労働安全コンサルタント試験 2014年 産業安全一般 問10

共同作業におけるパフォーマンス




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合格

 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問10 難易度 共同作業におけるパフォーマンスに関する基本的な知識問題。常識問題のレベルだろうか。
共同作業パフォーマンス

問10 集団での共同作業におけるパフォーマンス(遂行能カ)に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)集団での共同作業を行う場合には、個人が単独で作業を行った場合に比べて、一人ひとりの動機づけが低下することがある。

(2)チェック担当者の多重化においては、チェック担当者の人数に比例して全体としてのミス発見率は向上する。

(3)集団での共同作業を行う場合には、不具合等があっても、誰かが正すと思って見過ごすことがある。

(4)集団での共同作業を行う場合には、他者が手を抜いている状況では、それに同調し手を抜くことが多い。

(5)集団的意思決定において、集団浅慮と呼ばれる浅はかな意思決定が行われることがある。

正答(2)

【解説】

コンサルタント試験では、文末が「ことがある」となっている肢の「知識問題」が出題されることがある。しかし「ことがある」という肢は、深く考えるまでもなく誤っていることはほとんどあり得ないものが多い。例外的な事象はほとんどの場合に存在しているからである。また、本問では「ことが多い」となっている肢があるが、多いか少ないかは比較の問題なので、このような肢に厳密な正誤をつけることは不可能だろう。

本問も「ことがある」の肢はすべて正しく、「ことが多い」の肢は正答とはなっていないのである。問題として、やや不適切ではないかと思えるが、解答は簡単になろう。

(1)適切である。集団での共同作業を行う場合には、個人が単独で作業を行った場合に比べて、一人ひとりの動機づけは向上することが多いが、低下することもないわけではない。

集団作業では、競争心理が働くので、パフォーマンスが向上することはよくある1)。しかし、個人ごとに適切に評価されないと、やる気を失って意欲が低下することもある。

(2)適切ではない。あり得ないことである。チェック担当者の多重化をすれば、一般にはミスの発見率は向上するだろう。しかし、ある程度以上担当者を増やしても、ミスのほとんどないものをチェックする担当な業務になってしまい、手抜きをするようになる。

そもそもミスの発見率が、担当者数に「比例して」向上することなどあり得ない。担当者数が増えると、100%を超えてしまうだろう。

(3)適切である。現実の集団での共同作業でも、「集団無責任体制」になってしまうことは、よくみられることである。これは、企業の経営方針の決定や、行政による施策遂行、刑事司法手続きでさえ、しばしばみられる現象である。

(4)適切である。「ことが多い」かどうかはともかく、誤りとは言い切れないだろう。

(5)適切である。第二次世界大戦で、日本が米国と戦争をしたのもこの例である。政府の高官たちは、米国と戦争をすれば負けると分かっており、誰もそれを望んでいなかったが2)、米国との戦争を起こしてしまったのは、その典型例と言えよう。

1)例えば、池田和浩他「ほめと共同作業が内発的動機に与える影響」(尚絅学院大学紀要第67号2018年)など

2)戦後になって、多くの政府高官がそう主張している。

2020年06月14日執筆