労働安全コンサルタント試験 2014年 産業安全一般 問06

運搬機械等の安全確保




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合格

 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問06 難易度 運搬機械等の安全確保に関する基本的な知識問題。正答できなければならない問題である。
運搬機械等の安全確保

問6 運搬機械等の安全確保に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)無人搬送車の接近検出装置の作動範囲は、車体の幅及び高さと同程度以上とし、検出距離は調整できる機構としている。

(2)運転質量(機械質量に乗員の質量を加えたもの)2200kg を超える油圧式のミニショベルでは、横転時保護構造(TOPS)としている。

(3)ロングスパン工事用エレベーターは、建築・土木工事現場において人と荷物を運ぶ目的のエレベーターで、昇降装置、ガイドレール、搬器の落下防止装置及び各種の安全装置等で構成されている。

(4)移動式クレーンのつり上げ荷重は、ジブの長さとジプの傾斜角度によって変化するが、定格荷重は変化しない。

(5)クローラクレーンには、主ジブの構造上ラチスジブ式とテレスコピックジブ式があり、ラチスジブ式はテレスコピックジブ式に比べて軽量にできるので、作業半径の大きい場所でのつり上げ能力に優れている。

正答(4)

【解説】

本問は、(1)、(2)及び(5)が、かなり細かい内容である。しかし、(3)はごく常識的な内容で、正答の(4)が基本的な内容なので正答できなければならない。

(1)適切である。JIS D 6802:1997(無人搬送車システム−安全通則)によれば、「接近検出装置(センサ)の作動範囲は、車体幅及び車体高さ(荷役装置を除いた本体部)と同等以上とし、検出距離は調整可能な機構が望ましい」とされている。

(2)適切である。JIS A 8340-4:2004(土工機械-安全―第4部:油圧ショベルの要求事項)には、「運転質量2200kgを超える通常型ミニショベル及び後方超小旋回形ミニショベルには、JIS A 8921に適合する横転時保護構造(以下、TOPSという。)を装備するものとする」とされている。

なお、JIS A 8921:2001(土工機械−ミニショベル横転時保護構造(TOPS)− 試験方法及び性能要求項目)は、スイング式のブームをもつ運転質量1000kg以上6000kg以下のミニショベルに適用するとされている。

(3)適切である。エレベータは、簡易リフト及び建設用リフトを除けば、人と荷物を運ぶ目的のエレベーターである。また、昇降装置、ガイドレール、搬器の落下防止装置及び各種の安全装置等で構成されていることは当然であろう。

なお、「エレベーター構造規格」(平成5年8月2日労働省告示第91号)によれば、「ロングスパン工事用エレベーター」は、「工事用エレベーターであって、搬器として長さ3メートル以上の荷台を使用し、定格速度が0.17m/秒以下のもの」と定義されている。

(4)適切ではない。移動式クレーンの“つり上げ荷重”とは、移動式クレーンの構造および材料に応じて負荷させることができる最大の荷重のことである。具体的には、アウトリガーを最大に張出し、ジブの長さを最短にし、ジブ傾斜角を最大にしたときに負荷させることができる最大の荷重で、この値にはフック、グラブバケット等のつり具の質量が含まれている。その定義から、ジブの長さとジプの傾斜角度によって変化することなどあり得ない。

一方、“定格総荷重”とは、移動式クレーンの構造・材料や、ジブの長さと傾斜角の変化に応じて負荷させることのできる最大の荷重で、フック、グラブバケット等のつり具の質量を含んだ荷重である。ジブの長さや傾斜角が変化すれば、それに応じて定格総荷重も変化する。

(5)適切である。クローラクレーンに限らず、移動式クレーンのジブには、ラチス式(ラチス構造)とテレスコピック式(箱型構造)がある。ラチス式は、テレスコピックジブ式に比べて軽量にできるので、作業半径の大きい場所でのつり上げ能力に優れている。

なお、ラチスジブ式は比較的大型のクローラクレーンに使用されることが多く、基本ジブ(下部ジブと上部ジブ)の間に継ぎジブを挿入して、作業に必要な長さにする必要がある。テレスコピック式は、油圧式のトラッククレーンやラテレーンクレーン等に多く使用され、構造は強度のある箱形で、伸縮はジブ内部に収納された油圧シリンダや油圧シリンダとジブ伸縮ワイヤロープを併用したものによって行う。

2020年06月13日執筆