問4 材料に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)炭素鋼では、スパッタ低減やビード外観向上のため、アルゴンガスに少量の炭酸ガスや酸素ガスを混合してシールドするマグ溶接が行われることがある。
(2)金属の疲労破壊は、局所的なすべり(塑性変形)に起因するき裂の発生及びその進展によって起こる。
(3)コンクリート構造物の設計基準強度としては、一般に標準養生供試体の材齢28日の強度を用いる。
(4)鋼のぜい性-延性遷移挙動の指標としては、V -ノッチシャルピー衝撃試験で得られるエネルギー遷移温度と破面遷移温度とがある。
(5)セラミックスは、負荷する引張荷重を増していくと、材料全体が塑性変形し、破断に至る。
このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2015年度(平成27年度) | 問04 | 難易度 | 各種の材料の強度と破壊に関するかなり高度な知識問題である。かなりの難問と言うべきだろう。 |
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各種の材料の強度と破壊 | 5 |
問4 材料に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)炭素鋼では、スパッタ低減やビード外観向上のため、アルゴンガスに少量の炭酸ガスや酸素ガスを混合してシールドするマグ溶接が行われることがある。
(2)金属の疲労破壊は、局所的なすべり(塑性変形)に起因するき裂の発生及びその進展によって起こる。
(3)コンクリート構造物の設計基準強度としては、一般に標準養生供試体の材齢28日の強度を用いる。
(4)鋼のぜい性-延性遷移挙動の指標としては、V -ノッチシャルピー衝撃試験で得られるエネルギー遷移温度と破面遷移温度とがある。
(5)セラミックスは、負荷する引張荷重を増していくと、材料全体が塑性変形し、破断に至る。
正答(5)
【解説】
本問は、建設と機械双方のかなり深い知識がなければ答えられない。他の分野の受験生は、“捨て問”と考えてもよいと思う。
(1)適切である。アーク溶接では、金属を高温で溶融するため、空気中の酸素により酸化するのを防止するとともに、アークそのものも保護する必要がある。被覆溶接では溶接棒を被覆しているフラックスから発生するガスやスラグを利用して溶融池やアークを保護し、シールドガス溶接では不活性なガスによって保護する。
シールドガス溶接には、電極が溶接材になる溶極式と、電極とは別に溶接材が必要な非溶極式とがあり、溶極式式はシールドガスの組成によってマグ溶接(Metal Active Gas Welding)とミグ溶接(Metal Inert Gas Welding)の2種類に分けられる。
マグ溶接のシールドガスは、炭酸ガス、炭酸ガスとアルゴンガスの混合ガス、アルゴンと酸素の混合ガスなどが使用される。主に軟鋼、低合金鋼、SUSなどの、鉄鋼を溶接することに用いられる溶接法である。
(2)適切である。疲労破壊とは、弾性限度内であっても、応力を繰り返して受けることによって、材料が破壊する現象である。
弾性範囲内であっても、材料に不均一な部分があると、そこへ応力が集中して局所的な塑性変形をし、わずかな亀裂が発生することがある。その後、材料に繰返し応力が加わると、その亀裂が核となって、その周辺部に応力が集中して塑性変形が進む。これが繰り返されることにより亀裂が拡大して材料が破壊するのが疲労破壊である。
(3)適切である。建築基準法施行令第74条に基づく建設省告示第1102号(昭和56年)は、安全上必要なコンクリート強度の基準を次のように定めている。なお、Fcは設計基準強度の数値である。
1 現場水中養生供試体の材齢28日圧縮強度の平均値 ≧ Fc
2 コア供試体(または現場封かん養生供試体)の 材齢28日圧縮強度の平均値 ≧ 0.7Fc & 材齢91日圧縮強度の平均値 ≧ Fc
また、土木学会の「コンクリート標準示方書」でも「コンクリートの強度は一般に材令28日における圧縮強度を基準とする」と規定している。これは、フレッシュコンクリートは材令とともに硬化して強度が増すが、一般の構造物では標準養生を行った供試体の材齢28日における強度を上回るような養生方法は期待できないのが実態だからである。
なお、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事」の2009年の改正では、使用するコンクリートの強度については、標準養生供試体の材齢28日の圧縮強度で表し、品質基準強度に構造体強度補正値(標準養生供試体の強度と構造体コンクリート(コア供試体)の強度との差:S値)を加えた調合管理強度以上に変更された。
(4)適切である。Vノッチシャルピー衝撃試験とは、V字溝型の切り欠き(Vノッチ)のある角柱状の試験片に、高速で衝撃を与えて破壊し、破壊に要するエネルギーによって試験片の靭性を評価する試験である。
金属材料のぜい性-延性遷移挙動は、一般にシャルピー衝撃試験法などにおける吸収エネルギー値や破面遷移温度によって評価されている。
なお、シャルピー試験における衝撃特性を、材質判定や脆性破壊の解析に用いるときは、大型試験法や実際の破壊事故材を対比して、経験的な相関を求めることによって行っている。このとき、一定の吸収エネルギー値や最高吸収エネルギーの1/2になる遷移温度、50%破面率遷移温度などが便宜的な基準として用いられている。
(5)適切ではない。セラミクスはヤング率が高く、応力をかけても変形しにくいが弾性変形しないわけではない。また、セラミクスの破壊はクラックの進展によって発生する。