労働安全コンサルタント試験 2013年 産業安全一般 問18

安全装置の機能保持




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 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問18 難易度 機械設備の安全装置の機能保持に関するごく基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
安全装置の機能保持

問18 安全装置の機能保持に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)立体自動倉庫システムにおいて、マットスイッチを用い、ピッキングなどのために作業者やフォークリフトがスタッカークレーンの稼働範囲に接近した場合、スタッカークレーンが作動しない構造としている。

(2)光線式の安全プレスの安全距離の計算をした結果、連続遮光幅を大きくすることにより追加距離を小さくしている。

(3)フォークリフトの駐車ブレーキは、無負荷状態で20%のこう配の床面で停止の状態に保持できる性能を有している。

(4)ゴム練りロール機の急停止機構の操作部は、ロール機の前面及び後面にそれぞれ一か所水平に設け、その長さはロールの加工部分の長さ以上としている。

(5)製パン機械の立形ミキサにおいて、保護ガードを開放しているときは、アジテータが作動しない構造としている。

正答(2)

【解説】

(1)適切である。JIS B 8942:2012「立体自動倉庫システム−システム設計通則」は、立体自動倉庫システムについて、「荷役作業をする箇所とフォーク装置の可動範囲が干渉する場合は,JIS B 9715に従ってフォーク装置の可動範囲への人又はフォークリフトトラックの接近を検知してフォーク装置の動作を禁止する」としている。

一方、圧力検知マットは、JIS B 9715に規定されている。従って、本肢は全体として不適切とは言えない。

なお、圧力検知マットによる安全対策は単独で用いられるべきではない。本来は、スタッカークレーンが作動していない場合に限り、人またはフォークリフトがその稼働範囲に入れるようにし、スタッカークレーンの作動中は稼働範囲を安全柵等で囲うこと等が望ましい。

【JIS B 8942:2012】

 安全対策

7.2.レイアウト

7.2.2.通常運転時における入出庫ステーションの安全

  人又はフォークリフトトラックが荷役作業する箇所は,次による。

b) 荷役作業をする箇所とフォーク装置の可動範囲が干渉する場合は,JIS B 9715に従ってフォーク装置の可動範囲への人又はフォークリフトトラックの接近を検知してフォーク装置の動作を禁止する。

【JIS B 9715:2010】

 圧力検知マット又はフロアの位置決めの計算方法

7.1.及び7.2. (略)

(2)適切ではない。動力プレス機械構造規格第43条の規定により、光線式の安全プレスの安全距離の計算においては、連続遮光幅を大きくした場合は追加距離を大きくしなければならない。

【動力プレス機械構造規格】

(光線式の安全プレスの安全距離)

第43条 光線式の安全プレスに備える検出機構の光軸と危険限界との距離(以下この条において「安全距離」という。)は、スライドの閉じ行程の作動中の速度が最大となる位置で、次の式により計算して得た値以上の値でなければならない。

D=1.6(Tl+Ts)+C

(この式において、D、Tl、Ts及びCは、それぞれ次の値を表すものとする。

D 安全距離(単位 ミリメートル)

Tl 手が光線を遮断した時から急停止機構が作動を開始する時までの時間(単位 ミリセカンド)

Ts 急停止機構が作動を開始した時からスライドが停止する時までの時間(単位 ミリセカンド)

C 次の表の上欄に掲げる連続遮光幅に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる追加距離)

連続遮光幅(ミリメートル) 追加距離(ミリメートル)
三〇以下
三〇を超え三五以下 二〇〇
三五を超え四五以下 三〇〇
四五を超え五〇以下 四〇〇

(3)適切である。フオークリフト構造規格第4条第3項により、フォークリフトの駐車ブレーキは、無負荷状態で20%のこう配の床面で停止の状態に保持できる性能を有していなければならないとされている。

【フオークリフト構造規格】

(制動装置)

第4条 フオークリフトは、走行を制動し、及び停止の状態を保持するための制動装置を備えるものでなければならない。

 (略)

 第一項の制動装置のうち停止の状態を保持するための制動装置は、次の表の上欄に掲げるフオークリフトの状態に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げるこう配の床面で当該フオークリフトを停止の状態に保持することができる性能を有するものでなければならない。

フオークリフトの状態 こう配(単位 パーセント)
走行時の基準無負荷状態 二〇
走行時の基準負荷状態 一五

(4)適切である。「ゴム、ゴム化合物又は合成樹脂を練るロール機及びその急停止装置の構造規格」第3条第1項の規定により、ゴム練りロール機の急停止機構の操作部は、ロール機の前面及び後面にそれぞれ一か所水平に設け、その長さはロールの加工部分の長さ以上としなければならない。

【ゴム、ゴム化合物又は合成樹脂を練るロール機及びその急停止装置の構造規格】

(操作部)

第3条 急停止装置の操作部は、練りロール機の前面及び後面にそれぞれ一箇、水平に設け、かつ、その長さは、ロールの加工部分の長さ以上でなければならない。

2~4 (略)

(5)適切である。JIS B 9651:2005「製パン機械の安全及び衛生に関する設計基準」において、製パン機械の立形ミキサにおいては、「保護ガードを開放しながらアジテータを動かす場合は,ホールド・トゥ・ラン制御装置によって操作する」とされている。

本肢の「保護ガードを開放しているときは、アジテータが作動しない構造としている」のは、JIS 以上の安全対策であり、不適切とは言えない。。

【JIS B 9651:2005】

4.機種別の安全及び衛生要求事項

4.1.立形ミキサ

4.1.1.安全要求事項 安全要求事項は,次による。

i) 保護ガードを開放しながらアジテータを動かす場合は,ホールド・トゥ・ラン制御装置によって操作する構造とする(JIS B 9700-1 の 3.26.3,及び JIS B 9700-2 の 4.11.8 参照)。

2021年01月30日執筆