問9 人間の感覚に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)色の弁別、視力等の視機能は、網膜の全域にわたって均一である。
(2)聴覚にはマスキング効果があり、マスカー音(妨害音)があると目的音の受聴能力が低下する。
(3)マスキング効果は、マスカー音(妨害音)の周波数より高い周波数の音に対してより顕著に現れる。
(4)嗅覚は、疲労しやすい特性を持ち、同ーの匂いをかぎ続けると匂いを感じなくなる。
(5)適切な輝度の範囲では、輝度上昇に伴って見えやすくなる。
このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2014年度(平成26年度) | 問09 | 難易度 | 人間の感覚に関する基本的な知識問題。常識問題のレベルだろうか。 |
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人間の感覚 | 2 |
問9 人間の感覚に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)色の弁別、視力等の視機能は、網膜の全域にわたって均一である。
(2)聴覚にはマスキング効果があり、マスカー音(妨害音)があると目的音の受聴能力が低下する。
(3)マスキング効果は、マスカー音(妨害音)の周波数より高い周波数の音に対してより顕著に現れる。
(4)嗅覚は、疲労しやすい特性を持ち、同ーの匂いをかぎ続けると匂いを感じなくなる。
(5)適切な輝度の範囲では、輝度上昇に伴って見えやすくなる。
正答(1)
【解説】
(1)適切ではない。網膜とはカメラでいえばフィルムの役割を果たす器官である。網膜の視細胞には、暗いところで働く捍体(杆体)細胞と、明るいところで働く錐体細胞の2種類がある。
捍体細胞は、約1億2000万個あり、網膜全体に分布しているが、黄斑部にはあまり存在しない。
一方の錐体細胞は、約600万個存在しており、黄斑部に密集して存在しており、周辺部にいくにつれてまばらとなる。
視細胞は、網膜上に一様に存在しているわけではない。そのため、周辺視野にあるものは中心部にあるものほど明瞭には見えない。
(2)適切である。大きな騒音の工場の中では他人の話が聞こえなくなるなど、他の音がかき消されてしまうことがある。この現象を一般に聴覚のマスキングと呼ぶ。これは騒音に限らず、普通の音量で音楽を聴いていてもテープノイズのような小さな音は聞こえなくなってしまう。
(3)適切である。純音によるマスキングはすべての周波数に対して一様に生じるのではない。マスクされる範囲は限られている。マスクする音より高い音は広い範囲でマスクされやすく、低い音はマスクされにくい。
(4)適切である。これも経験的に正しいと分かるだろう。高木1)は「ヒトの嗅覚はすぐに疲労して"馬鹿"になり、もののニオイが分らなくなる。どんなによい香でも、疲れてしまえば感覚はなくなる。しかしそれは、そのニオイに対してだけであって他の異ったニオイは十分にかぐことができるから、これを選択的疲労という。風呂の中でガス中毒を起すのは徐々に洩れているガスに対して嗅覚が疲労するためで、あとから入って来たヒトは呼吸もできない程ガスが充満していても、初めから入っているヒトは気付かないので中毒し、最後には死に到る」としている。
(5)適切である。輝度とは、見ているもの=ディスプレイや書類など=の明るさのことで、単位は「cd/m2」で表される。明るいほど数字は大きくなる。当然のことだが、輝度が高すぎても低すぎても、物は見えにくくなる。
しかし、一定の範囲内であれば、明るいほど見やすくなることは実験によって確認されている。
なお、TCO'03規格における要求輝度は150cd/m2、液晶ディスプレイのエルゴノミック基準を定めたISO13406規格では最低35cd/m2、明るい環境では100cd/m2以上が推奨されている。
1)高木貞敬「嗅覚の生理学」(醸協第68巻第5号)