問6 運搬機械、用具などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)積載形トラッククレーンの安定度は荷台の積荷が少なくなると低下するので、多量の積荷がある場合、作業半径が順次小さくなるように、荷台後方の荷から降ろすことが推奨される。
(2)「ラングより」のワイヤロープは、「普通より」のワイヤロープと比べて、キンクしにくく、取扱いが容易であるが、耐磨耗性及び耐疲労性が劣る。
(3)フォークリフトのマストは、後傾角の方が前傾角より大きくとることができるようになっている。
(4)エレベーターの非常止め装置は、一般に、「次第ぎき」のものであるが速度が遅い場合には、「早ぎき」のものを用いてもよい。
(5)移動式クレーンで用いる玉掛け用ワイヤロープの安全係数は、巻上げ用・ジブ起伏用ワイヤロープの安全係数よりも大きくする。
このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2015年度(平成27年度) | 問06 | 難易度 | 運搬機械、用具などに関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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運搬機械、用具など | 3 |
問6 運搬機械、用具などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)積載形トラッククレーンの安定度は荷台の積荷が少なくなると低下するので、多量の積荷がある場合、作業半径が順次小さくなるように、荷台後方の荷から降ろすことが推奨される。
(2)「ラングより」のワイヤロープは、「普通より」のワイヤロープと比べて、キンクしにくく、取扱いが容易であるが、耐磨耗性及び耐疲労性が劣る。
(3)フォークリフトのマストは、後傾角の方が前傾角より大きくとることができるようになっている。
(4)エレベーターの非常止め装置は、一般に、「次第ぎき」のものであるが速度が遅い場合には、「早ぎき」のものを用いてもよい。
(5)移動式クレーンで用いる玉掛け用ワイヤロープの安全係数は、巻上げ用・ジブ起伏用ワイヤロープの安全係数よりも大きくする。
正答(2)
【解説】
(1)適切である。積載型トラッククレーン固有の用語として「空車時定格総荷重」という言葉があるが、積載型トラッククレーンは荷台に荷があった方が安定するのである。このことは覚えておいた方が良い。
そして、積載型トラッククレーンの左側から荷を下ろすときは、荷は右側にあった方が安定するので左側から先に降ろすようにし、また作業半径が小さい方が安定するので後方から降ろすようにする。
(2)適切ではない。ワイヤロープには、ロープの“より方向”とストランドの“より方向”とが反対の「普通より」と、ロープの“より方向”とストランドの“より方向”とが同じ「ラングより」がある。指定がなければ、「普通より」が用いられる。
「普通より」は素線が表面に出ている部分が短く、がっしりと組まれているので、硬くて曲げにくくなる。そのため、耐摩耗性も「ラングより」に比べると劣る。しかし、ロープの自転性が小さく、キンクが生じにくい
本肢は「普通より」についての記述であり、適切ではない。
※ 図は厚生労働省技能講習用補助教材「玉掛け技能講習補助テキスト(日本語)」より
(3)適切である。フォークリフトは走行中の荷の安定をよくするため、フォークを下ろした状態で後傾させて走行する。このため後傾角を大きくとれるようになっている。一方、前傾角は大きくする必要がないので、それほど大きくはとれない構造になっている。
なお、本問は2015年の試験問題であるが、JIS D 6001:1999に、“マスト又はフォーク傾斜角”について「マスト又はフォーク傾斜角は,アタッチメントを取り付けない状態で,表2とすることが望ましい」とされ、表2は次のようになっていた。しかし、JIS D 6001:2016からは削除されているのでご留意頂きたい。
【JIS D 6001:1999 フオークリフトトラック−安全基準】(旧基準)
マスト又はフォーク傾斜角 | 種類 | 前傾角 | 後傾角 |
---|---|---|---|
カウンタバランスフォークリフト | 6 | 12 | |
リーチフォークリフト | 3 | 5 | |
ストラドルフォークリフト | |||
サイドフォークリフト | |||
オーダピッキングトラック | - | - | |
ウォーキーフォークリフト | 3 | 10 |
備考 オーダピッキングトラックはティルト(前傾,後傾)しないため,−とした。
(4)適切である。ロープが切断したときなどのために、エレベーターには非常止め装置を設置するが、速度が45m/minを超えるようなエレベーターを急速に停止させると、過度な衝撃が加わって危険である。そのため、一般には「次第ぎき」のものを用いるが、低速の場合には、「早ぎき」のものを用いる。本肢は正しい。
なお、「エレベーターの制動装置の構造方法を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1423号)には、エレベーターに取り付けるべき装置として、「かごの降下する速度が第二号に掲げる装置が作動すべき速度を超えた場合(中略)において毎分の速度が定格速度に相当する速度の1.4倍(かごの定格速度が45メートル以下のエレベーターにあっては、68メートル)を超えないうちにかごの降下を自動的に制止する装置(かごの定格速度が45メートルを超えるエレベーター又は斜行式エレベーターにあっては次第ぎき非常止め装置、その他のエレベーターにあっては早ぎき非常止め装置又は次第ぎき非常止め装置に限る。ロにおいて同じ。)」を定める。
(5)適切である。移動式クレーンで用いる玉掛け用ワイヤロープと、巻上げ用・ジブ起伏用などのワイヤロープの安全係数は次のように定められている。従って本肢は正しい。
根拠 | 用途 | 安全率 |
---|---|---|
クレーン等安全規則 | 玉掛け用ワイヤロープ | 6以上 |
移動式クレーン構造規格 | 巻上げ用ワイヤロープ及びジブの起伏用ワイヤロープ | 4.5以上 |
ジブの伸縮用ワイヤロープ | 3.55以上 | |
ジブの支持用ワイヤロープ | 3.75以上 |