労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全一般 問29

リスクアセスメント指針




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問29 難易度 リスクアセスメント指針に関する基本的な問題。高度な内容も含むが確実に正答しなければならない。
リスクアセスメント指針

問29 厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に基づき、事業者が行うべき事項に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

(1)工学的対策には、立入禁止措置及び警報の運用が含まれる。

(2)リスクの見積りには、負傷又は疾病の重篤度とその可能性の度合とをマトリクスによって表すことが含まれる。

(3)機械の安全機能の信頼性及び維持能力に関して考慮すべき事項には、安全装置等の使用者の訓練状況は含まれない。

(4)リスクの重篤度は、過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度で見積もる。

(5)機械設備等に係る調査等の実施対象には、電気設備は含まれない。

正答(2)

【解説】

本問は、正答の(2)がかなり意味不明な文章であるが、他が明らかに誤っているので、正答できるのではないかと思うが、問題としてやや不適切ではないかとの印象を受ける。

(1)適切ではない。立入禁止措置及び警報の運用は、管理的対策に含まれる。

なお、試験対策としては、工学的対策とは「ハザードはなくさないが、機械設備によって安全対策を行う」ことであり、管理的対策とは「労働者自身に安全な行動をとらせるための対策」だと考えればよい。従って、立入禁止措置及び警報の運用は管理的対策となる。

(2)試験協会は本肢を適切であるとしている。しかし、本肢は、日本語としてかなり意味の不明な文章である。

① 「(負傷又は疾病の)可能性の度合」とはなんだろうか。普通に考えれば、“ある人がある負傷又は疾病になっている可能性”としか思えないのではないだろうか。

② 「負傷又は疾病の重篤度」と「(負傷又は疾病の)可能性の度合」を「マトリクスによって表す」とは、いったいどういう意味であろうか。

③ また、重篤度と可能性の度合いを表して、なぜリスクが分かるのかが記されていない。意味不明な文章というよりほかはない。

しかし、試験協会の公表した正答はこれということになっている。本肢が正しいとするには、「リスクの見積り <の方法> には、負傷又は疾病の重篤度とその <発生する> 可能性の度合 <から、リスクの程度を> とをマトリクスによって <評価する> 表すことが含まれる」(※)とでもすべきであろう。

※ 引用文中、引用者による挿入を<  >で表し、原文の一部を二重線で削除した。

(3)適切ではない。厚労省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針 同解説」によれば、危険性又は有害性等の調査等に関する指針の9の(3)の考慮すべき事項のア「安全装置の設置、立入禁止措置その他の労働災害防止のための機能又は方策(以下「安全機能等」という。)の信頼性及び維持能力」に関して考慮すべき事項として「使用者の訓練状況等」が記載されている。

(4)適切ではない。「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」の9の(2)のイには、「過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重篤度を見積もること」とある。

(5)適切ではない。平成18年3月10日基発第0310001号「危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」には、4の(6)に「指針の4(1)オの「機械設備等」の「等」には、電気設備が含まれること」と明記されている。

そもそも、電気設備がリスクアセスメントの対象にならないわけがないであろう。

2018年10月27日執筆 2020年05月14日修正