労働安全コンサルタント試験 2013年 産業安全一般 問19

保護具




問題文
トップ
合格

 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2013年度(平成25年度) 問19 難易度 問題文にかなり曖昧な部分があり、正しい知識があっても正答できるとは限らない。不適切な問題。
保護具

問19 保護具に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)墜落用保護帽と飛来落下用保護帽の構造上の大きな違いは、衝撃吸収ライナの有無である。

(2)目の保護具には、グラインダー作業時等における飛来物に対して目を防護するための保護めがねや、溶接作業等における有害な光線から目を防護する遮光保護具がある。

(3)JISでは安全靴の防護性能は、耐衝撃性、耐圧迫性、電気絶縁性で規定している。

(4)天然ゴム製のゴム手袋は、柔軟性、耐摩耗性があり、引き裂きに強く、寒冷地においても硬くなりにくい。

(5)胴ベルト型墜落制止用器具を装着する位置は、腰骨のところとする。

正答(3)

【解説】

(1)適切である。「保護帽の規格」第2条によれば、衝撃吸収ライナーとは、「発ぽうスチロール又はこれと同等以上(※)の衝撃吸収性能を有するもの」である。

※ かつては衝撃吸収ライナーは、ほとんどが発泡スチロール製であったが、最近では熱中症の予防のために発泡スチロール製でないものも開発されている。そのため、実務において、発泡スチロールがないからといって、墜落時保護用ではないと即断はできないことに留意すること。

保護帽の規格第5条により、墜落時保護用の保護帽には衝撃吸収ライナーを有していなければならない。一方、同第4条によれば、飛来・落下物用の保護帽には、構造上、衝撃吸収ライナーを有する必要はない。その意味では本肢は適切である。

なお、墜落時保護用の保護帽は、すべて飛来・落下物用を兼ねており、飛来・落下物用の機能がない墜落時保護用の保護帽は存在していない。

(2)正しい。目の保護具には、グラインダー作業時等における飛来物に対して目を防護するための保護めがねや、溶接作業等における有害な光線から目を防護する遮光保護具がある。

なお、安衛則上は、第105条に加工物等の飛来による危険の防止のための保護具(保護眼鏡等)、第106条に切削屑の飛来等による危険の防止のための保護具(保護眼鏡等)、第312条にアセチレン溶接等の作業時の保護眼鏡、第313条にガス集合溶接装置による溶接等の作業時の保護眼鏡、第325条にアーク溶接等の強烈な光線を発散する場所での保護具(保護眼鏡等)、第327条に腐食性液体を圧送する作業における保護具(保護眼鏡等)等が定められている。

(3)誤り。JIS T8101:2020は、安全靴に求める「基本性能」として、耐衝撃性、耐圧迫性、着用耐久性、漏れ防止性などを定めている。

一方、特殊用途のための付加的性能のひとつとして、電気絶縁特性を規定している。しかし、このことをもって「安全靴の防護性能を電気絶縁性で規定している」とまでは言えないだろう。

(4)正しい。天然ゴム(NR)製のゴム手袋は、一般にスチレンブタジエンゴム(SBR)やブタジエンゴム(BR)など他のゴムに比較して引き裂きに強い。また、他の多くのゴムと同様に耐摩耗性にも優れており、シリコンゴム(Q)などよりはるかに優れている。

また、柔軟性では、シリコーンゴムに比較すれば劣っているものの、SBRやBRよりは優れている。さらに、ゴムの特徴として低温に弱いということがあるが、天然ゴムの使用下限はマイナス50度程度と言われており、シリコーンゴムやBRなど他のゴムに比べれば低温で硬くなりやすいものの、日本の寒冷地で使えないほどではない。

もっとも、本肢の「柔軟性、耐摩耗性があり、引き裂きに強く、寒冷地においても硬くなりにくい」というのは、いずれも比較の問題であり、比較する相手によっては、正しいとも誤りともいえる(※)。しかも、一般には「天然ゴムは寒冷地で硬化しやすい」と言われているので、気にはなるが(3)が誤りなのでこちらは正しいとしておく。

※ その意味で、本問は欠陥問題と言える。

胴ベルト型安全帯

図をクリックすると拡大します

(5)正しい。胴ベルト型墜落制止用器具は、腰骨の位置に巻き付ける。腰骨より上方に装着すると墜落時に内臓や太い血管を圧迫する。また、腰骨より低い位置では、墜落時に抜け落ちるリスクがある(※)

※ 図は、建設業労働災害防止協会「平成 25 年度厚生労働省委託 墜落防止のための安全設備設置の作業標準マニュアル」(2018年)より

2021年01月31日執筆