問26 平成14年から平成23年までの10年聞における労働衛生関係統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)この期間の休業4日以上の業務上疾病者数は、年間8000人前後で横ばいである。
(2)休業4日以上の業務上疾病者数のうち負傷に起因する疾病者数が、この期間に大きく増加している。
(3)保健衛生業における休業4日以上の業務上疾病者数では、災害性腰痛による疾病者数が、この期間に大きく増加している。
(4)平成14年に比べると、平成23年の特殊健康診断受診者数は増加しているが、有所見率はほぼ横ばいである。
(5)平成14年に比べると、平成23年のじん肺健康診断有所見率は低下している。
このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2013年度(平成25年度) | 問26 | 難易度 | 労働衛生関係の統計は、過去の出題数の多い事項である。この年は、細かい所を問う難問であった。 |
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労働衛生関係統計 | 4 |
問26 平成14年から平成23年までの10年聞における労働衛生関係統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)この期間の休業4日以上の業務上疾病者数は、年間8000人前後で横ばいである。
(2)休業4日以上の業務上疾病者数のうち負傷に起因する疾病者数が、この期間に大きく増加している。
(3)保健衛生業における休業4日以上の業務上疾病者数では、災害性腰痛による疾病者数が、この期間に大きく増加している。
(4)平成14年に比べると、平成23年の特殊健康診断受診者数は増加しているが、有所見率はほぼ横ばいである。
(5)平成14年に比べると、平成23年のじん肺健康診断有所見率は低下している。
正答(2)
【解説】
本問は、平成14年(2002年)から平成23年(2011年)までの10年聞における労働衛生関係統計を問うものである。今後、学習する場合は、直近の10年間について学んでいただきたい。
労働衛生関係統計は、「労働衛生(産業保健)最新統計」に関係資料をグラフでお示ししているので、併せて参照されたい。
(1)正しい。グラフでは令和2年(2020年)以降の新型コロナへの罹患によるものの急増でやや見づらいが、この期間の休業4日以上の業務上疾病者数は、年間8000人前後で横ばいであると言ってよいであろう。
(2)誤り。厚生労働省のWEBサイトには、平成15年(2003年)以前の疾病別の統計がアップされていない。
そのため、やや微妙ではあるが、休業4日以上の業務上疾病者数のうち負傷に起因する疾病者数が、この期間に大きく増加したという事実はないといってよい(※)。
※ なお、令和2年(2020年)以降の新型コロナへの感染は除いている。新型コロナへの感染を含めたグラフは「労働衛生(産業保健)最新統計」を参照して頂きたい。
(3)正しい。「業種別・疾病分類別業務上疾病発生状況」によると、保健衛生業における休業4日以上の業務上疾病者数では、災害性腰痛による疾病者数は、平成14年(2002年)に590件であったが、平成23年(2011年)には1,329件である。なお、令和元年(2019年)には1,648件となっている。
本肢の正誤とは関係がないが、負傷に起因するものであっても腰痛は、健康保険で処理されるケースが多い疾病である。監督機関の指導等によって、それが業務上疾病であるという認識が業界で高まり、労災で処理されるようになると「発生件数」が増加することがある。このことは認識しておいた方が良い。
(4)正しい。平成14年(2002年)に比べると、平成23年(2011年)の特殊健康診断受診者数は増加しているが、有所見率はほぼ横ばいである。
健康診断の受診者数が増加した理由としては、対象となる化学物質が増えたこともないわけではないが、事業者の意識が高まったことが主な原因である。
また、有所見率に減少傾向がみられないが、特殊健康診断の有所見は必ずしも業務を原因とするというわけではなく、生活習慣によっても有所見となることがあるので、これを低下させることは難しい面があるのである。
その結果、グラフではよく分からないかもしれないが、有所見者数は平成15年(2003年)以降は増加傾向にある。
(5)平成14年(2002年)に比べると、平成23年(2011年)のじん肺健康診断有所見率は低下している。
粉じん業務そのものが減少傾向にあること、作業環境の改善が進んだこと等により、じん肺健康診断の有所見者数は、近年ではほぼ一貫して減少傾向にある。