労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全関係法令 問08

ボイラー又は圧力容器




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 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問08 難易度 ボイラー又は圧力容器に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
ボイラー又は圧力容器

問8 ボイラー又は圧力容器に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)事業者は、ボイラー室については、ボイラーを取り扱う労働者が緊急の場合に避難するのに支障がないものであるときを除き、2以上の出入口を設けなければならない。

(2)事業者は、ボイラーの水高計の目もりには、最高使用圧力を示す位置に、見やすい表示をしなければならない。

(3)外国において小型圧力容器を製造した者が自ら個別検定を受けたものである場合を除き、小型圧力容器を輸入した者は、個別検定を受けなければならない。

(4)事業者は、第一種圧力容器を初めて使用するときは、第一種圧力容器取扱作業主任者に、労働者にあらかじめ当該作業の方法を周知させるとともに、当該作業を直接指揮させなければならない。

(5)使用を廃止した第一種圧力容器を再び使用しようとする者は、所轄労働基準監督署長の使用再開検査を受けなければならない。

正答(5)

【解説】

(1)正しい。ボイラー則第 19 条に、本肢と同旨の規定がある。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(ボイラー室の出入口)

第19条 事業者は、ボイラー室には、2以上の出入口を設けなければならない。ただし、ボイラーを取り扱う労働者が緊急の場合に避難するのに支障がないボイラー室については、この限りでない。

※ ボイラー則第19条は、2025年4月1日より改正により下記のようになる。

(ボイラー室の出入口)

第19条 事業者は、ボイラー室には、二以上の出入口を設けなければならない。ただし、ボイラーを取り扱う者が緊急の場合に避難するのに支障がないボイラー室については、この限りでない。

(2)正しい。ボイラー則第 28 条に、ボイラーの安全弁その他の附属品の管理についての規定がありその第1項第五号に「圧力計又は水高計の目もりには、当該ボイラーの最高使用圧力を示す位置に、見やすい表示をすること」と定められている。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(附属品の管理)

第28条 事業者は、ボイラーの安全弁その他の附属品の管理について、次の事項を行なわなければならない。

一~四 (略)

 圧力計又は水高計の目もりには、当該ボイラーの最高使用圧力を示す位置に、見やすい表示をすること。

六~八 (略)

 (略)

(3)正しい。まず、本肢が「外国において小型圧力容器を製造した者が自ら個別検定を受けたものである場合を除き」としている部分について検討しよう。確かに、安衛法第 44 条第2項が、外国の製造業者が予め登録個別検定機関の個別検定を受けている場合は、輸入業者は個別検定を受けなくてもよいとしている。

しかし、本項が、製造業者と輸入業者が別な者でなければならないとしていることに留意するべきである。立法者がこのような限定をした理由は、製造業者と輸入業者が同じ者であれば、その製造業者(すなわち輸入業者)は、輸入した後で自ら国内で個別検定を受けるべきであって、適用を外す理由がないからである。

従って、安衛法第 44 条からは、製造業者が自ら個別検定を受けたものである場合であっても、製造業者と輸入業者が同じであれば、輸入した後で個別検定を受けなければならないこととなる(※)。なお、安衛法第 44 条第1項は「輸入した者」となっており、事前の検査は認めていないので、事前に検査を行うことはできない。

※ ただし、この点、ボイラー則第 90 条の2が準用する同第 84 条第2項は、輸入業者と製造業者が別な者であることを適用除外の要件としていないので、やや疑問はある。しかし、安衛法が認めていないものを省令であるボイラー則が認めているとの解釈はできない。

本肢は、製造業者と輸入業者が同一であっても「製造した者が自ら個別検定を受け」ていれば個別検定を受けなくても良いと読めるため、やや厳密さを欠き疑問があるが、試験協会は本肢を正しい肢であるとしている。

【労働安全衛生法】

(個別検定)

第44条 第42条の機械等(次条第1項に規定する機械等を除く。)のうち、別表第3に掲げる機械等で政令で定めるものを製造し、又は輸入した者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の登録を受けた者(以下「登録個別検定機関」という。)が個々に行う当該機械等についての検定を受けなければならない。

 前項の規定にかかわらず、同項の機械等を輸入した者が当該機械等を外国において製造した者(以下この項において「外国製造者」という。)以外の者(以下この項において単に「他の者」という。)である場合において、当該外国製造者が当該他の者について前項の検定が行われることを希望しないときは、当該外国製造者は、厚生労働省令で定めるところにより、自ら登録個別検定機関が個々に行う当該機械等についての検定を受けることができる。当該検定が行われた場合においては、当該機械等を輸入した者については、同項の規定は、適用しない。

3~6 (略)

別表第三 (第四十四条関係)

一~三 (略)

 小型圧力容器

【労働安全衛生法施行令】

(個別検定を受けるべき機械等)

第14条 法第44条第1項の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。

一~三 (略)

 小型圧力容器(船舶安全法の適用を受ける船舶に用いられるもの、自動車用燃料装置に用いられるもの及び電気事業法、高圧ガス保安法、ガス事業法又は二酸化炭素の貯留事業に関する法律の適用を受けるものを除く。)

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(検定)

第84条 第二種圧力容器を製造し、又は輸入した者は、当該第二種圧力容器について法第44条第1項の検定を受けなければならない。

 外国において第二種圧力容器を製造した者は、当該第二種圧力容器について法第44条第2項の検定を受けることができる。当該検定が行われた場合においては、当該第二種圧力容器を輸入した者については、前項の規定は、適用しない。

 (略)

(検定)

第90条の2 第84条の規定は、小型ボイラー若しくは小型圧力容器を製造し、若しくは輸入した者又は外国において小型ボイラー若しくは小型圧力容器を製造した者について準用する。

次に小型圧力容器が個別検定の対象になるかを検討しよう。これについては、安衛法第 44 条第1項の規定により個別検定を受けなければならない機械等は、安衛令第 14 条(第四号)に定められており、小型圧力容器は「船舶安全法の適用を受ける船舶に用いられるもの及び電気事業法、高圧ガス保安法又はガス事業法の適用を受けるもの」を除き対象となる。

なお、これについて、安衛法第44条の規定が分かりにくければ、当サイトの「判りにくい条文をどう読むか=安衛法の個別検定の対象を例に挙げ=」を参照して頂きたい。

すなわち、安衛令第 14 条は、「船舶安全法の適用を受ける船舶に用いられるもの及び電気事業法、高圧ガス保安法又はガス事業法の適用を受けるものを除く」としており、すべての小型圧力容器について必ず個別検定を受けなければならないわけではない。そのため、厳密に言えば本肢は誤っていることになる。

しかし、試験協会は本肢を正しい肢であるとしている。コンサルタント試験では、例外は無視するということのようだ。なお、これが司法試験であれば間違いなく誤っている肢とされるだろう。

(4)正しい。ボイラー則第 63 条に第一種圧力容器作業主任者の職務について規定されており、第三号に本肢と同じ趣旨の記載がある。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(第一種圧力容器取扱作業主任者の職務)

第63条 事業者は、第一種圧力容器取扱作業主任者に、次の事項を行わせなければならない。

一及び二 (略)

 第一種圧力容器を初めて使用するとき、又はその使用方法若しくは取り扱う内容物の種類を変えるときは、労働者にあらかじめ当該作業の方法を周知させるとともに、当該作業を直接指揮すること。

四~六 (略)

(5)誤り。使用を廃止した第一種圧力容器を再び使用しようとする者は、ボイラー則第 57 条第1項(第三号)の規定により、登録製造時等検査機関の使用検査を受けなければならない。

なお、本肢の「廃止」を「休止」と変えれば、同規則第 46 条第1項により、正しい文章となる。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(使用再開検査)

第46条 使用を休止したボイラーを再び使用しようとする者は、法第38条第3項の規定により、当該ボイラーについて所轄労働基準監督署長の検査を受けなければならない。

2及び3 (略)

(使用検査)

第57条 次の者は、法第38条第1項の規定により、それぞれ当該第一種圧力容器について登録製造時等検査機関の検査を受けなければならない。

一及び二 (略)

 使用を廃止した第一種圧力容器を再び設置し、又は使用しようとする者

2~6 (略)