労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全関係法令 問09

電気による労働災害防止のための措置




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問09 難易度 電気による労働災害の防止に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
電気による労働災害の防止

問9 電気による労働災害を防止するために事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)配電盤室に設置した電気機械器具について、当該配電盤室への電気取扱者以外の者の立入りを禁止したので、当該電気機械器具の充電部分に感電を防止するための囲い又は絶縁覆いを設けなかった。

(2)鉄骨上で、交流アーク溶接の作業を行うときに、作業場所の高さが2メートル未満であったので、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなかった。

(3)高圧の電路を開路して、当該電路の点検の電気工事の作業を行うときに、当該電路を開路した後に検電器具による停電の確認を行ったので、短絡接地器具による短絡接地はしなかった。

(4)負荷電流をしゃ断するためのものでない高圧の電路の開閉器を開路するときに、当該開閉器に当該電路が無負荷でなければ開路することができない緊錠装置を設けたので、当該操作を行う労働者に当該電路が無負荷であることを示すためのパイロットランプ、当該電路の系統を判別するためのタブレット等による電路が無負荷であることの確認はさせなかった。

(5)高圧の充電電路の修理の作業を行う場合において、労働者に活線作業用器具を使用させたので、絶縁用保護具は着用させなかった。

正答(3)

【解説】

(1)違反とはならない。電気機械器具の充電部分は、安衛則第329条の規定により、原則として感電を防止するための囲い又は絶縁覆いを設けなければならないこととされている。しかし、同条の但書きは、配電盤室、変電室等区画された場所で、電気取扱者以外の者の立入りを禁止したところに設置するものは除かれている。

【労働安全衛生規則】

(電気機械器具の囲い等)

第329条 事業者は、電気機械器具の充電部分(電熱器の発熱体の部分、抵抗溶接機の電極の部分等電気機械器具の使用の目的により露出することがやむを得ない充電部分を除く。)で、労働者が作業中又は通行の際に、接触(導電体を介する接触を含む。以下この章において同じ。)し、又は接近することにより感電の危険を生ずるおそれのあるものについては、感電を防止するための囲い又は絶縁覆いを設けなければならない。ただし、配電盤室、変電室等区画された場所で、事業者が第36条第4号の業務に就いている者(以下「電気取扱者」という。)以外の者の立入りを禁止したところに設置し、又は電柱上、塔上等隔離された場所で、電気取扱者以外の者が接近するおそれのないところに設置する電気機械器具については、この限りでない。

(2)違反とはならない。自動溶接以外の交流アーク溶接等の作業を行うときに、自動電撃防止装置を使用しなければならない場所は、安衛則第332条で「電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところ」又は「墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある高さが二メートル以上の場所で鉄骨等導電性の高い接地物に労働者が接触するおそれがあるところ」と定められている。

本肢の「鉄骨上で(略)作業場所の高さが2メートル未満」の場所はこれらのいずれにも該当しない。従って、本肢は違反とはならない。

なお、コンサルタント試験に合格した後の実務においては、交流アーク溶接装置を用いる溶接等の作業については、常に電撃防止装置を使用させるべきである。

【労働安全衛生規則】

(交流アーク溶接機用自動電撃防止装置)

第332条 事業者は、船舶の二重底若しくはピークタンクの内部、ボイラーの胴若しくはドームの内部等導電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところ又は墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある高さが二メートル以上の場所で鉄骨等導電性の高い接地物に労働者が接触するおそれがあるところにおいて、交流アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。

(3)違反となる。本肢に「電路を開路して」とあるので、停電作業であると判断できる。なお、「電路の点検」が「電気工事」に該当するとしていることは正しい。そして、停電作業を行う場合に実施すべきことは安衛則第339条に定められている。

その第3号に、高圧又は特別高圧であった電路は、検電器具により停電を確認するとともに、短絡接地をしなければならないとしている。従って、短絡接地をしなかったとする本肢は違反となる。

なお、短絡接地は、誤通電や他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するためであるから、作業開始時の停電の確認によって代替することはできないのである。

【労働安全衛生規則】

(停電作業を行なう場合の措置)

第339条 事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じなければならない。当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。

一及び二 (略)

 開路した電路が高圧又は特別高圧であつたものについては、検電器具により停電を確認し、かつ、誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること。

 (略)

(4)違反とはならない。電路の断路器や、線路開閉器等の開閉器は、容量が小さいので、大電流が流れているときに開路すると、アーク火花が飛んできわめて危険である。いわゆる「ジスコンの生切なまぎり」を禁止しているのは、この理由による。

安衛則第340条は、ジスコンの開路をするときは、原則として「該電路が無負荷であることを示すためのパイロットランプ、当該電路の系統を判別するためのタブレット等により、当該操作を行なう労働者に当該電路が無負荷であることを確認」させなければならないが、「当該電路が無負荷でなければ開路することができない緊錠装置を設けるときは」この限りでないとしている。従って、本肢は違反とはならない。

なお、コンサルタント試験合格後の実務においては、ジスコンは、直列に接続されているOCBなどの、容量のある開閉器を開いてから行うべきである。本肢は、違反とはならないが、かなり非常識な内容である。

【労働安全衛生規則】

(断路器等の開路)

第340条 事業者は、高圧又は特別高圧の電路の断路器、線路開閉器等の開閉器で、負荷電流をしや断するためのものでないものを開路するときは、当該開閉器の誤操作を防止するため、当該電路が無負荷であることを示すためのパイロットランプ、当該電路の系統を判別するためのタブレット等により、当該操作を行なう労働者に当該電路が無負荷であることを確認させなければならない。ただし、当該開閉器に、当該電路が無負荷でなければ開路することができない緊錠装置を設けるときは、この限りでない。

(5)違反とはならない。高圧活線作業を行う場合の規定は、安衛則第341条にあるが、「活線作業用器具の使用」、「絶縁用保護具の着用」又は「活線作業用装置の使用」は、いずれかを行えばよいので、本肢は違反とはならない。

なお、本肢の「高圧の充電電路の修理の作業」は、「労働者に活線作業用器具を使用させた」とあるので、(高圧活線近接作業ではなく)高圧活線作業を行っているのである。

【労働安全衛生規則】

(高圧活線作業)

第341条 事業者は、高圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。

 労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、当該充電電路のうち労働者が現に取り扱っている部分以外の部分が、接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるものに絶縁用防具を装着すること。

 労働者に活線作業用器具を使用させること。

 労働者に活線作業用装置を使用させること。この場合には、労働者が現に取り扱っている充電電路と電位を異にする物に、労働者の身体又は労働者が現に取り扱っている金属製の工具、材料等の導電体(以下「身体等」という。)が接触し、又は接近することによる感電の危険を生じさせてはならない。

 (略)

2017年12月24日執筆 2020年05月09日修正