労働安全コンサルタント試験 2014年 産業安全一般 問16

溶接部欠陥と非破壊試験方法




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 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問16 難易度 溶接部欠陥と非破壊試験方法に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
溶接部欠陥の非破壊試験

問16 突き合わせ溶接部の内部きずを検出するための非破壊試験方法として、正しいもののみの組合せば次のうちどれか。

(1) 磁粉探傷試験 浸透探傷試験
(2) 浸透探傷試験 渦流探傷試験
(3) 渦流探傷試験 放射線透過試験
(4) 放射線透過試験 超音波探傷試験
(5) 超音波探傷試験 磁粉探傷試験

正答(4)

【解説】

1 各種非破壊検査の特徴

ここに挙げられた非破壊検査は、次のようなものである。

● 磁粉探傷試験(MT)

強磁性体である試験片の表面や表面付近の欠陥を検査する試験である。強磁性体でないと検査することはできないが、浸透探傷法と異なり開口していない表面付近の欠陥を検査することが可能である。

強磁性体を磁場の中に置き、鉄粉、着色磁粉、蛍光磁粉などをかけると、欠陥のある部分で磁粉等が一定の模様を描く。これにより、欠陥の存在をを見つけることができる。表面の凹凸と欠陥の見分けがつかない場合は、軽くサンダーがけして、再度検査を行う。

● 浸透探傷試験(カラーチェック)(PI又はPT)

材料表面に開口した欠陥を調べる検査法である。表面に開口した欠陥しか調べられない。材料表面に赤色の浸透液を塗布して、欠陥に浸透させた後に表面の浸透液を拭き取ると欠陥中の浸透液のみが残ることになる。この状態で材料表面に現像液(白色)を塗布すると、浸透液が現像液の中に染み出すので、欠陥のある部分が赤色となり、欠陥の存在を知ることができる。

なお、浸透液として蛍光液を用いる蛍光浸透探傷検査も同じ原理であり、一般に浸透探傷試験よりも高感度であるとされるが、明るい屋外では使用できない。

● 渦流探傷試験(過電流探傷試験)(ET)

交流を流したコイルを試験体に近づけて、試験体に渦電流を発生させ、その流れの欠陥等による変化を検出して、欠陥や材質などを試験する試験法である。

欠陥のない部分から検査をする部分へコイルを移動させたとき、コイルに流れる電流を調べることにより、欠陥、合金の混合比の変化、焼き入れの有無等を調べることができる。検査の対象は、導体であれば非磁性体でも検査は可能である。

● 放射線透過試験(RT)

放射線が物質を透過することを利用して、試験体の内部の欠陥や構造を調べる検査である。照射方向を変えて複数回の検査を行うことにより、欠陥の大きさや位置を立体的に知ることができる。

放射線を照射したときに、放射線の照射する方向に対して、厚さがある欠陥(ブローホール・スラッグ巻き込み等)は検出しやすいが、厚さが薄いと検出しにくい。そのため、複数の方向から撮影する。

なお、使用する放射線は、X線とγ線が使用されるが、これらは人体に有害であることに留意しなければならない。

● 超音波探傷試験(UT)

魚群探知機などと同様に、超音波を材料中に送り込み、反射波によって材料内部のきずや長さ、形状などを検査するものである。超音波探触子から超音波のパルスを試験片に伝播させ、その反射信号の強度、伝搬時間などによって検査を行う。

検査に用いる超音波は0.1MHz〜25MHzの範囲だが、実際には1〜5MHzがよく使用されている。

2 溶接部の内部欠陥と非破壊検査

上記に示したように、浸透探傷試験は表面の傷を検査するものであり、内部欠陥の検査はできない。磁粉探傷試験も表面近傍の欠陥しか検査できないのでこの2つは除かれる。

他の3つの試験方法は、いずれも溶接部の内部きずを検出するための非破壊試験方法として用いられるが、過流探傷試験は現時点では一般的ではない。

放射線透過試験及び超音波探傷試験は、溶接割れ、ブローホール、溶込不良などの内部欠陥の検査に用いられている。そのため、(4)が正答となる。

2020年06月14日執筆