労働安全コンサルタント試験 2013年 産業安全関係法令 問15

労働安全衛生法令上違反となるもの




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 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問15 難易度 安衛法全般についての条文問題。やや詳細な内容もあるが、確実な合格には正答できるようにしたい。
労働安全衛生法全般

問15 常時100人の労働者を使用するプラスチック製品製造業の事業場から、労働安全コンサルタントに安全診断の依頼があり、安全診断を行った結果、事業場において次のような状況がみられた。この状況のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)安全衛生委員会を毎月1回開催しており、委員会における議事の概要を3か月ごとにまとめて、定期に磁気ディスクに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置して、労働者に周知させていた。

(2)労働者が休業した労働災害のうち、休業の日数が4日に満たないものについては、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの期間ごとにまとめて、それぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、労働者死傷病報告書を所轄労働基準監督署長に提出していた。

(3)つり上げ荷重が4.9tの天井クレーンの運転の業務に、当該業務に関する特別教育を行ったものを就かせていた。

(4)混合機から内容物を取り出す作業において、当該機械の運転を停止して内容物を取り出すことが作業の性質上困難であったので、当該機械の運転を停止しないで労働者に用具を使用させて作業を行わせていた。

(5)危険物を取り扱う作業場は平屋の建物であり、当該建物には、非常の場合に容易に地上の安全な場所に避難することができる2か所の出入り口が設けられ、その出入口に設けた戸は、1か所は引戸で、もう1か所は外開戸であった。

正答(1)

【解説】

(1)違反となる。プラスチック製品製造業の事業場は、安衛令第2条第二号に該当する(製造業)ので、同第8条第二号に該当する。従って、常時100人の労働者を使用しているのであるから、安全委員会を設けなければならない。

また、同第8条にも該当するので衛生委員会を設けなければならない。

従って、安衛法第17条から第19条の規定により、この事業場の安全衛生委員会は法令によるものであり、労働安全衛生法令の規定に従う必要がある。

まず、毎月1回開催していることは、安衛則第23条第1項に違反しない。

次に、委員会における議事の概要を3か月ごとにまとめて、定期に磁気ディスクに記録していることは、安衛則第23条第4項が「委員会の開催の都度、次に掲げる事項を記録」しなければならないとする規定に違反している。まあ、実務においては、わざわざ記録を3か月に一度、まとめて記録する事業者がいるとは思えないが。

また、3か月に一度、その議事概要を周知していることは、安衛則第23条第3項が「委員会の開催の都度、遅滞なく」周知しなければならないとする規定に反している。なお、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置して、労働者に周知させていることは、安衛則第23条第3項(第3号)に違反しない。

最後に、本試験とは無関係なことであるが、安全衛生委員会の記録を電磁的に行うことについては「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」によって認められている。

【労働安全衛生法】

(安全委員会)

第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。

一~三 (略)

2~5 (略)

(衛生委員会)

第18条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

一~四 (略)

2~4 (略)

(安全衛生委員会)

第19条 事業者は、第十七条及び前条の規定により安全委員会及び衛生委員会を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができる。

2~4 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 (柱書 略)

 (略)

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人

 (略)

(安全委員会を設けるべき事業場)

第8条 法第十七条第一項の政令で定める業種及び規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 林業、鉱業、建設業、製造業のうち木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業及び輸送用機械器具製造業、運送業のうち道路貨物運送業及び港湾運送業、自動車整備業、機械修理業並びに清掃業 五十人

 第二条第一号及び第二号に掲げる業種(前号に掲げる業種を除く。) 百人

(衛生委員会を設けるべき事業場)

第9条 法第十八条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(委員会の会議)

第23条 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月一回以上開催するようにしなければならない。

 (略)

 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知させなければならない。

 (略)

 (略)

 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

 事業者は、委員会の開催の都度、次に掲げる事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。

一及び二 (略)

 (略)

(2)違反とはならない。安衛則第97条第2項により、労働者が休業した労働災害のうち、休業の日数が4日に満たないものについては、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの期間ごとにまとめて、それぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、労働者死傷病報告書を所轄労働基準監督署長に提出すれば違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(労働者死傷病報告)

第97条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

(3)違反とはならない。つり上げ荷重が5t未満のクレーンは、安衛則第36条(第十五号)の規定により、特別教育を行わなければならない。本肢は、つり上げ荷重が4.9tの天井クレーンの運転の業務に特別教育を行ったものを就かせていたのであるから、違反とはならない。

【労働安全衛生法】

(安全衛生教育)

第59条 (第1項及び第2項 略)

 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

【労働安全衛生規則】

(特別教育を必要とする業務)

第36条 法第五十九条第三項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。

一~十四 (略)

十五 次に掲げるクレーン(移動式クレーン(令第一条第八号の移動式クレーンをいう。以下同じ。)を除く。以下同じ。)の運転の業務

 つり上げ荷重が五トン未満のクレーン

 (略)

十六~四十一 (略)

(4)違反とはならない。安衛則第143条但書の規定により、混合機から内容物を取り出す作業において、当該機械の運転を停止して内容物を取り出すことが作業の性質上困難な場合は、当該機械の運転を停止しないで労働者に用具を使用させて作業を行わせていても違反とはならない。

なお、第130条の5第1項の機械とは、「食品加工用粉砕機又は食品加工用混合機」のことである。第130条の7第1項に、内容物を取り出す場合の規定が置かれているが、143条の但し書きのような規定はない。

【労働安全衛生規則】

(内容物を取り出す場合の運転停止)

第143条 事業者は、粉砕機又は混合機(第百三十条の五第一項の機械及び内容物の取出しが自動的に行われる構造のものを除く。)から内容物を取り出すときは、当該機械の運転を停止しなければならない。ただし、当該機械の運転を停止して内容物を取り出すことが作業の性質上困難な場合において、労働者に用具を使用させたときは、この限りでない。

 (略)

(5)違反とはならない。安衛則第546条の規定により、危険物を取り扱う作業場には、非常の場合に容易に地上の安全な場所に避難することができる2か所の出入り口を設けなくてはならず、その出入口に設けた戸は、引戸又は外開戸でなければならない。本肢はその基準を満足している。

なお、本肢は、平屋の建物であるので、作業場が避難階になっており、避難階にも出入口が設けられていることになる。

【労働安全衛生規則】

(危険物等の作業場等)

第546条 事業者は、危険物その他爆発性若しくは発火性の物の製造又は取扱いをする作業場及び当該作業場を有する建築物の避難階(直接地上に通ずる出入口のある階をいう。以下同じ。)には、非常の場合に容易に地上の安全な場所に避難することができる二以上の出入口を設けなければならない。

 前項の出入口に設ける戸は、引戸又は外開戸でなければならない。

2021年01月23日執筆

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