終了できるようにしている。
(3)安全委員会は、職場の安全問題について労働者の意見を反映させる場であるので、労働者側委員の意見に基づき運営している。
(4)議長である総括安全衛生管理者以外の委員の半数については、労働者の過半数で組織する労働組合から推薦があった場合には、その者を委員として指名することとしている。
(5)委員の指名において、労働組合などに委員の推薦を依頼しているにもかかわらず、労働者側の委員の推薦が得られない場合には、委員の推薦があるよう話し合いを続けている。
正答(3)
【解説】
(1)適切である。安衛法第17条第1項は「事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない」としている。安全委員会は、事業場の安全に関する調査審議機関として位置付けられたものであり、安全委員会を安全についての実行機関として指示・伝達の場としてはならない。
【労働安全衛生法】
(安全委員会)
第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。
一 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること。
二 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること。
三 前二号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止に関する重要事項
2 (以下略)
(2)適切である。安衛則第23条の規定により安全委員会は毎月一回以上開催するようにしなければならない。従って、本肢が安全委員会は定例会議であるとしていることは不適切ではない。
また、安衛法第17条第2項の規定により、委員になれるべき者は限定されており、また同第4項の規定により議長以外の委員の半数は過半数労働組合等の推薦に基づかなければならない。従って、必ずしも「委員会の委員はそれぞれ異なった部署に所属しており、職務の事情も違っている」ことになるとは限らないが、事業者が安全に関する事項を調査審議させるという趣旨からは、委員会の委員を異なった部署から、さまざまな職務の者を選ぶことが望ましい。従って本肢が「委員会の委員はそれぞれ異なった部署に所属しており、職務の事情も違っている」としていることは、不適切とは言えないであろう。
一方、安全委員会の時間(長さ)については、法令に規定はなく、行政の解釈等も示されてはいないが、実施すべき事項(調査審議すべき事項=安衛法第17条第1項)は法令に定められているのだから、それを行うために十分な時間であればよい。それは、事業場の業種、規模、災害発生状況その他の事情などによるであろう。本肢が2時間程度としていることは、「特別な場合を除き」としていることも考慮すれば、必ずしも不適切とは言えないであろう。
【労働安全衛生法】
(安全委員会)
第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。
一 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること。
二 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること。
三 前二号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止に関する重要事項
2 安全委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員(以下「第一号の委員」という。)は、一人とする。
一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
二 安全管理者のうちから事業者が指名した者
三 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
3 (略)
4 事業者は、第一号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。
5 (略)
【労働安全衛生規則】
(委員会の会議)
第23条 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月一回以上開催するようにしなければならない。
2 (以下略)
(3)適切ではない。安衛法第17条は、事業者に対して、安全委員会を設けて一定の事項を付議して調査審議をさせることを求めている。従って、法を遵守するためには事業者が自らの責任において、委員会を運営する必要がある。運営について労働者に委ねることは許されないと考えるべきである。
(4)適切である。安衛法第17条第4項は「第1号の委員(同条第3項の規定により議長となるべき総括安全衛生管理者等=引用者)以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない」としている。
なお、この推薦は同条第2項第2号及び第3号の委員の半数について行わなければならない。一部のテキストで、第2号及び第3号の委員と同数の委員を、第2号及び第3号の委員とは別に労働組合等の推薦によって指名しなければならないとするものを見かけることがあるが、誤りである。
【労働安全衛生法】
(安全委員会)
第17条 (第1項略)
2 安全委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員(以下「第一号の委員」という。)は、一人とする。
一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
二 安全管理者のうちから事業者が指名した者
三 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
3 (略)
4 事業者は、第一号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。
5 前二項の規定は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときは、その限度において適用しない。
(5)適切である。労働組合等の推薦が得られないので、推薦が得られるよう話し合いを続けているということ、それ自体が不適切ではないことは当然であろう。従って本肢は適切でないとは言えない。
本肢のような場合、実務においては、労働組合の推薦のない(会社側の指名のみの)委員だけで安全委員会を開催するのか、推薦が得られるまで委員会を開催するべきではないのかが問題となる。前者の場合、安全委員会の未開催という違反となり、後者の場合安全委員会の委員の選定手続き違反となる。
しかし、昭和47年09月18日基発第602号「労働安全衛生法および同法施行令の施行について」に次の記述がある。
この通達によれば、このような場合には推薦の得られない委員のみで委員会を開催するべきこととなる。確かに、後者については、形式的には違反となるが、労働組合に対して推薦を得られるよう話し合いを続けているので、事業者として実施すべき義務を果たしており違反とまではいえないと考えられるからだ。
【昭和47年09月18日基発第602号】(抄)】
Ⅰ 法律関係
8 安全・衛生委員会(第一七条から第一九条まで関係)
(5)安全・衛生委員会の議長となる委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいては、その労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては、労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならないこととされているが、種々の事情により労働者側の委員推薦が得られない場合には、事業者としては、委員推薦があるように誠意をもつて話し合うべきものであり、その話し合いを続けている過程において、安全・衛生委員会の委員の推薦が労働者側から得られないために委員の指名もできず、委員会が設置されない場合があつたとしても、事業者に、安全・衛生委員会の未設置に係る刑事責任の問題は発生しないと解されるものであること。
(6)また、「推薦に基づき指名」するとは、第一七条から第一九条までに定めるところにより、適法な委員の推薦があつた場合には、事業者は第一号の委員以外の委員の半数の限度において、その者を委員として指名しなければならない趣旨であること。
※ 下線の強調は柳川による。