労働安全コンサルタント試験 2014年 産業安全一般 問22

感電災害及びその防止




問題文
トップ
合格

 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2014年度(平成26年度) 問22 難易度 感電災害に関する基本的な知識問題。若干のひねりのある問題だが、正答できなければならない。
感電災害及びその防止

問22 感電災害及びその防止に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

(1)20 mA の交流電流が 1 秒間人体を流れると心室細動を発症し、適切な処置が遅れると死に至る。

(2)ヒトの身体の電気抵抗値は、測定する皮膚の部位2箇所間の距離に比例する。

(3)交流アーク溶接機用自動電撃防止装置は、アークの発生が停止したときに入力側の電圧を下げて感電を防止するものである。

(4)絶縁用防具は、感電による災害を防止するために、身体に装着して使用するものである。

(5)電線管は、その内部に電線等を収めて、外からの損傷等に対して保護するもので、その材質は導電性を有するものでもよい。

正答(5)

【解説】

本問は、やや意地の悪い問題といえる。法令に詳しいと、逆に誤答する可能性があるのだ。

(1)誤り。職場のあんぜんサイトの安全衛生キーワード「感電」のページの表には心室細動電流は50mAと記されている。また、IECの「TECHNICAL SPECIFICATION」に示された交流の感電危険性に関する図1)でも20mAでは死亡する危険性があるとはされていない。

(2)誤り。ヒトの身体の電気抵抗値は、内部抵抗と皮膚の接触抵抗との和になる。人体の内部抵抗は約500Ωといわれるが、人体にかかる電圧によっても変化し、通常の場合100Vのときは2kΩ程度、1,000Vのときは1kΩ程度だが個人差もある。皮膚等の接触抵抗は、乾燥していると数kΩ程度あるが、濡れているとほぼゼロである。

いずれにせよ皮膚との接触抵抗が大きいので、測定する皮膚の部位2箇所間の距離に比例するなどということはない。

(3)誤り。交流アーク溶接機用自動電撃防止装置は、アークの発生が停止したときに出力側の電圧を下げて感電を防止するものである。入力側の電圧を下げてどうする!

(4)誤り。絶縁用防具とは、活線作業や活線近接作業のとき、作業環境の近くにある接触するおそれのある充電部などに装着する(覆い被す)ものである。絶縁シート、ゴム絶縁管、がいしカバーなどがある。

感電による災害を防止するために、身体に装着して使用するものは、絶縁用保護具である。

(5)正しい。電線管は、その内部に電線等を収めて、外からの損傷等に対して保護するもので、その材質は導電性を有するものでもよい。

なお、建設工事などで、近接している電線などに取り付けて、感電の防止を図るために用いる絶縁用防護具は、絶縁管と呼ばれ、電線管とは呼ばない。これは、7,000V以下で感電防止用に使用可能である。

完全な引っ掛け問題である。なぜなら、建設業界や電力業界では、絶縁管と電線管の区別を明確につけず、7,000V以下の電圧に耐えられる絶縁管についても、電線を守るだけで感電防止の能力はないと労働者に対して教育している実態があるからである。

1)市川健二「感電災害の動向と電撃の危険限界」の図11参照。

2020年06月18日執筆