問1 安全管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)常時100 人の労働者を使用する有機化学工業製品製造業の事業場では、安全に係る技術的事項を管理する安全管理者のうち少なくとも1人を専任の安全管理者としなければならない。
(2)都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、安全管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる。
(3)総括安全衛生管理者は、事業場においてその事業の実施を統括管理する者に準ずる者を充てることができる。
(4)事業者は、労働安全コンサルタントのうちから安全衛生推進者を選任するときは、その事業場に専属の者を選任しなければならない。
(5)総括安全衛生管理者が統括管理する業務には、危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関することが含まれる。
このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2014年度(平成26年度) | 問01 | 難易度 | 安全衛生管理体制は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。 |
---|---|---|---|
安全衛生管理体制 | 2 |
問1 安全管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)常時100 人の労働者を使用する有機化学工業製品製造業の事業場では、安全に係る技術的事項を管理する安全管理者のうち少なくとも1人を専任の安全管理者としなければならない。
(2)都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、安全管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる。
(3)総括安全衛生管理者は、事業場においてその事業の実施を統括管理する者に準ずる者を充てることができる。
(4)事業者は、労働安全コンサルタントのうちから安全衛生推進者を選任するときは、その事業場に専属の者を選任しなければならない。
(5)総括安全衛生管理者が統括管理する業務には、危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関することが含まれる。
正答(5)
【解説】
(1)誤り。安衛法第11条は「事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し・・・(略)・・・なければならない」と定める。
そして、安衛則第4条第1項は「法第11条第1項の規定による安全管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない」とし、その第4号で「次の表の中欄に掲げる業種に応じて、常時同表の下欄に掲げる数以上の労働者を使用する事業場にあっては、その事業場全体について法第10条第1項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理する安全管理者のうち少なくとも一人を専任の安全管理者とすること」とする。
その表は、有機化学工業製品製造業にあっては300人以上の労働者を使用する事業場で、少なくとも1人を専任の安全管理者としなければならないとしている。
【労働安全衛生法】
(安全管理者)
第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 (略)
【労働安全衛生規則】
(安全管理者の選任)
第4条 法第十一条第一項の規定による安全管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一~三 (略)
四 次の表の中欄に掲げる業種に応じて、常時同表の下欄に掲げる数以上の労働者を使用する事業場にあつては、その事業場全体について法第十条第一項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理する安全管理者のうち少なくとも一人を専任の安全管理者とすること。ただし、同表四の項の業種にあつては、過去三年間の労働災害による休業一日以上の死傷者数の合計が百人を超える事業場に限る。
一 | 建設業 | 三百人 |
有機化学工業製品製造業 | ||
石油製品製造業 | ||
二 | 無機化学工業製品製造業 | 五百人 |
化学肥料製造業 | ||
道路貨物運送業 | ||
港湾運送業 | ||
三 | 紙・パルプ製造業 | 千人 |
鉄鋼業 | ||
造船業 | ||
四 | 令第二条第一号及び第二号に掲げる業種(一の項から三の項までに掲げる業種を除く。) | 二千人 |
2 (略)
(2)誤り。安衛法第10条は、都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができるとされ、これは同第15条第5項により統括安全衛生責任者の業務の執行について準用されている。しかし、安全管理者に対してこのような規定はない。
実質的に考えても、安全管理者は上司の指示命令を受けて業務を行っているのであるから、安全管理者の業務に就いて勧告する必要などないだろう。トップ(総括安全衛生管理者)の業務について勧告すれば充分なのである。都道府県労働局長ともあろう者が、事業場の安全管理者の業務のことなどに口をはさんだりするはずがないのである。
【労働安全衛生法】
(総括安全衛生管理者)
第10条 (第1項及び第2項 略)
3 都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる。
(統括安全衛生責任者)
第15条 (第1項~第4項 略)
5 第十条第三項の規定は、統括安全衛生責任者の業務の執行について準用する。この場合において、同項中「事業者」とあるのは、「当該統括安全衛生責任者を選任した事業者」と読み替えるものとする。
(3)誤り。安衛法第10条第2項により、総括安全衛生管理者は、事業場においてその事業の実施を統括管理する者を充てなければならない。準ずる者では足りない。
安全衛生委員会、安全委員会などの議長と混同しないこと。
【労働安全衛生法】
(総括安全衛生管理者)
第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
一~五 (略)
2 総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければならない。
3 (略)
(4)誤り。安衛法第12条の3第1項第2号の規定により、原則として事業者は安全衛生推進者を選任するときは、その事業場に専属の者を選任しなければならない。しかし、労働安全コンサルタントのうちから選ぶときはこの限りではない。
【労働安全衛生規則】
(安全衛生推進者等の選任)
第12条の3 法第十二条の二の規定による安全衛生推進者又は衛生推進者(以下「安全衛生推進者等」という。)の選任は、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者その他法第十条第一項各号の業務(衛生推進者にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当するため必要な能力を有すると認められる者のうちから、次に定めるところにより行わなければならない。
一 (略)
二 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントその他厚生労働大臣が定める者のうちから選任するときは、この限りでない。
2 (略)
(5)正しい。総括安全衛生管理者が統括管理する業務は、安衛法第10条第1項に定められているが、その第五号によって厚生労働省令(安衛則)に委任されており、これを受けて安衛則第3条第2号が「危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること」を定めている。
【労働安全衛生法】
(総括安全衛生管理者)
第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
一~四 (略)
五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの
2及び3 (略)
【労働安全衛生規則】
(総括安全衛生管理者が統括管理する業務)
第3条の2 法第十条第一項第五号の厚生労働省令で定める業務は、次のとおりとする。
一 (略)
二 法第二十八条の二第一項又は第五十七条の三第一項及び第二項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
三 (略)