労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全一般 問07

産業用ロボットの安全




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問07 難易度 産業用ロボットの安全に関するごく基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
産業用ロボットの安全

問7 産業用ロボットの安全に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)産業用ロボットを使用する際の安全対策の一つとして、柵によって人間の作業領域とロボットの可動範囲を分離した。

(2)作業者が通常に運転している産業用ロボットの可動範囲に入る際に、ロボットを停止させた。

(3)産業用ロボットの教示のために、可動範囲内部で作業者が産業用ロボットを操作するときに、マニプレータの作動速度が自動的に低下するようにした。

(4)産業用ロボットの教示のために、可動範囲内部で作業者が産業用ロボットを操作するときに、イネーブルスイッチを有する固定型操作盤を使用した。

(5)産業用ロボットの教示のために、作業者が可動範囲にいるときに、他者がロボットを操作できないような措置を講じた。

正答(4)

【解説】

(1)適切である。安衛則第150条の4に「産業用ロボットに接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない」とあり、本肢は適切でないとはいえない。

【労働安全衛生規則】

(運転中の危険の防止)

第150条の4 事業者は、産業用ロボツトを運転する場合(教示等のために産業用ロボツトを運転する場合及び産業用ロボツトの運転中に次条に規定する作業を行わなければならない場合において産業用ロボツトを運転するときを除く。)において、当該産業用ロボツトに接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない。

(2)適切である。安衛則第150条の5に、「事業者は、産業用ロボットの可動範囲内において(中略)作業を行うときは、当該産業用ロボットの運転を停止するとともに(後略)」とあり、本肢は適切でないとはいえない。

【労働安全衛生規則】

(検査等)

第150条の5 事業者は、産業用ロボツトの可動範囲内において当該産業用ロボツトの検査、修理、調整(教示等に該当するものを除く。)、掃除若しくは給油又はこれらの結果の確認の作業を行うときは、当該産業用ロボツトの運転を停止するとともに、当該作業を行つている間当該産業用ロボツトの起動スイツチに錠をかけ、当該産業用ロボツトの起動スイツチに作業中である旨を表示する等当該作業に従事している労働者以外の者が当該起動スイツチを操作することを防止するための措置を講じなければならない。ただし、産業用ロボツトの運転中に作業を行わなければならない場合において、当該産業用ロボツトの不意の作動による危険又は当該産業用ロボツトの誤操作による危険を防止するため、次の措置を講じたときは、この限りでない。

一~三 (略)

(3)適切である。産業用ロボットの使用等の安全基準に関する技術上の指針(昭和58年9月1日技術上の指針公示第13号=以下本条の解説において「指針」という。)の2-1-2の(1)イに「運転状態を教示の状態に切り替えた場合に、マニプレータの作動速度が自動的に低下すること」とあり、本肢は適切でないとはいえない。

(4)適切ではない。イネーブルスイッチとは、捜査者が手を離したり、強く握ったりすると、機械が非常停止するようになっているスイッチのことである。そして、指針には、可搬型操作盤の要件として、「教示運転の状態において使用するマニプレータを作動させるためのスイッチは、当該スイッチから手を離した場合に、自動的に当該産業用ロボットが運転を停止する構造のものであること」とされている。「固定型操作盤」を「可搬型操作盤」とすれば適切な内容となる。本肢は適切ではない。

なお、これは受験者をひっかけるための問題なのかもしれない。イネーブルスイッチを有する「固定型操作盤」などあり得ないし、また産業用ロボットの稼働範囲内に「固定型操作盤」があるはずもない。あまりにもわかりきったことなので、これを「可搬型操作盤」と読み間違えて「適切だ」と思い込んでしまうおそれがあるのである。本問は、勘違いをしなければ簡単すぎる問題である。勘違いをねらったとしか思えない。試験問題として適切なのだろうかという気はするが、受験者としてはひっかからないよう十分に注意する必要がある。

(5)適切である。指針には可搬型操作盤の要件として、「可搬型操作盤により産業用ロボットを操作している間は、当該操作盤以外の機器により当該作業用ロボットの操作(非常停止装置の操作を除く。)を行うことができない構造のものであること」とある。やや疑問はあるが、(4)にひっかかった受験者はこれを正答としたのではなかろうか。しかし、本肢は、適切でないとはいえないであろう。

2018年10月27日執筆 2020年05月10日修正