労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全一般 問25(別解)

労働災害発生状況




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問25 難易度 労働災害発生状況に関する詳細な知識問題である。かなりの難問と言えるだろう。
労働災害発生状況

問25 厚生労働省が発表している平成26 年における労働災害発生状況などに関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)休業4 日以上の死傷災害の発生状況を事故の型別でみると、転倒災害による被災者数は、小売業、社会福祉施設を含む第三次産業で最も多く、対前年比では増加率が10 %を超えている。

(2)死亡災害の業種別発生状況をみると、建設業、陸上貨物運送事業、製造業の順で多く発生しており、死傷災害では第三次産業、建設業、製造業、陸上貨物運送事業の順で多く発生している。

(3)死亡災害の発生状況を業種別に事故の型別でみると、製造業でははさまれ・巻き込まれ、建設業では墜落・転落、第三次産業では交通事故(道路)が最も多い。

(4)重大災害の発生状況を事故の型別でみると、交通事故が最も多く発生しており、業種別でみると第三次産業での交通事故の発生が最も多い。

(5)休業4 日以上の死傷災害の被災者数は、昭和47 年の労働安全衛生法の制定以降大きく減少してきており、近年は減少傾向が鈍化したものの、減少し続けている。

正答(3)(平成30年の数値では(1)も正答となる。)

【解説】

本問は、第三次産業の災害発生を問うものである。第三次産業の労働災害については、厚生労働省安全課が独自に集計して公表しているデータがあるので本来の解説はそれに従った。しかし、安全課の集計は第三次産業の定義が、通常の定義とは異なっているので、できるだけ本来の定義に併せてこの別解を作成してみた。

なお、本問は平成26年の統計を問うているが、この解説では最新の平成30年(2018年)の数値を用いている。(1)の結論が異なっている。

(1)平成30年では正しい(出題時には誤り。)。平成30年と29年の休業4日以上の転倒災害の発生件数は次表のようになっている。第三次産業は、このうち04、05、08、09、10、11、12、13及び16である(17が三次産業かどうかは不明である)。平成30年のこれらの産業の転倒災害の合計は、19,538件(出題時の平成26年は16,031件)と全体の半数を超えており前段は正しい。

一方、平成29年の合計は17,263件(平成25年:15,050件)であり、平成30年の対前年比増加率は約13.2%(平成26年:約6.5%)である。

平成30年 平成29年
01 製造業小計 5,367 5,088
02 鉱業小計 29 26
03 建設業小計 1,616 1,573
04 運輸交通業小計 3,185 2,674
05 貨物取扱小計 375 313
06 農林業小計 412 340
07 畜産・水産業小計 248 219
08 商業 6,523 5,899
09 金融広告業 531 470
10 映画・演劇業 17 11
11 通信業 690 598
12 教育研究 406 363
13 保健衛生業 4,756 4,143
14 接客娯楽 3,027 2,753
15 清掃・と畜 2,244 1,898
16 官公署 28 39
17 その他の事業 2,109 1,903
合計 31,833 28,310

(2)誤り。平成30年の休業4日以上の死傷災害と死亡災害の発生件数は次表のようになっている。なお、労働災害統計で「死傷災害」と言った場合は、休業4日以上の死傷災害であると考えてよい。

死亡災害の業種別発生状況をみると、建設業309件(平成26年:377件)、陸上貨物運送事業(※)102件(平成26年:132件)、製造業183件(平成26年:180件)となっている。

※ 厚生労働省の災害統計の業種区分には、「陸上貨物運送業」という区分は存在していない。「陸上貨物運送業」は厚労省によると「道路貨物運送事業と陸上貨物取扱業の合計値」であるとされている。これらは運輸交通業と貨物取扱業の細分類であり、第三次産業の中に含まれてしまうが、この解説ではこれに従った。

一方、休業4日以上の死傷災害では第三次産業66,719件(平成26年:58,748件)、建設業15,374件(平成26年:17,184件)、製造業27,842件(平成26年:27,452件)、陸上貨物運送事業15,818件(平成26年:14,210件)となっている。

従って、本肢は誤っている。

死傷災害 死亡災害
01 製造業小計 27,842 183
02 鉱業小計 214 2
03 建設業小計 15,374 309
04 運輸交通業小計 17,783 112
05 貨物取扱小計 1,772 10
06 農林業小計 2,764 44
07 畜産・水産業小計 1,572 6
08 商業 19,744 78
09 金融広告業 1,304 4
10 映画・演劇業 84 1
11 通信業 2,523 5
12 教育研究 1,090 7
13 保健衛生業 13,208 13
14 接客娯楽 9,110 7
15 清掃・と畜 6,450 49
16 官公署 101 2
17 その他の事業 6,439 64
合計 127,329 909

(3)正しい。死亡災害の発生状況を業種別に事故の型別でみると、製造業は全体の183件(平成26年:180件)のうちはさまれ・巻き込まれが48件(平成26年:64件)、墜落・転落が29件(平成26年:26件)、激突されが15件(平成26年:18件)となっている。建設業では全体の309件(平成26年:377件)のうち墜落・転落が136件(平成26年:148件)、交通事故(道路)が31件(平成26年:45件)、はさまれ・巻き込まれが30件(平成26年:38件)となっている。第三次産業では全体の239件(平成26年:203件)のうち交通事故(道路)が102件(平成26年:142件)である。

(4)誤り。労働災害にいう“重大災害”とは、「不休も含む一度に3人以上の労働者が業務上死傷又はり病した災害である」と厚労省のWEBサイトに明記されている。すなわち、1つの事故で3人以上の労働者が不休災害になったとしても定義上は“重大災害”になる。しかし、現実には救急箱災害のような災害についての統計をとることは不可能であり、実際の統計上の件数から外れてしまうことになる。そのため、重大災害の“3人”には不休災害は含まないと説明している文献もある。

また、厚労省の災害発生件数の公表値は、死亡災害と重大災害で、業種と型別の区分(まとめ方)が異なっている。コンサルタント試験の受験に当たっては、割り切って厚労省が公表した区分で考えるしかない。

重大災害発生件数は平成28年以降は公表されなくなったが、平成27年に公表された数値は278件(平成26年:292件)となっており、型別でみると132件(平成26年:147件)が交通事故、54件が中毒薬傷(平成26年:50件)である。また、交通事故による重大災害を業種別にみると建設業63件(平成26年:83件)、製造業11件(平成26年:11件)、それ以外が42件(平成26年:53件)で、第三次産業はこの42件の一部であるから建設業よりも少ない。

平成28年以降に公表されなくなった理由は明らかではないが、行政が把握している数値は実態を正確に反映していないと考えられたのかもしれない。

(5)誤り。休業4 日以上の死傷災害の被災者数は、昭和47 年の労働安全衛生法の制定以降大きく減少してきていることは事実である。しかし、2001年には前年を上回っており、2003年、2006年、2010年、2011年、2112年、2014年、2016年、2017年、2018年、2020年も前年を上回っている。

2018年10月27日執筆 2020年05月13日修正