問2 機械による危険を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
(1)面取り盤を使用する作業において、回転する刃物に作業中の労働者の手が巻き込まれるおそれがあったので、手袋を使用させなかった。
(2)機械の構造上労働者に危険を及ぼすおそれがなかったので、機械の刃部のそうじの作業を行うときに機械の運転を停止しなかった。
(3)運転中の機械の刃部の切粉払いをするときに労働者にブラシを使用させた。
(4)前日の作業から研削といしを取り替えていなかったので、当日の作業を開始する前の試運転はしなかった。
(5)加工物等が欠損して飛来することにより労働者に危険を及ぼすおそれがあったが、覆い又は囲いを設けることが作業の性質上困難だったので、労働者に保護具を使用させた。
このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2015年度(平成27年度) | 問02 | 難易度 | 機械による危険の防止措置に関するごく初歩的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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機械による危険 | 1 |
問2 機械による危険を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
(1)面取り盤を使用する作業において、回転する刃物に作業中の労働者の手が巻き込まれるおそれがあったので、手袋を使用させなかった。
(2)機械の構造上労働者に危険を及ぼすおそれがなかったので、機械の刃部のそうじの作業を行うときに機械の運転を停止しなかった。
(3)運転中の機械の刃部の切粉払いをするときに労働者にブラシを使用させた。
(4)前日の作業から研削といしを取り替えていなかったので、当日の作業を開始する前の試運転はしなかった。
(5)加工物等が欠損して飛来することにより労働者に危険を及ぼすおそれがあったが、覆い又は囲いを設けることが作業の性質上困難だったので、労働者に保護具を使用させた。
正答(4)
【解説】
本問はいわゆる知識問題のうち「条文問題」と呼ばれるものであるが、すべての条文を知らなくても、研削といしは毎日作業前に試運転をしなければならないと分かっていれば正答に達することができる問題である。
(1)違反とはならない。安衛則第111条第1項に、「事業者は、ボール盤、面取り盤等の回転する刃物に作業中の労働者の手が巻き込まれるおそれのあるときは、当該労働者に手袋を使用させてはならない」とある。この条文の内容は覚えておく必要がある。
なお、この年に受験された方で、労働者の手が巻き込まれるおそれがあるなら、巻き込まれないような対策をとるべきであり、「手袋を使用させない」というのは、巻き込まれることを前提としているから、誤りだろうと推測された方がおられたようだ。確かに、そのような考え方は感覚的には正しい。しかし、意外に思われるかもしれないが“労働者の手が巻き込まれるおそれがある”ときは巻き込まれないように対策をせよという安衛法令の規定はないのである。
本条文は、実際に手袋をしていて巻き込まれて重大な災害となるケースが過去に頻発したために定められたものである。
【労働安全衛生規則】
(手袋の使用禁止)
第111条 事業者は、ボール盤、面取り盤等の回転する刃物に作業中の労働者の手が巻き込まれるおそれのあるときは、当該労働者に手袋を使用させてはならない。
2 (略)
(2)違反とはならない。安衛則第108条第1項に、「事業者は、機械の刃部のそうじ、検査、修理、取替え又は調整の作業を行なうときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の構造上労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない」とある。
なお、本肢は条文問題であるが、条文を知らなかったとしても、本条の作業が遠隔操作によって行われるような場合には、機械を止める必要がないと気付けば、少なくとも違反にならないケースがあるということは分かるだろう。そして(条文通りとはいえ)「労働者に危険を及ぼすおそれがなかった」と、書いてあるのだから、違反になるわけがないと推測することができる。違反になるとすれば、法律の欠陥であろう。そんな問題が厚労省の主催する試験に出るわけがないのである。
もちろん、実務においては「労働者に危険を及ぼすおそれがなかった」という認識が正しいかどうかを問題にすべきだが、試験ではそこまで考える必要はない。
【労働安全衛生規則】
(刃部のそうじ等の場合の運転停止等)
第108条 事業者は、機械の刃部のそうじ、検査、修理、取替え又は調整の作業を行なうときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の構造上労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。
2 (以下略)
(3)違反とはならない。安衛則第108条第3項に、「事業者は、運転中の機械の刃部において切粉払いをし、又は切削剤を使用するときは、労働者にブラシその他の適当な用具を使用させなければならない」とある。
【労働安全衛生規則】
(刃部のそうじ等の場合の運転停止等)
第108条 (第1項及び第2項 略)
3 事業者は、運転中の機械の刃部において切粉払いをし、又は切削剤を使用するときは、労働者にブラシその他の適当な用具を使用させなければならない。
4 (略)
(4)違反となる。安衛則第118条に「事業者は、研削といしについては、その日の作業を開始する前には一分間以上、研削といしを取り替えたときには三分間以上試運転をしなければならない」とある。本肢は「前日の作業から研削といしを取り替えていなかった」とあるので、1分間以上、その日の作業を開始する前に試運転をしなければならない。本肢は違反となる。
なお、この条文の内容は覚えておかなければならない。
【労働安全衛生規則】
(研削といしの試運転)
第118条 事業者は、研削といしについては、その日の作業を開始する前には一分間以上、研削といしを取り替えたときには三分間以上試運転をしなければならない。
(5)違反とはならない。安衛則第105条第1号に「事業者は、加工物等が切断し、又は欠損して飛来することにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、当該加工物等を飛散させる機械に覆い又は囲いを設けなければならない。ただし、覆い又は囲いを設けることが作業の性質上困難な場合において、労働者に保護具を使用させたときは、この限りでない」とある。
【労働安全衛生規則】
(加工物等の飛来による危険の防止)
第105条 事業者は、加工物等が切断し、又は欠損して飛来することにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、当該加工物等を飛散させる機械に覆い又は囲いを設けなければならない。ただし、覆い又は囲いを設けることが作業の性質上困難な場合において、労働者に保護具を使用させたときは、この限りでない。
2 (略)