労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全関係法令 問15

労働安全衛生法(全般)




問題文
トップ
合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

前の問題
本問が最後の問題です
2015年度(平成27年度) 問15 難易度 労働安全衛生法全般のごく初歩的な知識問題。ほぼ常識で正答できるレベルである。
労働安全衛生法(全般)

問15 常時150人の労働者を使用する食料品製造業の事業場から、労働安全コンサルタントに安全診断の依頼があり、安全診断を行った結果、事業者が講じている措置は次のとおりであった。これらの措置のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)運搬作業に使用している2台のフォークリフトについては、最高速度が毎時 25 キロメートルであり、構内での運行経路を定め当該経路により運転させていたが、その制限速度は定めていなかった。

(2)混練に使用している食品加工用混合機は、その内容物の取出しが自動的に行われる構造になっていないことから、用具を使用してその内容物を取り出させていたが、取出しのときに当該機械を停止させてはいなかった。

(3)安全診断の実施の1年前に倉庫に設置している積載荷重 0.5 トンのエレベーターの変更工事を行い、その積載荷重を 0.95 トンに変更して使用していたが、その変更の際、所轄の労働基準監督署長の変更検査を受けていなかった。

(4)毎月1回、定期的に開催している安全衛生委員会の議事の概要については、開催の都度、遅滞なく、各作業場の見やすい場所に常に掲示していたが、労働者への書面の交付はしていなかった。

(5)新たに食品加工用ロール機を操作する業務に従事させる労働者には、当該機械の取扱い方法等について教育は行っていたが、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育は実施していなかった。

正答(1)

【解説】

(1)違反となる。安衛則第 151 条の5は、最高速度が毎時 10 キロメートル以下のものを除き、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、あらかじめ、適正な制限速度を定め、それにより作業を行わなければならないとしている。従って本肢は違反となる。

なお、フォークリフトは、安衛則第 151 条の2により、車両系荷役運搬機械等であるとされている。

【労働安全衛生規則】

(定義)

第151条の2 この省令において車両系荷役運搬機械等とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

 フオークリフト

二~七 (略)

(制限速度)

第151条の5 事業者は、車両系荷役運搬機械等(最高速度が毎時10キロメートル以下のものを除く。)を用いて作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の地形、地盤の状態等に応じた車両系荷役運搬機械等の適正な制限速度を定め、それにより作業を行わなければならない。

 (略)

(2)違反とはならない。安衛則第 130 条の6により、食品加工用混合機等については、「原材料を送給する場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、当該機械の運転を停止し、又は労働者に用具等を使用させなければならない」とされている。

すなわち、「当該機械の運転を停止する」か「労働者に用具等を使用させる」かのいずれかの対策を取ればよい。

本肢は、食品加工用混合機を停止させてはいなかったが、用具を使用してその内容物を取り出させていたのであるから違反にはならない。

【労働安全衛生規則】

(粉砕機等への転落等における危険の防止)

第130条の5 事業者は、食品加工用粉砕機又は食品加工用混合機(後略)

2及び3 (略)

(粉砕機等に原材料を送給する場合における危険の防止)

第130条の6 事業者は、前条第1項の機械(原材料の送給が自動的に行われる構造のものを除く。)に原材料を送給する場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、当該機械の運転を停止し、又は労働者に用具等を使用させなければならない。

 (略)

(3)違反とはならない。クレーン則第 164 条は、エレベーターの特定の部分について変更を加えた者は、安衛法第 38 条第3項の規定により、労働基準監督署長による変更検査を受けなければならないとしている。この条文にいうエレベーターとは、安衛令第 12 条第1項第六号のエレベーターであり(クレーン則第 138 条第1項参照)、積載荷重が1トン以上の “特定機械等” に限られる。

本肢のエレベーターは、積載荷重 0.5 トンのものを 0.95 トンに変更したのであるから、安衛令第 12 条第1項第六号のエレベーター(“特定機械等”)に該当せず変更検査の必要はない。従って本肢は違反とはならない。

なお、積載荷重 0.5 トンのエレベーターを1トン以上に改造した場合は、変更ではなく製造に該当する。

【労働安全衛生法】

(製造の許可)

第37条 特に危険な作業を必要とする機械等として別表第一に掲げるもので、政令で定めるもの(以下「特定機械等」という。)(後略)

 (略)

(製造時等検査等)

第38条 (第1項及び第2項 略)

 特定機械等(移動式のものを除く。)を設置した者、特定機械等の厚生労働省令で定める部分に変更を加えた者又は特定機械等で使用を休止したものを再び使用しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で定める事項について、労働基準監督署長の検査を受けなければならない。

別表第一 (第三十七条関係)

一~五 (略)

 エレベーター

七及び八 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(特定機械等)

第12条 法第37条第1項の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。

一~五 (略)

 積載荷重(エレベーター(簡易リフト及び建設用リフトを除く。以下同じ。)、簡易リフト又は建設用リフトの構造及び材料に応じて、これらの搬器に人又は荷をのせて上昇させることができる最大の荷重をいう。以下同じ。)が1トン以上のエレベーター

七及び八 (略)

 (略)

【クレーン等安全規則】

(製造許可)

第138条 エレベーター(令第12条第1項第六号のエレベーターに限る。以下本条から第144条まで、第147条及び第148条並びにこの章第四節及び第五節において同じ。)(後略)

 (略)

第五節 変更、休止、廃止等

(変更届)

第163条 (柱書 略)

 搬器又はカウンターウエイト

二~四 (略)

 屋外に設置されているエレベーターにあっては、昇降路塔、ガイドレール支持塔又は控え

(変更検査)

第164条 前条第一号又は第五号に該当する部分について変更を加えた者は、法第38条第3項の規定により、当該エレベーターについて、所轄労働基準監督署長の検査を受けなければならない。ただし、所轄労働基準監督署長が当該検査の必要がないと認めたエレベーターについては、この限りでない。

2及び3 (略)

(4)違反とはならない。安全衛生委員会の議事の概要は、安衛則第 23 条第3項の規定により労働者に周知させなければならない。しかし、その方法は同条第3項のいずれの方法でもよく、各作業場の見やすい場所に常に掲示すれば、労働者への書面の交付はしなくても違反ではない。

【労働安全衛生規則】

(委員会の会議)

第23条 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月1回以上開催するようにしなければならない。

 (略)

 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によって労働者に周知させなければならない。

 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。

 書面を労働者に交付すること。

 事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体をいう。以下同じ。)をもつて調製するファイルに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

4及び5 (略)

※ 安衛則第 23 条第3項第三号は、出題当時は下記のようになっていた。現在は上記のように修正されている。

(委員会の会議)

第23条 (第1項及び第2項 略)

 (柱書 変更なし)

一及び二 (変更なし)

 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

4及び5 (略)

(5)違反とはならない。特別の教育を行うべき業務は安衛則第 36 条に規定されているが、食品加工用ロール機を操作する業務は定められていない。従って、本肢はただちには違反とはならない。

もっとも、試験から離れた現実の事業場であれば、食品加工用ロール機を操作する業務に従事させる労働者に対して行うべき雇入れ時等の教育として、「機械の取扱い方法等について」の教育だけで十分かについては、かなり疑問はある。「等」として何を教えたかにもよるが、まず間違いなく、安衛法第59条第1項又は第2項(安衛則第35条)に違反しているだろう。

前の問題
本問が最後の問題です