労働安全コンサルタント試験 2013年 産業安全一般 問17

各種機械設備の安全装置




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 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問17 難易度 機械設備の安全装置は、過去に類問の多い問題であり、正答できなければならない問題。
各種機械設備の安全装置

問17 各種機械設備の安全装置に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)動力プレスの安全ブロックとは、金型の取付け、取外し等の作業において、身体の一部を危険限界に入れる必要がある場合に、動力プレスの故障等によりスライドが不意に降下することがないように上型と下型の間又はスライドとホルスタの聞に挿入する支え棒をいう。

(2)移動式クレーンのジブ起伏停止装置は、ジブの起こし過ぎによるジブの折損や後方への転倒を防止するために、ジブの起こし角が約70~80度に達したときに自動的にジブの作動を停止させる装置である。

(3)産業用ロボットのイネーブル装置は、あらかじめ定められた動作位置に保持されている間に限り、ロボットの作動を可能にするための手動操作装置である。

(4)ゴンドラの速度制御装置は作業床の下降速度が許容下降速度に相当する速度の1.3倍を超えないうちに当該速度を自動的に制御する装置、又は許容下降速度に相当する速度の1.4倍に達した場合に当該作業床の下降を自動的に制止する装置である。

(5)高所作業車の作業装置用制動装置は、高所作業車の安定度に応じて定められた範囲を超えて作業床が傾いたときに、警報を発して昇降装置や屈折装置の作動を自動的に停止させる装置である。

正答(5)

【解説】

(1)適切である。平成23年2月18日基発0218第3号「動力プレス機械構造規格の一部を改正する件及びプレス機械又はシャーの安全装置構造規格の一部を改正する件の適用について」の第2の1の(6)のアに「「安全ブロック」とは、動力プレスの金型の取付け、取外し等の作業において、身体の一部を危険限界に入れる必要がある場合に、当該動力プレスの故障等によりスライドが不意に下降することのないように上型と下型の間又はスライドとボルスターの間に挿入する支え棒をいうものであること」とされている。

(2)適切である。移動式クレーンのジブ起伏停止装置は、起伏をワイヤロープで行う場合に設置される安全装置である。本肢にあるように、ジブの起こし角度が設定されている限界(約70~80度)に達したときに、リミットスイッチによって起伏を停止させる装置である。

なお、これは法令によって定められている安全装置ではない。「クレーン構造規格」31条但書には、ジブの起伏停止装置についての言及があるが、移動式クレーン構造規格の第31条には、クレーン構造規格のような但書はない。

【移動式クレーン構造規格】

(傾斜角指示装置)

第31条 移動式クレーンでジブが起伏するものは、運転者の見やすい位置に、当該ジブの傾斜角の度合いを示す装置を備えるものでなければならない。

【クレーン構造規格】

(傾斜角指示装置)

第31条 ジブクレーンでジブが起伏するものは、運転者の見やすい位置に、当該ジブの傾斜角の度合いを示す装置を備えるものでなければならない。ただし、ジブの起伏の上限及び下限の箇所においてジブの起伏を自動的に停止させる安全装置を備え、かつ、当該ジブの傾斜角の度合いによって定格荷重が変わることのないジブクレーンにあっては、この限りでない。

イネーブルスイッチの動作

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(3)適切である。産業用ロボットのイネーブルスイッチとは、スイッチを離すか強く握りしめたときにロボットを緊急停止させるものである。

スイッチが、あらかじめ定められた動作位置に保持されている間に限り、ロボットの作動を可能にする。これは、作業者が危険な状態に驚いてスイッチを強く握りしめるか、手から取り落とすとロボットを停止させようとする装置である。

※ 図は、中央労働災害防止協会「平成 29 年度厚生労働省委託 機能安全活用実践マニュアル ロボットシステム編」(2018年)

(4)適切である。ゴンドラ構造規格第30条に定められている通りである。

【ゴンドラ構造規格】

(速度制御装置)

第30条 ゴンドラは、次の各号のいずれかに該当する作業床の下降を制御する装置を備えるものでなければならない。

 作業床の下降する速度が、許容下降速度(ゴンドラ安全規則(昭和四十七年労働省令第三十五号)第一条第四号に掲げる許容下降速度をいう。次号において同じ。)に相当する速度の一・三倍を超えないうちに当該速度を自動的に制御する装置

 作業床の下降する速度が、許容下降速度に相当する速度の一・四倍に達した場合に当該作業床の下降を自動的に制止する装置

(5)適切ではない。「高所作業車構造規格」第6条に示されているように、高所作業車の作業装置用制動装置とは、「昇降装置、屈折装置、ブーム等の起伏装置及びブーム等の伸縮装置の作動を制動するための制動装置」である。

高所作業車の安定度に応じて定められた範囲を超えて作業床が傾いたときに、警報を発して昇降装置や屈折装置の作動を自動的に停止させる装置は、同構造規格第10条に規定されており「車体傾斜角規制装置」とか「平衡装置」などと呼ばれている。

【高所作業車構造規格】

(作業装置用制動装置)

第6条 昇降装置、屈折装置、ブーム等を起伏させるための装置(以下「起伏装置」という。)及びブーム等を伸縮させるための装置(以下「伸縮装置」という。)は、これらの装置の作動を制動するための制動装置を備えているものでなければならない。ただし、油圧又は空気圧を動力として用いる高所作業車の昇降装置、屈折装置、起伏装置又は伸縮装置については、この限りでない。

 前項の制動装置は、次に定めるところに適合するものでなければならない。

 制動トルクの値(昇降装置、屈折装置、起伏装置又は伸縮装置に二以上の制動装置が備えられている場合には、それぞれの制動装置の制動トルクの値を合計した値)は、積載荷重に相当する荷重を作業床にかけた場合における当該高所作業車の昇降装置、屈折装置、起伏装置又は伸縮装置のトルクの値(当該トルクの値が二以上ある場合にあっては、それらの値のうち最大の値)の一・五倍以上であること。

 人力による制動装置にあっては、次に定めるところによること。

 力量及びストロークの値は、次の表の上欄に掲げる操作の方法に応じ、それぞれ、同表の中欄及び下欄に掲げる値以下とすること。

操作の方式 力量
(単位 ニュートン)
ストローク
(単位 センチメートル)
足踏み式 三〇〇 三〇
手動式 二〇〇 六〇

 歯止め装置又は止め金を備えているものであること。

 作業床の下降する速度が、許容下降速度に相当する速度の一・四倍に達した場合に当該作業床の下降を自動的に制止する装置

 (略)

(傾斜時の自動停止装置等)

第10条 高所作業車は、その安定度等に応じて定められた範囲を超えて車体が傾いたときに、昇降装置若しくは屈折装置等の作動を自動的に停止させる装置又は警音を発する装置を備えているものでなければならない。ただし、アウトリガーを有する高所作業車又は垂直昇降型の高所作業車で、車体の前後及び左右の傾きを表示する装置を備えているものにについては、この限りでない。

2021年01月30日執筆