問5 信頼性工学の故障と修復に関する次の記述のうち、A ~ D に当てはまる語句の適切な組合せは(1)~(5)のうちどれか。
修理が可能な装置において、新品の状態を時刻0 として、ある時刻までに時間に関してランダムに発生する故障(偶発故障)が起こる確率分布を A という。故障の後、装置は直ちにフォールト(機能不能状態)になる。修理を行えばフォールトは修復され、修復がある時刻までに起こる確率分布は、 B や C の場合が多いが、近似的に A として扱われる場合もある。あるフォールトの修復から次の偶発故障までの時間の統計的期待値(平均値)は、 D の逆数に一致する。
A | B | C | D | ||||
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(1) | 正規分布 | 対数正規分布 | 指数分布 | 故障率 | |||
(2) | 指数分布 | 対数正規分布 | ガンマ分布 | 修復率 | |||
(3) | 正規分布 | 指数分布 | ガンマ分布 | 修復率 | |||
(4) | 指数分布 | 正規分布 | 対数正規分布 | 故障率 | |||
(5) | 対数正規分布 | ガンマ分布 | 指数分布 | 故障率 |
このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2015年度(平成27年度) | 問05 | 難易度 | 信頼性工学の故障と修復に関するかなり高度な知識問題である。かなりの難問と言うべきだろう。 |
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信頼性工学の故障と修復 | 5 |
問5 信頼性工学の故障と修復に関する次の記述のうち、A ~ D に当てはまる語句の適切な組合せは(1)~(5)のうちどれか。
修理が可能な装置において、新品の状態を時刻0 として、ある時刻までに時間に関してランダムに発生する故障(偶発故障)が起こる確率分布を A という。故障の後、装置は直ちにフォールト(機能不能状態)になる。修理を行えばフォールトは修復され、修復がある時刻までに起こる確率分布は、 B や C の場合が多いが、近似的に A として扱われる場合もある。あるフォールトの修復から次の偶発故障までの時間の統計的期待値(平均値)は、 D の逆数に一致する。
A B C D
(1)正規分布 対数正規分布 指数分布 故障率
(2)指数分布 対数正規分布 ガンマ分布 修復率
(3)正規分布 指数分布 ガンマ分布 修復率
(4)指数分布 正規分布 対数正規分布 故障率
(5)対数正規分布 ガンマ分布 指数分布 故障率
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正答(4)
【解説】
本問は、きわめてわかりにくい文章である。誤植で途中の文章の一部が抜けているのかもしれないと思えるほどだ。しかし、出題意図を推測して問題を解くとすれば、おそらく次のようなことなのであろう。
故障が「ある時刻までに時間に関してランダムに発生する」のであれば、単位時間内に故障する確率(故障率)λ(t)はtによらず一定となる。従ってt時間以上故障しない確率(故障密度関数)は指数分布となる。従ってAに入る言葉は「指数分布」となる。
【ランダムに発生する故障と故障密度関数】
「時間に関して、ランダムに故障が発生する」というのは、故障の発生が時間によらず(生産した直後は故障しやすいとか、古くなると故障しやすいなどということはなく)、時間によって一定の割合で故障するということである。
そこで、仮想的に、常に1時間に0.1(10%)の確率で故障するシステムを考えよう。
このシステムが最初の1時間で故障する確率は0.1である。
次の1時間(2時間目)で故障する確率は、最初の1時間で故障しない確率0.9に0.1を乗した0.9×0.1になる。
さらに次の1時間で故障する確率は、最初の2時間で故障しない確率0.9の二乗に0.1を乗じた値となる。すなわち、
1時間目で故障 0.1
2時間目で故障 0.9×0.1
3時間目で故障 0.92×0.1
4時間目で故障 0.93×0.1
・
・
n時間目で故障 0.9n×0.1
となり、t時間後に故障する故障密度関数は
0.9t×0.1
であるから、指数関数(指数分布)となる。
次に、BとCであるが、修理(保全)がある時刻tまでに終了する分布としては、対数正規分布が実態によく合うと言われる。しかし、ガンマ分布、正規分布、指数分布なども用いられている。従って、BとCには対数正規分、正規分布、ガンマ分布のいずれでもあてはまる。なお、ガンマ分布よりも正規分布の方がより適切だとは信じがたいが、出題者はそうは思わなかったようだ。
最後にDであるが、システムが修復してから次の故障が起きるまでの時間を「故障間隔」(TBF)と呼び、その平均値を平均故障間隔(MTBF)と呼ぶ。そしてMTBFの逆数が故障率である。従って、Dに入る言葉は「故障率」となる。
従って、本問の正答は(4)となる。
【本問について】
なお、最近の安全コンサルタント試験の「信頼性工学」分野の問題の傾向として、内容にやや首をひねりたくなるものが多いようだ。本問についても、最初のパラグラフは、「修理可能なシステムにおいて、故障が発生する確率が新品のときからの時間によらずランダムに起きるとした場合、ある時間までに故障する確率の分布は A となる」とすれば、分かりやすいだろう。そして、その方が受験生の能力を適切に評価できるのではなかろうか。
せめて、「修理が可能な装置において、故障が発生する確率が、新品の状態からの時間によらずランダムであるとき、ある時刻までに故障(偶発故障)が起こる確率分布を A という」とでもできなかったものだろうか。
なぜ、本問のような意味の分かりにくい文章を用いるのか理解に苦しむところである。