問4 車両系荷役運搬機械等による労働災害を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
(1)ショベルローダの修理作業を行うとき、ショベルが不意に降下するのを防ぐ安全支柱を労働者に使用させてから、ショベルの下に労働者を立ち入らせた。
(2)最高速度が20km/hの不整地運搬車を用いて作業を行うとき、制限速度は定めなかったが、転落、転倒、接触等の危険が生ずるおそれのある場合には、誘導者を配置し、当該不整地運搬車を誘導させて作業を行った。
(3)マストの後方に荷が落下することにより労働者に危険を及ぼすおそれがなかったので、バックレストを備えていないフォークリフトを使用した。
(4)荷の落下により運転者に危険を及ぼすおそれがなかったので、ヘッドガードを備えていないフォークローダーを用いて作業を行った。
(5)作業を安全に行うため必要な照度が保持されている場所だったので、前照灯及び後照灯を備えていないストラドルキャリヤーを使用した。
このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2013年度(平成25年度) | 問04 | 難易度 | やや詳細な内容の肢もあるが、全体として基本的レベルの知識問題。確実に正答しておきたい。 |
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車両系荷役運搬機械等 | 4 |
問4 車両系荷役運搬機械等による労働災害を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
(1)ショベルローダの修理作業を行うとき、ショベルが不意に降下するのを防ぐ安全支柱を労働者に使用させてから、ショベルの下に労働者を立ち入らせた。
(2)最高速度が20km/hの不整地運搬車を用いて作業を行うとき、制限速度は定めなかったが、転落、転倒、接触等の危険が生ずるおそれのある場合には、誘導者を配置し、当該不整地運搬車を誘導させて作業を行った。
(3)マストの後方に荷が落下することにより労働者に危険を及ぼすおそれがなかったので、バックレストを備えていないフォークリフトを使用した。
(4)荷の落下により運転者に危険を及ぼすおそれがなかったので、ヘッドガードを備えていないフォークローダーを用いて作業を行った。
(5)作業を安全に行うため必要な照度が保持されている場所だったので、前照灯及び後照灯を備えていないストラドルキャリヤーを使用した。
正答(2)
【解説】
(1)違反とはならない。ショベルローダは、安衛則第151条の2(第二号)の規定により「車両系荷役運搬機械等」に該当する。そして、同規則第151条の9但書の規定により、車両系荷役運搬機械等の修理作業を行うときに、ショベルが不意に降下するのを防ぐ安全支柱を労働者に使用させてから、ショベルの下に労働者を立ち入らせても違反とはならない。
【労働安全衛生規則】
(定義)
第151条の2 この省令において車両系荷役運搬機械等とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 (略)
二 シヨベルローダー
三~七 (略)
(立入禁止)
第151条の9 事業者は、車両系荷役運搬機械等(構造上、フオーク、シヨベル、アーム等が不意に降下することを防止する装置が組み込まれているものを除く。)については、そのフオーク、シヨベル、アーム等又はこれらにより支持されている荷の下に労働者を立ち入らせてはならない。ただし、修理、点検等の作業を行う場合において、フオーク、シヨベル、アーム等が不意に降下することによる労働者の危険を防止するため、当該作業に従事する労働者に安全支柱、安全ブロツク等を使用させるときは、この限りでない。
2 (略)
(2)違反となる。不整地運搬車は、安衛則第151条の2(第二号)の規定により「車両系荷役運搬機械等」に該当する。そして、同規則第151条の5により、最高速度が10km/h以下のものを除き、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、制限速度を定めなければならない。
なお、路肩、傾斜地等の作業で転落又は転倒の危険が生ずるおそれのある場合や、荷に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせる場合は、同規則第151条の6第2項や第151条の7第1項の規定により、誘導者を配置し、当該不整地運搬車を誘導させて作業を行う必要があるが、そのことと制限速度を定めることとは関係がない。
【労働安全衛生規則】
(定義)
第151条の2 この省令において車両系荷役運搬機械等とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一~四 (略)
五 不整地運搬車
六及び七 (略)
(制限速度)
第151条の5 事業者は、車両系荷役運搬機械等(最高速度が毎時十キロメートル以下のものを除く。)を用いて作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の地形、地盤の状態等に応じた車両系荷役運搬機械等の適正な制限速度を定め、それにより作業を行わなければならない。
2 (略)
(転落等の防止)
第151条の6 (第1項 略)
2 事業者は、路肩、傾斜地等で車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行う場合において、当該車両系荷役運搬機械等の転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、誘導者を配置し、その者に当該車両系荷役運搬機械等を誘導させなければならない。
3 (略)
(接触の防止)
第151条の7 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、運転中の車両系荷役運搬機械等又はその荷に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系荷役運搬機械等を誘導させるときは、この限りでない。
2 (略)
(3)違反とはならない。安衛則第151条の18第1項但書により、マストの後方に荷が落下することにより労働者に危険を及ぼすおそれがなければ、バックレストを備えていないフォークリフトを使用しても違反とはならない。
※ 右図は、厚生労働省「技能講習補助教材」の「フォークリフト運転技能講習補助テキスト(日本語)」の図を一部修正した。
ただし、安全コンサルタント試験合格後の安全指導においては、特別なアタッチメントを取り付けた場合は別として(※)、「マストの後方に荷が落下することにより労働者に危険を及ぼすおそれ」があろうとなかろうと、バックレストを備えていないようなフォークリフトを使用させてはならない。そもそも、フォークリフトの作業において、マストの後方に荷が落下することにより労働者に危険を及ぼすおそれがない状況ということが考えにくいのである。
※ 現在、多くの企業からフォークリフトのアタッチメントが販売されている。右図は、厚生労働省の未熟練労働者の安全衛生教育マニュアル「産業廃棄物処理業 編」(2019年)に載っているアタッチメントの例である。これらのアタッチメントを取り付けたフォークリフトは、安衛法上のフォークリフトなのか疑問を感じるようなものもある。
しかし、これらは、安衛則第151条の14の用途外使用に該当するが、同条但書によって違反には該当しないと解釈されている。すなわち、安衛法上のフォークリフトに該当し、右図のアタッチメントを取り付けた場合も、小型移動式クレーンではなくフォークリフトとして扱われるのである。
【労働安全衛生規則】
(バツクレスト)
第151条の18 事業者は、フオークリフトについては、バツクレストを備えたものでなければ使用してはならない。ただし、マストの後方に荷が落下することにより労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。
2 (略)
(4)違反とはならない。安衛則第151条は、シヨベルローダー又はフオークローダーを合わせて「シヨベルローダー等」という言葉で表現するとしている。そして、安衛則第151条の28但書は、このショベルローダー等について、荷の落下により運転者に危険を及ぼすおそれがなければ、ヘッドガードを備えていないものを用いて作業を行っても違反とはしないとしている。
ただし、安全コンサルタント試験合格後の安全指導においては、荷の落下により運転者に危険を及ぼすおそれがないとしても、ヘッドガードを備えていないフォークローダーを用いさせてはならない。もっとも、そんなものがあるとは思えないが。
【労働安全衛生規則】
(前照灯及び後照灯)
第151条の27 事業者は、シヨベルローダー又はフオークローダー(以下「シヨベルローダー等」という。)については、前照灯及び後照灯を備えたものでなければ使用してはならない。ただし、作業を安全に行うため必要な照度が保持されている場所においては、この限りでない。
(ヘツドガード)
第151条の28 事業者は、シヨベルローダー等については、堅固なヘツドガードを備えたものでなければ使用してはならない。ただし、荷の落下によりシヨベルローダー等の運転者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。
(5)違反とはならない。安衛則第151条の36第1項但書により、作業を安全に行うため必要な照度が保持されている場所であれば、前照灯及び後照灯を備えていないストラドルキャリヤーを使用しても違法とはならない。
【労働安全衛生規則】
(前照灯及び後照灯)
第151条の36 事業者は、ストラドルキヤリヤーについては、前照灯及び後照灯を備えたものでなければ使用してはならない。ただし、作業を安全に行うため必要な照度が保持されている場所においては、この限りでない。
※ 本問が出題された時の条文は、「前照灯及び後照灯」は「前照燈及び後照燈」となっていた。そのため、問題文も「前照燈及び後照燈」となっていたが、現行法令の標記に合わせて「前照灯及び後照灯」と修正した。