問1 安全管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)事業者は、選任している安全管理者のすべてを安全委員会の委員として指名しなければならない。
(2)事業者は、安全教育の実施計画の作成に関することについて、安全委員会に調査審議させ、意見を述べさせなければならない。
(3)事業者は、労働基準監督署長から文書により指導を受けた事項のうち、危険の防止に関することについて、安全管理者に必要な措置を実施させ、その実施結果を安全委員会に報告させなければならない。
(4)事業者は、総括安全衛生管理者に関係請負人との協議組織の設置及び運営の業務を統括管理させなければならない。
(5)安全衛生推進者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちに、その危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2013年度(平成25年度) | 問01 | 難易度 | 安全衛生管理体制は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。 |
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安全管理体制 | 2 |
問1 安全管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)事業者は、選任している安全管理者のすべてを安全委員会の委員として指名しなければならない。
(2)事業者は、安全教育の実施計画の作成に関することについて、安全委員会に調査審議させ、意見を述べさせなければならない。
(3)事業者は、労働基準監督署長から文書により指導を受けた事項のうち、危険の防止に関することについて、安全管理者に必要な措置を実施させ、その実施結果を安全委員会に報告させなければならない。
(4)事業者は、総括安全衛生管理者に関係請負人との協議組織の設置及び運営の業務を統括管理させなければならない。
(5)安全衛生推進者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちに、その危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
正答(2)
【解説】
(1)誤り。安全委員会の構成委員として、安衛法第17条第2項(第二号)は「安全管理者のうちから事業者が指名した者」と定めている。「うちから」となっており、選任している安全管理者のすべてを安全委員会の委員として指名しなければならないわけではない。
【労働安全衛生法】
(安全委員会)
第17条 (第1項 略)
2 安全委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員(以下「第一号の委員」という。)は、一人とする。
一 (略)
二 安全管理者のうちから事業者が指名した者
三 (略)
3~5 (略)
(2)正しい。安衛則第21条(第四号)は、安全委員会に調査審議させ、意見を述べさせなければならない事項として「安全教育の実施計画の作成に関すること」を定めている。
※ 安衛法第17条第1項の第三号は、「前二号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止に関する重要事項」と定めてあるのみで、「厚生労働省令によって定める事項」とされていない。そのため、安衛則第21条は、安衛法の根拠(委任条項)のない条文となっている。これは、本条が定められた1972年(昭和47年)当時の法令の特徴である。
【労働安全衛生法】
(安全委員会)
第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。
一 (略)
二 (略)
三 前二号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止に関する重要事項
2~5 (略)
【労働安全衛生規則】
(安全委員会の付議事項)
第21条 法第十七条第一項第三号の労働者の危険の防止に関する重要事項には、次の事項が含まれるものとする。
一~三 (略)
四 安全教育の実施計画の作成に関すること。
五 (略)
(3)誤り。確かに「労働基準監督署長から文書により指導を受けた事項のうち、危険の防止に関すること」は、安全委員会で調査審議しなければならない事項である(安衛則第21条第五号)。
しかし、安全管理者に必要な措置を実施させ、その実施結果を安全委員会に報告させなければならないとする規定はない。労働基準監督署長による文書により指導は事業者に対するものであり、それに対処する措置は(技術的な事項に関しては安全管理者に管理を行わせるべきかもしれないが)事業者がその責任で確実に実施すればよく、必ずしも安全管理者に実施させなければならないわけではない。
また、その結果を安全管理者から安全委員会に報告させなければならないとする規定もない。事業者がその責任において、安全委員会に調査審議させればよく、安全管理者に報告させなければならないわけではない。
【労働安全衛生法】
(総括安全衛生管理者)
第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの
2及び3 (略)
(安全管理者)
第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 (略)
(安全委員会)
第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。
一 (略)
二 (略)
三 前二号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止に関する重要事項
2~5 (略)
【労働安全衛生規則】
(総括安全衛生管理者が統括管理する業務)
第3条の2 法第十条第一項第五号の厚生労働省令で定める業務は、次のとおりとする。
一 安全衛生に関する方針の表明に関すること。
二 法第二十八条の二第一項又は第五十七条の三第一項及び第二項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
三 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。
(安全委員会の付議事項)
第21条 法第十七条第一項第三号の労働者の危険の防止に関する重要事項には、次の事項が含まれるものとする。
一~四 (略)
五 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は産業安全専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の危険の防止に関すること。
(4)誤り。「協議組織の設置及び運営」は、安衛法第30条により特定元方事業者が実施しなければならない事項である。そして、同法第15条は、統括安全衛生責任者にそれを統括管理させなければならないとする。
しかし、総括安全衛生管理者の職務(法令上の規定は(2)の解説の法令を参照されたい。)に、関係請負人との協議組織の設置及び運営の業務を統括管理させなければならないとする規定はない。
【労働安全衛生法】
(統括安全衛生責任者)
第15条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。
2~5 (略)
(特定元方事業者等の講ずべき措置)
第30条 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない。
一 協議組織の設置及び運営を行うこと。
二~六 (略)
2~4 (略)
(5)誤り。安衛則は、安全管理者、衛生管理者及び産業医について、職場巡視についての義務規定を設けている(※)が、安全衛生推進者について職場巡視の義務規定は設けていない。
なお、衛生管理者は少なくとも毎週1回以上、産業医については原則毎月1回以上、作業場等を巡視しなければならないとしているが、安全管理者の職場巡視に頻度は定められていない。
※ これらの規定に、安衛法の根拠はない。従って、法律上の義務とは言えず、当然のことではあるが罰則も定められていない。
【労働安全衛生法】
(安全衛生推進者等)
第12条の2 事業者は、第十一条第一項の事業場及び前条第一項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除くものとし、第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。
【労働安全衛生規則】
(安全管理者の巡視及び権限の付与)
第6条 安全管理者は、作業場等を巡視し、設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちに、その危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 (略)
(衛生管理者の定期巡視及び権限の付与)
第11条 衛生管理者は、少なくとも毎週一回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 (略)
(産業医の定期巡視)
第15条 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一及び二 (略)