労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全一般 問20

燃焼又は爆発による災害の防止




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問20 難易度 燃焼又は爆発に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
燃焼又は爆発

問20 燃焼又は爆発に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)可燃性ガスの空気中の濃度が爆発上限界以上であれば、空気との混合ガスは爆発する。

(2)爆発範囲は可燃性ガスが空気中で爆発する濃度範囲であるため、常温で液体である引火性液体には爆発範囲がない。

(3)最小着火エネルギーとは、可燃性固体が自然に発火を開始するために必要なエネルギーである。

(4)発火点とは、可燃性物質を空気中で外部から加熱するとき、自然に発火を起こす最低温度である。

(5)自己加速分解温度は、爆発性物質が断熱下で分解した場合に到達する最高温度である。

正答(4)

【解説】

(1)誤り。可燃性ガスの空気中の濃度が、爆発下限から爆発上限界の間にあれば、その可燃性ガスは爆発するおそれがある。濃度が爆発上限界以上になると、かえって爆発の可能性はなくなる。

(2)誤り。引火性液体であっても、その蒸気について爆発限界が定まる。例えばアセトンは下限が3.0mol%、上限が11mol%であり、メタノールは下限が7.3 mol%、上限が36 mol%などとなっている。

(3)誤り。出題の意図が不明瞭ではあるが、「最小着火エネルギー」とは、可燃性のガス、蒸気、粉塵等が着火するのに必要な最小のエネルギーである。可燃性固体の場合、火炎による着火までの時間や、引火点が問題となる。最小着火エネルギーは問題とならない。

(4)正しい。中川(※)によると、「発火点とは可燃性物質を酸化剤存在下で加熱したとき、火花や火炎を接触させなくても自然に燃焼または爆発を起こす最低温度」とされている。

※ 中川登「発火点測定法」(安全工学 Vo1.12 No.3 1973年)

本肢の「自然に」の意味も不明だが、「火花や火炎を接触させなくても自然に」という趣旨であろう。発火するまで温度を上げておきながら「自然に」もないと思うが、誤りとまでは言えないであろう。なお、発火点は、本肢がいうように「空気中」に限られるわけではない。

また、本肢に「外部から加熱するとき」とあるのは、ASTM E 659 に定められている発火点の試験方法(※)が念頭にあったものであろう。

※ 大谷英雄「化学物質の安全性解析(発火危険性)」(安全工学 Vo1.31 No.6 1992年)を参照されたい。

(5)誤り。自己加速分解温度とは、密閉状態で物質に自己加速分解が起こる最低温度のことである。なお、自己加速分解とは、自らが分解して発生した熱で、自らを分解し、その分解によってさらに熱が発生して、分解が加速度的に進む現象をいう。

2018年10月27日執筆 2024年06月22日一部追記