問3 安全委員会に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)安全委員会の議長は、委員会の場では、安全に対する自らの信念、姿勢などを具体的に示すことが望ましい。
(2)安全委員会は、事業場の安全に関する実施機関として、議長自ら安全上の具体的な指示を行う必要がある。
(3)安全委員会の活性化のために、同業他社のヒヤリハット事例を含めて収集分析すること、労働安全コンサルタントを招いて安全委員会の運営に関するアドバイスを受けることなどの工夫を行う。
(4)労働者数が50人未満の場合、労働者の意見を聞くための機会については、安全委員会に準じた開催スケジュールで開催し、調査審議することが望ましい。
(5)事業場全体の安全委員会のほか、職場単位の安全委員会を設け、それらの委員会を有機的に関連付けて効果的に運用することが望ましい。
このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2015年度(平成27年度) | 問03 | 難易度 | 安全委員会の運営と役割に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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安全委員会の運営と役割 | 1 |
問3 安全委員会に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)安全委員会の議長は、委員会の場では、安全に対する自らの信念、姿勢などを具体的に示すことが望ましい。
(2)安全委員会は、事業場の安全に関する実施機関として、議長自ら安全上の具体的な指示を行う必要がある。
(3)安全委員会の活性化のために、同業他社のヒヤリハット事例を含めて収集分析すること、労働安全コンサルタントを招いて安全委員会の運営に関するアドバイスを受けることなどの工夫を行う。
(4)労働者数が50人未満の場合、労働者の意見を聞くための機会については、安全委員会に準じた開催スケジュールで開催し、調査審議することが望ましい。
(5)事業場全体の安全委員会のほか、職場単位の安全委員会を設け、それらの委員会を有機的に関連付けて効果的に運用することが望ましい。
正答(2)
【解説】
本肢は(2)以外は、望ましい、工夫を行うなどとなっており、内容を見ても問題となるようなものではない。つまり、不適切だとする余地がないと思えるのである。
従って、知識がなかったとしても、(2)の「必要がある」と、言葉を変えれば「義務がある」と言い切っているものが怪しいと分かるであろう。
(1)適切である。安全委員会の議長は、安衛法第17条第3項の規定により「総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者」がなる。一方、労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針第5条では、「事業者は、安全衛生方針を表明し、労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させる」とされている。
(2)適切ではない。安衛法第17条第1項は「事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない」としている。
すなわち、安全委員会は、事業場の安全に関する調査審議機関として位置付けられたものである。議長自ら安全上の具体的な指示を行うことは、必ずしも禁止されているわけではないが、義務付けられているわけではない。従って「必要は」ない。
【労働安全衛生法】
(安全委員会)
第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。
一 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること。
二 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること。
三 前二号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止に関する重要事項
2 (以下略)
(3)適切である。安衛法第17条第1項により、安全委員会は「労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること」を調査審議するべきこととされている。そして、同業他社のヒヤリハット事例を含めて収集分析すること調査審議することは望ましいことである。また、内部に専門的な知識を有する者がいなければ外部の労働安全コンサルタントを招いてアドバイスを受けることも望ましいことである。
なお、外部の労働安全コンサルタントを安全委員会の委員とすることができないことは当然である。
(4)適切である。安衛則第23条の2は、「委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない」とされている。
ここで、「関係労働者の意見を聴くための機会を設ける」とは、安全衛生の委員会、労働者の常会、職場懇談会等労働者の意見を聴くための措置を講じることをいうものであること(昭和47年9月18日基発第601号の1)とされているが、開催の頻度についての解釈等は示されていない。
安全管理のために必要な頻度で開催するべきであるが、より上位の規定である安全委員会に準じた開催スケジュールで開催し、調査審議することが望ましくないとはいえない。
【労働安全衛生規則】
(関係労働者の意見の聴取)
第23条の2 委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない。
(5)適切である。安衛法上の安全委員会とは、法定の構成委員によって事業場全体について1つだけ設置するものである。職場単位に安全に関する委員会を設けたとしても、それは法律上の安全委員会とはいえない。そのため、本肢について適切ではないのではないかと感じた受験生もいたと思う。
しかし、事業場全体として法定の委員会を設けさえすれば、職場単位に安全に関する委員会を設けて、その委員会に“安全委員会”という名称を付したとしても、そのことが法違反になったりはしない。むしろ、委員会を設けることそれ自体は、望ましいことだといえよう。従って、本肢は不適切とはいえない。