労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全一般 問26

労働衛生対策




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問26 難易度 労働衛生管理に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない問題である。
労働衛生管理

問26 労働衛生対策に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)作業環境管理には、作業時間を短縮することが含まれる。

(2)作業環境測定の結果の評価は、作業環境管理による良好な作業環境の実現に活用される。

(3)作業管理には、保護具を適正に用いて有害物のばく露量を低減することが含まれる。

(4)作業管理には、作業方法の変更などにより作業の負荷、姿勢などによる身体への悪影響を低減することが含まれる。

(5)健康管理には、健康診断により職業性疾病を早期に発見し、労働者の健康障害を未然に防ぐことが含まれる。

正答(1)

【解説】

労働衛生の分野では、伝統的に、労働衛生管理を作業管理、作業環境管理及び健康管理の3管理に分類する考え方がある。しかし、労働衛生管理について学び始めたばかりだと、その違いが分かりにくいのではないかと思う。実際に、この3つの違いを、正しくかつ分かりやすく説明している参考書というものを見たことがない。

受験テクニックとしては、次のように覚えるとよいだろう。

【受験テクニック】

①  作業環境管理 : 音や電磁波のような物体ではないものを含めて、人がいなくても存在している“モノ”を管理する。
②  作業管理 : 作業者の体内に存在する“モノ”ではないが、作業者が存在して初めて意味を持つ“モノ”を管理する
③  健康管理 : 作業者の体内の“もの”あるいは“現象”を管理する。

ただ、実際には、この“テクニック”だけで簡単に区別できるようなものではない。個々のケースについて覚えていくしかない。例えば、“個人用保護具の使用”は、どうだろう。個人用保護具は、作業者の体内に存在しているものではなく、体外に存在してはいるが、作業者がいなければ意味がないので、作業管理となる。

迷いそうなもので重要なものとしては、個人ばく露測定と生物学的モニタリングがある。この2つは、作業者のばく露の程度を調べるための指標である。これらは(受験テクニックとして)作業管理に用いる手法だと覚えておく。現実には、この2つは作業管理にも作業環境管理にも使えるが、受験時にはそこまで気にする必要はない。ただし、生物学的モニタリングは健康管理には使えないことに留意すること。

なお、作業環境測定は、通常は作業環境管理に用いられると考えてよいが、作業管理にも使えないわけではない。

(1)誤り。作業時間は人の体の中に存在している“モノ”ではない。そして、作業者が存在してはじめて意味を持つ概念である。作業者がいなければ、作業時間も存在しないからである。従って作業時間の管理は、作業管理になると考えればよい。本肢は誤っている。

(2)正しい。これはとくに問題はないだろう。

(3)正しい。個人用保護具の使用は前述したように作業管理となる。これは覚えておく必要がある。

(4)正しい。作業の負荷、姿勢の管理は、作業管理となる。作業の負荷と作業の姿勢は人の体の中に存在している“モノ”ではない。そして、作業者がいなければ意味を持たない概念である。従って作業管理の対象である。これも覚えるしかない。

(5)正しい。これはとくに問題はないだろう。

2018年10月27日執筆 2020年05月13日修正