労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全関係法令 問03

建設業における安全衛生管理体制




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問03 難易度 建設業の安全衛生管理体制に関するやや詳細な知識問題。合否を分けるレベル。確実に正答したい。
建設業安全衛生管理体制

問3 建設業における安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)元方事業者は、一の場所において、人口が集中している地域内における道路上で行われる橋梁の建設の仕事の作業であって、当該場所における元方事業者の労働者及び関係請負人の労働者の数が常時20人以上30 人未満であるものを行うときは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、店社安全衛生管理者を選任しなければならない。

(2)事業者は、元方安全衛生管理者に対し、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため必要な措置をなし得る権限を与えなければならない。

(3)元方事業者は、店社安全衛生管理者に当該元方事業者の労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、作業を行う場所において設置する協議組織の会議に常時参加させるとともに、作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成させなければならない。

(4)安全衛生責任者を選任すべき請負人は、安全衛生責任者を選任したとき、同一の場所において作業を行う統括安全衛生責任者を選任すべき事業者に対し、遅滞なく、その旨を通報しなければならない。

(5)安全衛生責任者を選任すべき請負人は、当該請負人がその仕事の一部を他の請負人に請け負わせている場合は、選任した安全衛生責任者に当該他の請負人の安全衛生責任者との作業間の連絡及び調整を行わせなければならない。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。店社安全衛生管理者の選任を義務付ける安衛法第15条の3第1項の規定は次のようになっている。

【安衛法】

(店社安全衛生管理者)

第15条の3 建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が一の場所(これらの労働者の数が厚生労働省令で定める数未満である場所及び第15条第1項又は第3項の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所を除く。)において作業を行うときは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、これらの労働者の作業が同一の場所で行われることによって生ずる労働災害を防止するため、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における第30条第一項各号の事項を担当する者に対する指導その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

 (略)

条文のままでは、やや分かりにくいので、本条を整理すると次の表のようになる。

義務の主体 建設業に属する事業の元方事業者
義務のかかる要件 Ⅰ
(原則)
その労働者及び関係請負人の労働者が一の場所において作業を行うとき
義務のかかる要件 Ⅱ
(例外)

(労働者数に関して)次の場所を除く

① その労働者及び関係請負人の労働者の数が、厚生労働省令で定める数未満である場所

② 第15条第1項又は第3項の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所

義務をかける目的 当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、これらの労働者の作業が同一の場所で行われることによって生ずる労働災害を防止するため
義務の内容 厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における第30条第一項各号の事項を担当する者に対する指導その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない

ここに、3の労働者数の①の“省令で定める数”は、安衛則第18条の6に規定があり、次のようになっている。

【労働安全衛生規則】

(店社安全衛生管理者の選任に係る労働者数等)

第18条の6 法第15条の3第1項及び第2項の厚生労働省令で定める労働者の数は、次の各号の仕事の区分に応じ、当該各号に定める数とする。

 令第7条第2項第1号の仕事及び主要構造部が鉄骨造又は鉄骨鉄筋コンクリート造である建築物の建設の仕事 常時20人

 前号の仕事以外の仕事 常時50人

また、②の“統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所”については。安衛令第7条に規定があり、次のように定められている。

【労働安全衛生法施行令】

(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)

第7条 (略)

 法第15条第1項ただし書及び第3項の政令で定める労働者の数は、次の各号に掲げる仕事の区分に応じ、当該各号に定める数とする。

 ずい道等の建設の仕事、橋梁の建設の仕事(作業場所が狭いこと等により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所として厚生労働省令で定める場所において行われるものに限る。)又は圧気工法による作業を行う仕事 常時30人

 前号に掲げる仕事以外の仕事 常時50人

この①及び②によって除外される部分を青色にして、図に表すと次のようになる。

すなわち、店社安全衛生管理者の選任を要しないのは、それぞれの仕事ごとに、労働者数が、次図の青い部分となる。

店社安全衛生管理者の選任義務

図をクリックすると拡大します

そして、令第7条第2項第1号の“橋梁の建設の仕事”は安衛則第18条の2に規定がある。

【労働安全衛生規則】

(令第七条第二項第一号の厚生労働省令で定める場所)

第18条の2 令第7条第2項第一号の厚生労働省令で定める場所は、人口が集中している地域内における道路上若しくは道路に隣接した場所又は鉄道の軌道上若しくは軌道に隣接した場所とする。

従って、「人口が集中している地域内における道路上若しくは道路に隣接した場所又は鉄道の軌道上若しくは軌道に隣接した場所において行われる橋梁の建設の仕事」については、その労働者及び関係請負人の労働者の数が常時20人以上30 人未満であるものを行うときは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、店社安全衛生管理者を選任しなければならない。

(2)正しい。本肢は、安衛則第18条の5の条文のままである。ただ、同条の規定を知らなかったとしても、店社安全衛生管理者に限らず、安衛法令で選任が義務付けられるすべての管理者について、選任だけして権限を与えなければ意味はないと分かれば正答できる。

【労働安全衛生規則】

(権限の付与)

第18条の5 事業者は、元方安全衛生管理者に対し、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため必要な措置をなし得る権限を与えなければならない。

(3)誤り。安衛法第15条の3は、「元方事業者は、(略)その労働者及び関係請負人の労働者(略)の作業が同一の場所で行われることによって生ずる労働災害を防止するため、店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における第30条第1項各号の事項を担当する者に対する指導その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない」と規定し、元方事業者が店社安全衛生管理者に行わせなければならない事項を定める。箇条書きにすると。

元方事業者が店社安全衛生管理者に行わせなければならない事項
目的 その労働者及び関係請負人の労働者(略)の作業が同一の場所で行われることによって生ずる労働災害を防止するため
実施事項

① 当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における第30条第1項各号の事項を担当する者に対する指導

② その他厚生労働省令で定める事項

実施事項の②は、安衛則第18条の8に定めがある。

【労働安全衛生規則】

(店社安全衛生管理者の職務)

第18条の8 法第15条の3第1項及び第2項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

 少なくとも毎月一回法第15条の3第1項又は第2項の労働者が作業を行う場所を巡視すること。

 法第15条の3第1項又は第2項の労働者の作業の種類その他作業の実施の状況を把握すること。

 法第30条第1項第1号の協議組織の会議に随時参加すること。

 法第30条第1項第5号の計画に関し同号の措置が講ぜられていることについて確認すること。

すなわち、「作業を行う場所において設置する協議組織の会議に随時参加させること」はあるが、「作業場所における機械、設備等の配置に関する計画の作成」は定められていない。「作業場所における機械、設備等の配置に関する計画の作成」については、安衛法第30条第5項の規定により、特定元方事業者自身が行わなければならない。

従って、本肢は誤りである。

なお、本問が「時参加」となっており、安衛則第18条の8には「時参加」とあるが、出題者はこのことも誤りだとしているわけではないだろうと思う。

(4)正しい。安衛法第16条第2項に本肢と同旨の定めがある。

【労働安全衛生法】

(安全衛生責任者)

第16条 第15条第1項又は第3項の場合において、これらの規定により統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものは、安全衛生責任者を選任し、その者に統括安全衛生責任者との連絡その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

 前項の規定により安全衛生責任者を選任した請負人は、同項の事業者に対し、遅滞なく、その旨を通報しなければならない。

(5)正しい。前肢の解説に挙げた安衛法第16条第1項により、「安全衛生責任者を選任」しなければならない者は、「第15条第1項又は第3項の場合において、これらの規定により統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うもの」である。そして、この「第15条第1項又は第3項の場合」とは、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているものである。

従って、本肢の「安全衛生責任者を選任すべき請負人」には、安衛法第15条第1項の規定が適用される。そして、同項に言う「厚生労働省令で定める事項」は、安衛則第19条に定められている。この第6項に本肢と同旨のことが定められている。

【労働安全衛生規則】

(安全衛生責任者の職務)

第19条 法第16条第1項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

一~五 (略)

 当該請負人がその仕事の一部を他の請負人に請け負わせている場合における当該他の請負人の安全衛生責任者との作業間の連絡及び調整

2017年12月24日執筆 2020年05月09日修正